元社畜さん、報告する。
エマさんの身体は、首とドッキングさせたら静まってくれた。
良かった良かった。
とりあえず垂れ流しの状態にした魔力を身体にとどめなおして、ギルドに戻った。
勿論エマさんも一緒に。
あ、とんでもないことになってたエマさんの服は生活魔法で綺麗にすることができました。
使われ過ぎてボロボロになった槍はどうにもできなかったけどもね。
めっちゃ感謝された。
とりあえずエマさんのことも併せてギルドに報告しなきゃなぁ。
「あ、ユーナお帰り……それ、誰?」
ギルドに帰り着くと、ニコルに受付のそばで話しかけられた。
どうやら一仕事終えたところのようで、装備を付けたままだった。
ああうん、やっぱり気にするよねぇ。一人連れが増えてるわけだし。
「ただいま。えっと……迷子?」
「……迷子?」
私の返答にニコルが訝しげな顔をする。
うん、その反応もわかる。私も当事者でなかったらそうなる。
でも迷子としか形容しようがないんだよなぁ……
「えっと、詳しくは後でもいい?依頼達成報告とかしないと」
「……うん。分かった。また後で」
「うん、また後で」
手を振りながら頷いたニコルに手を振り返して、受付へ向かう。
今日の午後の受付担当はマリーアさんだったらしく、私を見つけるや満面の笑みで手を振ってくれた。
「お帰りなさいユーナさん!」
「ただいま戻りました。
ええっと、薬草採取とゾウフクダケの採取、終了しました」
「はい、確認しますねっ」
「あと報告しなきゃいけないことがあるんですが……」
「報告、ですか?分かりました、納品の確認後にお聞きしますね」
「はい」
マリーアさんは不思議そうな顔をして、納品した品物を確認し始めた。
「……はい、確かに確認しました。いつもありがとうございます、こちらが報酬となります」
「ありがとうございます。それで、報告なのですけれど、魔の森の中でこの方を見つけまして」
私がそう言いながらエマさんを前に押しやると、マリーアさんが心底驚いたという表情で固まった。
「エマ=ライヒェンバッハ様?!」
え?お知り合いですか?というか、"様"?
もしかしてエマさん……偉い人の娘さんだったり?
「ユーナさん、大手柄ですよ!」
「は、はぁ……?何でですか?」
「何でって、エマ様はネルソン=ライヒェンバッハ伯爵様の一人娘で、一か月ほど前から捜索願いが届けられてるんです!
一か月探しても見つからなかったので生存は絶望的とも言われてたんですよ!」
エマさんの方を振り返ると、エマさんはちょっぴり恥ずかしそうにほっぺたを掻いていた。
……本当にお偉いさんとこの娘さんだったんですねエマさん……
しかも一人娘。親御さん、凄く心配してるんだろうなぁ……
「こうしてはいられません、ギルドマスターを呼んできますね!」
「あっ、はい」
満面の笑みを浮かべたマリーアさんはバタバタと慌てて奥の扉へ引っ込んでいった。
……あ、これかなり時間かかる奴や……
「……ごめんフーマ。読み書きの練習、明日からでいい?」
「……ああ。これはしょうがないだろ……」
「な、なんか申し訳ないです……」
本当にごめんよフーマ。
明日は仕事休みにして読み書きの勉強一緒にしようね。




