元社畜さん、拾い物?をする。
お昼ご飯を食べ終わり、後片付けをして少し休憩した後に、また探索を始める。
お肉が焼ける匂いをさせたら魔獣の一匹くらいは釣れるかと思ったんだけれど、いまだに一匹も出てこない。
……私、魔獣や魔物に嫌われるオーラでも出してるんだろうか。
「ユーナ?何だか難しい顔をしているが大丈夫か?」
「え?あー……うん、大丈夫だよ。
魔獣も魔物も出てこないからおかしいなぁって思ってただけだから」
「……確かにそうだな。
あの守衛も数が少なくなっているとは言っていたが、ここまで少ないとな……」
『隠れてるってわけでもなさそうだしなぁ』
あ、やっぱりジオとフーマもおかしいと思ってたんだ。
半日くらい森の中でお肉を焼いたり探索したりしてるけど一匹も出てこないのはどう考えてもおかしいよねぇ……
うーん……とりあえずそろそろ帰ろうかな。
守衛さんにも暗くなる前に帰って来いって言われてるし。
うん、そうしよう。
そう思って町に引き返すべく踵を返した時だった。
――助けてぇ……
「え?」「うん?」『は?』
――誰かぁ……どこにいるのぉ……
……どこからともなくすすり泣きが聞こえてきたでござる。
え、なに?幽霊です?幽霊なんです?
それとも聞こえてるの私だけ……じゃなさそうだ。フーマの顔が真っ青になってる。
『……いや、いやいやいや……アンデッドはまだ活動できない時間帯だからゴーストいない。いないはず。……いないよな?』
「そこはいないって言いきってよジオ……」
「……と、とりあえずどうする、ユーナ……?」
どうするって言われてもなぁ。
すすり泣きは今も継続して聞こえている。
「……ちょっと行ってみてくる」
『正気かお前?!』
「だって気になるし……もしかしたら迷子がいるかもしれないから」
『お人よしすぎるかよ!』
いやだって困ってる人はほっとけないし。
ほっといた結果野垂れ死んでましたとか寝覚め悪いし……
なので様子見に行ってきます。
女は度胸、何でもやってみるものです。
……あ、でも二人が嫌だったら私だけで行ってきた方がいいかな?
「私は行くけど、怖いなら二人はここで待ってる?」
「いや、俺も行く」
『怖いわけあるか!俺も行くにきまってるだろ』
じゃあその微振動を止めようかジオ。
プルプルどころかぶぶぶぶぶってなってるからね。
バイブレーションスライムになってるからね。
すすり泣きが聞こえてくるほうへ、音を立てないように忍び足で近づく。
……来てみたはいいものの、すすり泣きの正体が確認できない。
うーん……?ここから聞こえてきてような気がするんだけどなぁ……?
「……どなたかいらっしゃるんですかー?」
どこかに隠れているのかと声を出してみると、ぴたりとすすり泣きが途切れた。
うん……?一応私に気づいたのかな?
でも出てくる気配はないし……
「あのー……?」
「下、下ですぅ……」
あっ。はっきり聞こえた。女の人の声だ。
っていうか、下……?
言われるまま下を向いてみると、そこには――
「すいません、私の体を知りませんか……?」
私を見上げて喋る、萌黄色の長髪に蜂蜜のような金色の瞳(あ、白目部分が黒だ)をした生首が鎮座していた。
……生首っていうか、これは……
「ゆ、ゆっくりしていってね……?」
「何でですか?!」
「あ、なんかすいません……何故か言わなきゃいけないという謎の使命感がわいて、つい」
「どんな使命感ですか?!」
つい某饅頭のセリフが言葉に出てしまった。
というか、すすり泣いてた割に元気だなこの人……生首さん?
「もしかしてデュラハンか?何でこんなところにいる?」
デュラハン……って、確か前の世界でも割と人気の高かった北欧の妖精さん……だったっけ?
作品によってはアンデッドと混同されがちだけど、フーマがあんまり警戒してないし、この世界では妖精さんとしてくくられてるのかな?
「一か月ほど前にちょっと狩りをしにここに来たんですけど……
休憩中についうとうとしちゃって、いつの間にか首だけこんなところに……」
『ドジかよ……』
『おむすびころりん』ならぬ、『なまくびころりん』かぁ……
何そのホラー。子供泣いちゃう。
「だから今身体を探してらっしゃるんですね。
……あれ?ご飯はどうしてたんですか?」
一か月くらい前からここにいるんだよね?
餓死しそうなものなんだけれど……?
「首と分離してる時は、断面部分から周囲の魔素を吸収できるので……」
「あ、なるほど。だから大丈夫なんですね」
便利だなぁ。
……あれっ、もしかして魔物と魔獣が減った原因、この人?
「ええと、とりあえず体探しましょうか」
「は、はい!ありがとうございます!
多分その辺を魔物や魔獣を狩りながらほっつき歩いてると思います!」
……もしかしなくても原因だった。




