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ヒロインとの出会い

「ちょっと、平民のくせに何様のつもり? 私が誰だかわかってるんでしょうね!」

「す、すみません!」

「あなたがよそ見をしているから私にぶつかるのよ、少しは気をつけたらどうかしら」

「はい……」



 ポーラたちが教室につくと、そこではアリサが貴族の1人に絡まれていた。ゲームではポーラが初登場となる場面だ。



「うわー、絵に描いたような平民いじめですね。いやだなぁ」

「平民と貴族が一緒に通える学園なのに、その辺りを理解してない人が多いのよね。しかし、私がいじめに参加しなくてもイベントは進んでいくのね……」

「それで、ポーラ様はアリサちゃんのこと助けるんですか?」

「助けたいのは山々よ。でも、こういうときってどうやって出ていけばいいのかしら。そもそも普通の人との会話も避けているのに注目されているところにいくの無理なんだけど」

「腰抜けもいいところですね。そんなんだから婚約者もできないんですよ!」

「うるさいわねぇ!」


「……ポ、ポーラ様? このクラスに何の御用でしょうか?」


アニーサと言い争いをしていたら気づかれてしまったらしい。

「いや、ちょっとね。そこのアリサって子に用があったのだけれど、今いいかしら?」

「は、はい! どうぞどうぞ!」

「そう。じゃあ借りていくわね」


 思ったよりもスムーズにアリサの回収に成功したので、そそくさと教室を出る。



「なんとか出てこれたわね。あーこわかった」

「鮮やかな手際でしたよ、さすがポーラ様。教室に入ってから10秒ぐらいの間に退散する、見事な逃げっぷりでした」

「10秒もよく頑張ったと言ってほしいわね。私はベストを尽くしたわ」



「あ、あの、助けてくれてありがとうございます!」

「別にあなたのためにしたわけじゃないわ、勘違いしないで」

「うっ、すみません……」

「ポーラ様からしたら婚活のためですもんねぇ」

「こんかつ?」

「アニーサ、話がややこしくなるからちょっと黙ってなさい!」

「ポーラ様、アリサちゃんと仲良くなりたかったんですよね? 初対面からそんなキレ散らかしてると印象よくないですよ? もっとにこやかにいかないと」

「誰のせいでキレ散らかしてると思ってるのよ!」



「……まあ、なんでもいいわ。とにかく、次は人にぶつかったりすることがないようにしなさい。そもそも、教室内で走るのがいけないのよ。貴族とともに通う学園に入った以上、もう少し優雅に立ち回るすべを身につけなさい」

「あ、ありがとうございます。あの、あなたのお名前は……?」

「ポーラ・クリストルよ。まったく、クリストル家の名前くらい生まれる前から知っておきなさい!」

「はい! ポーラさん、ありがとうございました!」

「……いい返事ね……」

「ポーラ様は言葉がきついですけど、アリサちゃんなら大丈夫そうですねぇ」



ゲームでのアリサは好奇心旺盛、物怖じせずになんでも挑戦する性格として描かれる。平民出身というハンデを乗り越えつつ、努力をする姿に周囲の人間が徐々に惹かれていくストーリーは、当時のプレイヤーからの評価も高かった。そんな彼女だからこそ、ポーラの言葉の裏にある優しさにもすぐ気づくのかもしれない。



「あ、もう昼休み終わっちゃう! 次の授業が始まる前に戻らないと……それじゃ、ポーラさん、本当にありがとうございました! このお礼はいつかしますね!」

「ちょっと、走るなって言ったばかりでしょ! 人の話を聞きなさい!」

「はーい、気をつけますー!」


 そう言いながらアリサは教室に舞い戻っていった。一応ポーラに言われたことを気にかけているのか、周りに見られていないことを確認しながら走っている。


「……はあ、つかれた」

「まあ、いい印象を与えられたんじゃないですか? この調子で仲良くなれるといいですね」

「そうね。とりあえず1か月分くらいの他人との会話を1日でした気分だわ。今月はもうお休みでいいんじゃないかしら。家のベッドに帰りたい……」

「何言ってるんですか。アリサちゃんと仲良くなって、婚約者を見つけるまでが目標ですからね」

「今思ったんだけど、人と話すだけで疲れる私に婚約者とかマイナスなんじゃないかしら。このまま独身貴族もありね……」

「まあ、友達すらロクにいないのに婚約者は早すぎるんじゃないかとは思いますけど、とにかく行動ですよ」

「ロクにいないっていうけど、友達は今さっき1人できたわよ! もう私は教室戻るわ!」

そういって、ポーラはアニーサを置いて教室へと歩を進める。



「……友達できたわよ、ですかぁ、今まで私以外と本当に話さなかったポーラ様が。これは、ポーラ様にもいい影響ですよねぇ。これで交友関係が広がるようになってくれればいいなぁ」



 そういってアニーサは微笑み、ポーラの後を追うのだった。


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