元社畜さん、神様に捧げものをする。
ギルドからの帰り道の途中で、私は考えた。
神様達にお礼をしたい、と。
だってまあ、打算的なところは少々あるだろうけども、過労死した私をこうして転生させてくれたり、加護をくれたりスキルをくれたりと色々してくれたわけだし。
なので美味しいご飯をお供えしたいと思います。
……とりあえず、ご飯を持って神殿へ行けばいいのかな?
神殿へ立ち寄ると、今朝神殿の入り口で掃除をしていたシスターさんがにっこりと笑って話しかけてくれた。
「こんにちは。またお祈りですか?」
「ええっと……神様にお供え物をする時はどうすればいいか聞くのを忘れちゃって……」
「あら、そうなんですか?……でしたら、こちらの像をお持ち帰りくださいな」
「像、ですか?」
「ええ。これを設置して、その前に供物を捧げてお祈りをすれば、どこででもお供えすることができますよ」
なるほど。
確かに敬虔な信者さんは結構な頻度で捧げものをするだろうから、量も半端じゃないだろう。
まさか突っ返すわけにもいかないだろうし、かといってそのまま腐らせちゃうのも……って試行錯誤の結果なんだろうな。
まあ、家でも旅先でもお祈りができるのは便利だし、もらって帰ろう。
「教えてくださってありがとうございます。それじゃあ一ついただきますね」
「はい。貴女に神様のご加護があらんことを」
もういただいていますけどね、食神様の加護。
シスターさんにぺこりとお辞儀をして、もらった像をアイテムボックス内に仕舞ってお屋敷へ帰った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
寄り道せずにまっすぐお屋敷に帰って、ジオとフーマと一緒にお夕飯を食べた後、早速用意したお供え物を持ってもらってきた像を設置した部屋へ向かう。
ちなみに今日のお夕飯はロールキャベツとクラムチャウダーでした。
お供え物に用意したのも同じものです。
え?手抜きじゃないかって?
……だって別のメニューを考えるの、面倒だったんだもの……
と、ともかく、お供え物であるロールキャベツが大量にのった大皿とクラムチャウダーが入った寸胴鍋を、像が設置された台座の前にあるテーブルに置き、お祈りのポーズをとる。
「神様方……私なんかに色々便宜を図ってくださりありがとうございます……
ささやかなお礼としまして、ちょっとしたお料理を用意させていただきました。
皆様で分けて食べていただけますと幸いです……」
ファイン様以外にも私の異世界転生にかかわってる神様、いそうだからなぁ。
だってそうじゃないと魔力が無限になってたりだとか、"地球"のものが購入できる《ネットモール》だなんて規格外なスキルだとか、説明つきそうにないし。
しばらくお祈りをした後に目を開く。
すると、目の前にはすっかり綺麗に空になったお皿と寸胴鍋、そして一枚の紙切れが置かれていた。
……おお。お供え物をするとこうなるんだ。
全部綺麗に空になってるし、気に入ってもらえたのかな……?
そう思いつつ紙切れに目を落とす。
紙切れには……うん、様々な筆跡で「ありがとう」と書かれていた。しかも一部分には何かの液体が何らかの原因で滴ったのか、不自然にインクが滲んでいるところがある。
お、おおう……喜んでいただけて何よりです、神様方。
とりあえず予想以上に美味しいご飯に飢えてるっぽいし、できるだけ毎日お供え物を用意することにしよう。
それが私に良くしてくれた神様達に対する最大限のお礼になるっぽいからね。
……次は何を作ろうかな。
 




