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元社畜さん、異世界で何します?  作者: 木須田ユーマ
48/50

元社畜さん、迫られる。

お久しぶりです。

更新が遅くなってしまい申し訳ございません。

リアルが徐々に落ち着いてきたので、またちまちまと更新していこうかと思います。


あと本作の総合評価が1000ptを超えました!ありがとうございます!

これも一重に本作をお読みくださっている読者様方のおかげです。

本当にありがとうございます!


 魔王様への返答はこちらでやっておく、とレーアさんに見送られてお家に帰ったのが昨日の夕飯時のこと。

 その翌日の昼――つまりは、現在である。

 私は、ゲルダさんのお店で生地を選んでいた。

 理由は簡単。魔王様からすぐ返事が来たからである。

 なんでも、一週間後にギルドに迎えを寄こすとのこと。

 まあ、魔王様と面会をするのに町娘ファッション、まして冒険者ルックは……ってことになり、服を仕立てることになったのでした。

 ……仕立てることになったん、だけど……


「ねえユーナ!この生地はどう?きっとユーナに似合うと思うの!」

「似合うとは思うけれど、赤はちょっと派手過ぎない?

 こっちのペールグリーンが私は似合うと思うわ」

「あら、私はこっちの少し暗い紫色が良いと思うのだけど」

「え、ええっと……」


 目の前には色とりどりの生地、生地、生地……埋もれそうだ。

 しかも全部いいお値段がするようで、触り心地が物凄くいいです。

 めっちゃすべすべ。

 私はそんな仕立ての良い色とりどりの生地の前で、ヘレナさんとレーアさん、ゲルダさんに究極の三択を迫られていた。

 あ、ちなみに私が最初に選んだ色は即却下された。

 何でだ。いいじゃないかモスグリーン。

 と、脱線はここまでにして目の前の問題に集中しよう。


 まずヘレナさんチョイスの赤。

 明るすぎず、かといって暗すぎず。だけど赤という色独特の鮮烈さが全面に押しだされている。

 印象としてはかなり派手ではあるけれど、さりげない上品さも併せ持っている逸品だ。

 ……正直ヘレナさんには悪いけど、私としてはちょっとご遠慮申し上げたい。

 だって何かちょっと……いや、かなり派手だ。

 ドレスに着られる未来しか見えないぞ私には。


 次にレーアさんチョイスのペールグリーン。

 率直に、私が抱いた印象を述べよう。

 ……すごく……可愛いです……

 ふんわりと優しい色合いのその生地は、ドレスに仕立て上げたらそれはそれはもう「可愛い」を追い求める若い女の子達垂涎の一着になるだろう。

 ……でもである。だけどである。

 着るのは私であって、若い女の子ではない。もう二十六の喪女である。

 ドレスに着られるどころの話じゃない。どんな罰ゲームだ……!


 そして最後にゲルダさんチョイスの紫。

 深みのある暗めの紫で、まだドレスに仕立てていないにもかかわらず、上品さと色気が同時に主張している。

 ……ヘレナさんやレーアさん、ゲルダさんには似合うんだろうけど、私には似合わないんじゃないかなぁ。

 だって低身長童顔だよ?

 背伸びしたおこちゃまに見られる気がしてならない。


 ……というか、別に格式張った社交パーティーとかじゃないんだから、そんなにしっかりしたドレスじゃなくてもいいと思うんだけどなぁ。

 でもそういうことが言えるような空気じゃないし……


「おーい、終わったかユーナ?」

「……まだみたいだな」

「「「アンタ達はどう思う?!」」」

「「?!」」


 あ。フーマとユリウスが巻き込まれた。

 いきなり巻き込まれた二人は驚きのあまりに固まっている。


「ど、どう思う……とは?」

「あー……実はね」


 かくかくしかじか、と要点をまとめて二人に説明する。


「……ああ、なるほどなぁ」

「それで俺達に意見を聞いたのか」

「ええ」

「せっかくユーナを着飾らせることができるんだもの、妥協はしたくないわ」

「で、アンタ達はどれがユーナに似合うと思う?」


 フーマとユリウスは少し考えた後、同時に口を開いて――


「緑だ」「赤だな」

「「……あ?」」


 ……ガンの飛ばしあいが始まった。


「あに言ってんだお前、ユーナには赤だろ。

 ユーナの黒い髪と白い肌に良く映えるし、可愛らしい顔立ちに華やかさがプラスされてより魅力的な女性になると思うぞ」

「いいや、こっちの淡い緑の方がユーナには合う。

 派手で主張が激しい赤よりもこちらの淡い色合いの緑の方がユーナの愛らしさを損なわずに引き立てるだろう」


 ……え、なにこれ公開処刑ですか?

 二人とも私のこと褒め過ぎじゃない?

 可愛らしいだとか愛らしいっておおよそ私に当てはまらない表現だと思うんですけども。


『ちょっと待った』


 突然の褒め殺しタイムに目を白黒させていると、今までだんまりだったジオがぴょこんと自己主張した。

 ……ところでいつの間にテレパシー的なものを覚えたんです?

 突然頭の中に声が響いて私も皆も驚きを隠せてないんですけど。

 ジオはぴょんと私の腕の中から生地が置いてある机の上に降り、ゲルダさんチョイスの生地の前で止まった。


『俺はこの紫を推す。適度に落ち着いた色合いで大人っぽさも演出できるだろうしな』

「いやそうは言うけどよ……」

「……少し、色気がありすぎないか?

 細身なユーナには少し大人っぽ過ぎると思うが」

『いいや、紫だね。ユーナの性格的に派手な赤や子供っぽい淡い緑は苦手だろ。

 だったらこの中でも一番大人しめの色合いの紫がいいだろ。

 それに細身だって言ってたけど、むしろ肉付きは良いぞ?

 あばらあたりはまだまだ骨が浮いてるけど胸は……』

「ちょっと黙ろうかジオ」

『あっはいごめんなさい』


 地味に気にしてるんだから言わないでいただきたい。

 あとフーマとユリウスもあんまり見ないでいただきたい。

 健全な男の人だから気になるんだろうけども。


「……そうなの?」

「うん、結構大きいわよ。

 あんまりボディーラインが出る服を着ていないから目立ってないだけで」

「これから少しずつ体重を増やすってヘレナが言っていたから余裕のあるデザインの服をチョイスしてたのよね。

 だから実際に会った後で実際のサイズを測らせてもらった時はちょっと驚いたわ」


 レーアさんは驚きつつ、ヘレナさんとゲルダさんはうんうんと頷きながら小声で話していた。

 ……聞こえてますからね!

 ううう、アンバランスだからあんまり好きじゃないんだよね自分の体形。


「あれ、まだ決まってないのかい?」

「あ、父さん。まあ、生地選びでちょっとね」

「生地?どんなのだい?」

「これよ。この三色のうちどれがいいかでちょっと意見が割れちゃって」

「ズザネはどう思う?当然ペールグリーンよね?」

「いや赤だろ」

『紫……』


 ああ、巻き込まれた人がまた一人……

 ズザネさんはずい、と目の前に差し出された生地をまじまじと見て、うーん、と唸った後、


「全部ないかなぁ」

「「「「「『なんだって?!』」」」」」


 ばっさりと全部選ばないという選択をした。


「確かに王族に謁見するわけだから、失礼のないように礼服を用意するのは当然のことだ。

 でも別に貴族が集まるパーティーに呼ばれたわけじゃないんだろう?

 だったら主張の激しい赤や、子供っぽいペールグリーン、色気の出る紫はちょっと場にそぐわないんじゃないかなぁ」

「「「「「『……あっ』」」」」」


 「あっ」って……忘れてたんですね皆さん。


「とりあえず派手じゃない、フォーマルに見える服を見繕おうか。

 ドレスじゃなくてもいいんだよね?

 だったらブラウスとコルセットスカートにして、色だけ決めていこうか。

 体形が気になる場合は腰回りにタオルを当ててもいいからね」

「は、はい」


 この後はあの問答の時間はなんだったんだろうと思うくらい速やかに服選びが終了した。

 白のブラウスと紺色のコルセットスカートだった。


 ……あと、この日一日、フーマとユリウスの落ち着きがなかったです。

 私も何故かちょっと気まずくなって話題振りづらかったです。

 ……とりあえずジオはしばらくおやつ抜きにしとこう。


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