表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元社畜さん、異世界で何します?  作者: 木須田ユーマ
28/50

元社畜さん、ねだられる。


 受付の前では他の人の迷惑になるので、テーブルのある方へ移動して待つ。

 それなりに時間がかかりそうだし、ご飯も済ませておこう。

 食堂の職員さんに夕飯を頼んでテーブルに戻ると、隣のテーブルにニコルが座っていた。

 当然パーティメンバーであるヘレナさん達も一緒だ。


「……何か、騒がしい。何かあった?」

「えっと……なんというか、思ったよりも凄い人を保護してたというか」

「保護?……って、エマ=ライヒェンバッハ様……?!」


 ヘレナさんの驚きを含んだ声に周りの人の目が私達に集中する。

 エマさん失踪事件はかなり有名だったようだ。

 注目の的になっているエマさんが申し訳なさからか、しゅしゅしゅと小さくなってしまっている。


「本当にもう……お騒がせして申し訳ないです……」

「え、ええと……あ、あんまり気にしないで。ほら、ご飯食べよ?ね?」

「うう……ありがとうございます」


 丁度頼んでいた夕飯も届いたので、それをエマさんの目の前に差し出す。

 今日の夕飯は固焼きパンと白身魚のソテー、そしてオニオンスープだった。

 とても全体的に薄味で、さっぱりとしていて美味しい。

 でもフーマとジオには物足りないようだ。

 うん、男の子はやっぱりはっきりした味付けのお肉の方がいいんだろうねぇ。

 私はあっさりした味の方が好きだけど。

 油っ気のあるもの食べると胃がもたれるようになったんだよねぇ……年かな?

 いや、まだそんな年じゃないか……世の同年代に怒られてしまう。

 でも食べ盛りに食べられないのは不満に思うよねぇ……


「えっと……明日のお昼、どこかに食べに行く?」

「? いいが……どうしたんだ」

「何か物足りなさそうに見えたから……」

『あー、なるほどな。確かにちぃと物足りないっちゃ物足りねぇけどよ……

 そういう物足りなさじゃねぇっていうか……なぁ?』

「……俺は、ユーナの料理が食べたい……」


 へぁ?私の料理ですかい?

 首を傾げていると、フーマはむすっとした表情で更に続けた。


「昼に食ったユーナの料理の方が美味い……」

「ちょっと待ってその話詳しく」


 その発言はご飯を作ってくれた人に失礼だという間もなく、ヘレナさんが真顔で身を乗り出してきた。


「薬草とゾウフクダケの採取が終わった後に、ユーナが昼食だとふるまってくれた。

 焼いた肉と野菜を柔らかいパンに挟んだシンプルな料理だった。

 乳の匂いもしたからバターも使ってあったと思う。

 肉の旨味と、野菜の苦みと、甘じょっぱいタレが口の中で合わさって、物凄く美味かった」


 その時のことを思い出しているのか、ぐっと拳を握って力説するフーマ。

 え、ええと……かなりの手抜き料理だったんだけどな、アレ……

 だってただ食パンにバター塗ってレタスと焼いたお肉のっけて、エ〇ラさんとこの焼き肉のタレお肉に塗ってパンでサンドして真っ二つに切っただけだよ?

 作り方教えたら誰でもすぐに作れると思うよ?

 ……あ、でもエ〇ラさんとこの焼き肉のタレは再現難しいか。


「ず、ズルい……!私もユーナの手料理食べたい……!」

「え」

「お願いユーナ、私にも手料理を恵んでください……!後生ですから……!」

「ご、後生って……ただの家庭料理なんですけれども」

「ぼくも、ユーナの手料理、食べたい……」

「に、ニコル、お前もか……」

「多分、皆、食べたい、思ってる」


 まっさかぁ……とリーゼさん達の方を見る。

 あわよくば助けてくれないだろうかと視線で訴えてみる。


「助けを求めてるとこ悪いけど、アタシもアンタの料理食べてみたい!」

「ごめん、僕も右に同じく。料理スキルカンストしている人の料理、ちょっと気になってたんだ」

「俺もだ。できれば酒のつまみになるものが食いたい」


 四面楚歌だった。味方なんていなかったんや……

 悪いけどって、全然悪いって顔してませんよリーゼさん!

 しかもルーカスさんに至ってはリクエストだし!

 それって今作って欲しいってことですよね?!


「え、ええっと……」

「私もユーナちゃんの手料理食べたーい!」

「ひょああああ?!」


 背後からぬるっとレーアさんが現れた。

 驚いた。ものすっごく驚いた。いきなり後ろから現れないでいただきたい……

 っていうかレーアさん、仕事はいいんですか?!

 マリーアさんがちょっと困った顔してるんですけど?!


「というわけで、キッチン開放します。作ってー!」

「ええ?!」


 そしてこの無茶ぶりである。

 ヘレナさん達とレーアさん、そしてフーマとジオからの期待の視線が突き刺さる。

 周囲の人達も何だ何だと野次馬気味に聞き耳と視線をこちらに向けている。

 え、ええと……無茶ぶりとは言え、ギルドマスターのお願いを断ったらレーアさん本人はともかくとして、周囲の冒険者達の心象に悪いよなぁ……

 できれば厄介事に発展しそうなネタは作りたくない……!


「か、簡単なものでよろしければ……」

「「「「やったぁ!」」」」


 ヘレナさんパーティとレーアさんが嬉しそうにハイタッチを交わした。

 フーマとジオも小さくガッツポーズしている。

 うう、皆嬉しそうにしちゃって……

 本当に自慢できるような料理の腕はしてないんだからね?

 期待通りじゃなくても私知りませんからね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ