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人見知り?

 学園の放課後、ポーラとアニーサはいつも通り2人で帰路についていた。

「ポーラ様、今後の予定はどうするんですか」

「やっぱり思ったんだけど、私は貴族としての矜持を持つべきなの。自分から出会いを求めるなどという浅ましいことをすべきではないのよ」

「貴族としての矜持を持つ人はやるべきことから逃げないんじゃないですか?」

「正論はやめて。刺さるから」



「でも、普通に学園通っているだけだと進展はないですよねぇ。ゲームでのアリサちゃんはどうやって恋愛に発展していくんですか?」

「最初は委員会活動を見に行くのよ。そこで風紀委員の人たちと交流してたわ」

「風紀委員って、ロイ王子がいるところですよね。なるほど、そこで仲良くなるんですね」



ロイ王子は、このプリースト学園のあるシュヴァルツ王国において、次期王位継承権を有する正真正銘の王子である。もっとも、王族ではあるが誰にでも分け隔てない態度をとる紳士で、ゲームの中では平民のアリサとも初期からすぐに仲良くなる。ゲームをはじめると最初に攻略することになるキャラであり、プレイヤーからの評価も高かった。



「まあ、ロイ王子とは上手くいくんじゃないかしら」

「ポーラ様はロイ王子のこと、どう思ってるんですか?」

「さあ、とくに交流もないからよく知らないわ」

「ポーラ様に人の印象聞いたら全部同じ返しが来るのはわかってますけどぉ」

「……ま、まぁ顔と性格は良いんじゃないかしら。まあそりゃゲームなんだからそうなんだけど、王家だからイケメンっていうの個人的にはあまり納得いってないのよね。遺伝で王家代々アゴが長いとかそういうのが現実ってものじゃないかしら」

「何言ってるんですかぁ。王家を侮辱するの、聞かれたらまずいですよー」

「聞かれなきゃいいのよ聞かれなきゃ。それに、うちのクリストル家も割と権力が強いから多少のことはなんとかなるわよ。王家に見合う婚約相手をという触れ込みで、一時は私と王家との間で婚約の話も出ていたんだし」

「その婚約の話っていつの話ですかぁ。ポーラ様がお父様に言って夜会をキャンセルしているのってだいぶ前からですよね、ホントに幼少期の頃くらいしか人との交流がないんですね、かわいそうに……」

「それ以上言うとはっ倒すわよ」

「こわいですー」


「アリサちゃんが転入してから何日か経ってますし、もうアリサちゃんは委員会にはいったんでしょうか? とりあえず明日の昼休みに見に行きましょうか、ポーラ様」

「気が乗らないわね……」



 翌日の昼休み、ポーラとアニーサは風紀委員の打ち合わせ風景を覗き見ていた。

「中庭で紅茶飲みながらお話してるって優雅ですねー」

「顔がいいからロイ王子は様になってるわね。というか、アリサは緊張しすぎじゃない?」

「そりゃ貴族とのお茶会なんて普通は無理ですよー」

「何話してるのかしら、気になるわね」

「じゃあ、交じりに行きましょうー」

「えっ、ちょっ、ちょっと!」



「お久しぶりです、ロイ王子ー」

「ん? ……ああ、アニーサか。どうしたんだ、こんなところで?」

「ちょっと知り合いを見つけたから声をかけてみたんですよー」

いつも仲良くしてくれるアニーサは、実は性格が私と対照的で、交友関係も広い。美人で人当たりがよく、まあまあ裏はあるけど、普段はそれを出さない。……というか、アニーサが毒舌を発揮するのって私だけなのよね。あれ、もしかして私って雑に扱われてる?



「ああ、アニーサもすぐ仲良くなったのか。いまだに平民を見下す貴族もいるから、アリサのことは少し心配していたのだが、それなら安心だ」

「いえ、私じゃなくって、ポーラ様ですよ」

「……ポーラが?」



ロイ王子が訝しげにこちらを見てくる。

「あっ、そうです! 昨日ポーラさんが、貴族の方から私のことを助けてくれて! 優しい人なんですよー」

「……それは、にわかには信じがたいというか……」

「大したことをしたわけじゃないわ、それぐらいで感謝されても困るし、別に信じなくてもいいわ」

「ポーラ様、素直じゃないんだからぁ」

「い、いや、人助けを疑ったりしているわけじゃないんだが、ポーラが他人と会話をしているところが想像つかなくてな……」

「……ポーラ様、ロイ王子からもこんなこと言われてるんですか……」

「……幼少期の頃、将来の婚約者探しという名目で、ポーラと会ったことがあったのだがな。2人でどうぞと言って父上と母上が去ってから、数十分間一緒に王家の庭を回ったのだが、そのときに一言もしゃべらなかった印象が強すぎてな……。私が何を話しかけても睨んでくるから幼少期の頃の心には堪えたぞ、あれは」

「……ポーラ様の人見知り、その頃から筋金入りだったんですね」

「えー、意外です!」

「ちょ、ちょっとそんな昔の話はしなくていいじゃない! 別に睨んでないし、ちょっと人と話すのが苦手だっただけよ!」

「元々の人相がちょっと悪いだけですよねー。あと、ちょっとではないと思いますよー」

「アニーサは1回黙ってなさい!」



 私とアニーサのいつもの言い争いが始まると、ロイ王子は目をしばたかせ、おもむろに笑い始めた。

「ふっ、そうか。どうやらポーラに対して、私は随分と思い違いをしていたようだな。普段からそのようにしてればよいものを」

「ポーラ様、仲良くなれば素が出るんですけどねぇ。そこまでたどり着くのが大変なんですよぉ」

 こういうことを本人のいる場で話すのはどうかと思うんですけど!



「ポーラさん、じゃあ私と仲良くしてください! 私もこれから友達いっぱい作るので、一緒に頑張りましょう!」

「いや、あなたと私は頑張る場面が違うというか……」

「じゃあ、教室まで戻りましょー!」

「あっ、ちょっと! あなたと教室違うから!」

 そういって、アリサはポーラを引きずっていった。


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