元社畜さん、ランクアップする。
「え、ランクアップですか?」
「はい。今回の依頼でギルドポイントが貯まりましたので、今日からEランクからDランクへランクアップしますね」
日課である薬草採取ときのこ採取を滞りなく終わらせ、ギルドの受付で依頼完了の報告をした際に、担当だったお姉さんがにこにこ笑顔でそう言った。
どうやらいつの間にか規定数までギルドポイントが貯まっていたらしい。
ちなみにギルドポイントというのは、冒険者ギルドに貼ってある依頼を完了することで貯まる、いわゆる貢献値のようなものだ。
まあ、Eランク以外のランクでは、ギルドポイントだけではなく昇格試験なるものがあるらしいが、Eランクだけはギルドポイントが規定数……500ポイントまで上がることが条件なんだとか。
……うん?でもなんだか昇格早くないか?
だって私、まだ冒険者になって日が浅いし、依頼もそんなに量をこなしていないはずだ。
「……えっと、なんでランクアップしたんでしょう?
私、確かまだそんなに依頼をこなしていないはずなんですが……」
「あれ?ええと、まだ説明してませんでしたっけ?
提出された依頼品の質が高かったり、ワンランク上の魔獣・魔物を討伐すると、ギルドポイントにプラスされるんです。
ユーナさんは毎回提出される依頼品の質がとても高いので、毎回ギルドポイントにプラスされてたんですよ」
そうだったんだ。
……そういえば、鑑定しながら採取してた時に、品質ランクっぽいものもちらっと見切れてたような……?
今度意識してみてみよう。
「フーマさんは今回は昇格はありませんが、ユーナさんと一緒でならDランクの依頼を受けることができますよ」
「なるほど……ありがとうございます」
「ああそれと、Dランクに昇格されましたのでダンジョンへもぐることが可能です」
おお、ダンジョン。
ファンタジー物には外せない要素だよね。
というかこないだヘレナさん達が調査行ってきたって話してたし。
ダンジョンに挑戦することができるのかぁ。
「討伐依頼をいくつかこなしたら行ってみようか、フーマ」
「ああ」
別にどっちが先でもいいんだろうけど私は戦闘は未経験だし、他の人を巻き込む可能性が低そうな討伐依頼を先に経験した方がいいだろう。
命が係わるから慎重に動かないとね。
常に作戦名は「いのちだいじに」ですっ。
『俺としては食材ダンジョンに今からでも行きたいんだけどなー』
「却下ー」
『ちぇ』
……なんだか最近、やけに食い意地が張ってきたねジオさんや。
最初の頃はそうでもなかったはずなんだけど。
腹ペコ?実は腹ペコキャラなの?
と、とにかくダンジョンは後!討伐依頼が先だからね!
「とりあえず今貼られてる討伐系の依頼、ちょっとだけ見ておこっか」
まだDランクだからさほど強い魔獣や魔物じゃないだろうけど、確認しておくに越したことはないよね。
掲示板を覗いてみたけれど、私達が受けられるランクの討伐依頼はまだ少なかった。
その上のランクの討伐依頼はあるんだけど……うーん、しょうがないか。
『しばらくはまた採取系の仕事になるだろうな。
魔の森もまだ魔素が薄いようだし、魔物が出るようになるまで時間かかるだろう』
「そうだねぇ……」
でも別の仕事もやってみたいんだけどなぁ……あっ、なんだろうこれ。
「採掘……?」
『ん?……ああ、なるほど。こういうのもあるのか』
目に留まったのは"魔晶石の採掘"と書かれた依頼だった。
……ふぅん、Dランクでも受けることができるのか……魔晶石って何だろ。
「ねえジオ、魔晶石って何?」
『何って……そりゃあお前、魔道具の材料に決まってるだろ』
魔道具かぁ。
そういえばギルドオーブを作る時にも、魔道具を使ってたよなぁ。
アレにも使われてるのかな?
『明日はそれやってみるか?』
「そのこころは?」
『流石に、森は飽きた』
うん。正直でよろしい。
「フーマ、明日はこの採掘のお仕事しようと思うんだけど、どうかな?
多分魔の森よりか魔物や魔獣が出てくる可能性は高いと思うんだけど……」
「ユーナが行きたいなら、俺も行く」
「うん、そっか。じゃあ明日はこれで」
決定。
明日は森じゃなくて鉱山へ行くことになりました。
……とりあえずどの辺か地図で印付けてもらおう。
迷子になったら大変だもんね。




