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元社畜さん、異世界で何します?  作者: 木須田ユーマ
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元社畜さん、装備を揃える。(2)


 ささっと採寸を終わらせて部屋を出ると先に採寸が終わっていたのか、そわそわと落ち着かない様子のフーマが青い髪の男性と一緒に販売ブースで待っていた。

 フーマはドアの開閉音でこちらに気づいたのか、勢いよく振り向いて私の姿を認めるや大股歩きで近づいてきた。

 そして私の両脇に手を差し入れて持ち上げた。

 ……持ち上げた?!


「大丈夫か?変なことはされてないか?」

「ちょ、降ろし、っていうか失礼なこと言わないのフーマ!」

「うっ」

「ごめんなさいゲルダさん!」

「大丈夫大丈夫。蜘蛛が苦手な初見のお客さんは大体こんな反応だから慣れてるわよー」

「あはは、いい子だなぁ」


 強制高い高いの状態のままくるくると器用に私に怪我がないかを確かめるフーマの頭にチョップをして、ゲルダさんに謝ると寛大なお言葉で許してもらえた。

 ありがたい限りである。

 ……それにしてもフーマ、妙に私に対して過保護じゃない?

 というか知り合った人達の半数以上が私に過保護な気がする。

 何でだろう。解せぬ。


「ユーナ、痛い」

「だってゲルダさんに酷いこと言ったじゃないフーマ。

 フーマって蜘蛛苦手なの?」

「……別に苦手ではない」

「じゃあ何で?」

「……人間は、脆いだろ。魔族は大体力が強い。

 ……それでユーナが傷つくのは嫌だ」


 ……あー。うん。なるほどなぁ。


「フーマ。私そんなに脆くないよ。

 それに日常生活で力加減ができない人なんてなかなかいないと思うのだけれど。

 というか、その基準で言ったらフーマも私に触れないじゃない」

「……あっ」


 今気づいたんかいっ。

 もう、フーマといい、リーゼさんとルーカスさんといい……

 私って触れれば折れるくらいに貧弱に見えるのかね?

 ってそんなことは重要じゃないんだ今は。


「ほら、ゲルダさんに謝って。あと私も降ろして」

「……済まなかった」

「ええ、いいわよー」


 うんうん、素直で結構なことである。

 ……っていうか私を抱っこから解放してくれないのは何故だ。


「フーマ?降ろしてー?」

「……」

「いや、片手で抱えなおすんでなくて、降ろしてほしいんだけど……重いでしょ?」

「重くない。むしろユーナはもう少し肉をつけた方が良いと思う」

「そうね、さっき採寸した時も思ったけれど、少し骨が浮いて見えてたわよ?」


 ……むしろ太って欲しい発言をされたでござる。

 いやうん……でも最近はちょっと太ったんだよ?

 まだふくよかってレベルじゃないけど。

 ……もう少し食べる量増やそうかな……?

 というか言外に降ろしたくないってことですよねそれ……

 ……もういいや。話進めよう。


「ええと……とりあえず、買う服決めようか。

 フーマが入るサイズの服と防具ってありますか?」

「うん、置いてあるよ。ウチはオーガのお客さんも結構いるからねぇ」

「いくつか見せてもらってもいいですか?」

「勿論。……本当は君が帰ってくる前に選んで欲しかったんだけどね。

 彼、僕が話しかけても上の空で聞いてくれなかったから」

「「すいませんでした」」


 フーマと私、二人の謝罪の言葉が見事にハモった。

 本当フーマ、何やってんのさ……

 男性は「あはは、いいんだよー。君達仲いいんだねぇ」とこれまた寛大な言葉で許してくれた。

 こ、このお店は心が広い人しかいないのか……

 感動して目頭がちょっと熱くなった。


「ああそうそう。そういえば自己紹介してなかったねぇ。

 僕はズザネ=メルケル。この店の、防具屋としてのオーナーだよ」

「あ、私はユーナ=クドゥーです。こっちはフーマ。

 よろしくお願いしますっ」


 なんと。ゲルダさんのお父様であるズザネさんでしたか。

 こんなに大きな娘さんがいるとは思えないくらいお若い人だなぁ。

 ゲルダさんのおおらかで寛大な性格はこの人から受け継いだんだな。


「うん、今後ともよろしくねー。

 フーマ君は今までどんな武器を使っていたのかな?

 見たところ実戦も経験してるように見えるんだけど」

「……主に片手剣を使っていた」

「そっか。それじゃあ防具は動きやすい革製のものにしようか。

 服の方はゲルダに任せるよ。はい、フーマ君のサイズを書いた紙」

「分かったわ。男性服はこっちよ」


 そこからは驚くほどサクサクと買うものが決まっていった。

 というか私が選んだんだけれども。

 フーマ自身が服にあまり関心がないのか、やたらとド派手な柄物シャツを手に取ってたし。

 流石に全力で止めた。

 様子を見ていたゲルダさんとヘレナさん達も真顔で止めてくれた。

 アレを着ているフーマを頭の中で想像してみたけど、完全にヤの付く自由業なお兄さんだったよ……

 それはともかく、フーマにはシンプルに木綿生地でできた生成り色のシャツと草色のズボンをそれぞれ四着ずつと、松葉色のマフラーを買いました。

 マフラーは首輪隠し。

 うん、まぁ本人は気にしてないみたいだけど、私がちょっと慣れないから……

 マフラーも喜んで着けてくれたので良かったです。

 ズザネさんが持ってきてくれた革の防具と合わせても違和感がなかったので大満足でした。


 ……と、まぁこれで買い物は終了したし帰ろうって気になってたんですけどね。

 出口の方に向かおうとしたらゲルダさんとヘレナさんに肩をガシッと掴まれました。

 何だと振り返ったら女物の服の山が……

 ええ、勿論着せ替え人形にされましたとも。

 いいって言ったんだけどなぁ……

 しかも結局フーマの服も私の新しい服もヘレナさんがお金出しちゃったし。

 ……これってちゃんとご恩返しできるのかなぁ……

 今から先行きが不安です。


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