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ヘレン

作者: 悠紀

朝目覚めたヘレンは、自分が最愛の夫と、生まれたその日から生涯親友だった弟を相次いで失ったのだと、全身で感じた。

時間は5時。30年間、夫と暗黙の約束事だった、早朝の散歩デート。夫を失っても尚、身体は覚えていた。もちろん結婚生活は二人にしか分からない試練があったのだが、どんな喧嘩をしても、この30年間、ヘレンは夫と散歩をし続けた。弟を失った翌日も、夫はヘレンを傍らでささえ、そして共に散歩に行った。

夫を失ったのは、その翌々日だった。あまりにも突然すぎる死。もう二度と、夫を肌で感じる事も、声を聞くことも、一緒に散歩に行くこともできないのだ。ヘレンは絶望の中にいた。その日は、夫の葬儀の日だった。時間の秒針の音しか聞こえない静寂の中で、ヘレンは自身に問い掛けた。「ベットから起きあがり、散歩へ行くか?行かないか?」真っ暗闇からは、何の答えも与えられなかった。しかし、ヘレンはベットから起きあがり、軽く支度をしてから歩く選択をした。「歩こう。今日が日常になるのだから」と。

それから20年。ヘレンは私の目を見て微笑みながら話をした。「私があれから20年も元気にここにいるのは、最愛の人を失った翌日でも尚、進む道を選んだからよ。」

私がヘレンに出会ったのは、生涯学習講座の一環で行う、カメラデザイン教室でだ。美しいヘレンは、70歳を越えても生涯学習に熱心である。そして、どんなに大きな壁にぶち当たったとしても、明るく前向きに全力で生きている。

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