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元社畜さん、異世界で何します?  作者: 木須田ユーマ
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元社畜さん、ステータスを晒す。


「そういえば貴女のステータスをまだ見ていなかったわね。

 差支えがなければ見せてもらいたいんだけれど、いいかしら?」


 冒険者登録申請の書類を書き終えて伸びをしていると、私が提出した書類をまとめていたレーアさんがそう聞いてきた。


「ちょっとお母さん?ステータスを見せる義務は確か無かった筈よ?」

「いや、一応冒険者としても規格外の素養だからちょっと気になって……

 それにある程度どんな素養があるか確認しといたほうが教育もしやすいでしょう?」

「そ、それは……そうだけれど」

「私は構いませんよ」


 というか元から隠し立てするようなことは一切していないし。

 ……あ、でも魔力無限とか引かれるかな?それはちょっとやだな……


「ありがとう。それじゃあ、その石を軽く撫でて頂戴。

 そしたらステータスを可視化させることができるから」


 おお、いちいち『ステータスオープン』って言う必要がなくなるんだ。それは便利。

 早速言われたとおりに石を一撫ですると、ヴン、と音を立てて洞窟の中でも見たあのステータス画面が目の前に現れた。

 えーと、どれどれ……



名前:ユーナ=クドゥー

種族:人族

魔力:多量

称号:食神のいとし子


【所持スキル】

《生活魔法:10》《神聖魔法:3》《テイマー:1》《苦痛耐性:10》《毒耐性:3》《鑑定:5》《料理:10》他


【テイムしている魔獣・魔物】

《セージスライム》


【加護】

《食神ファインの加護》



 ……うん?

 なんか増えてるし端折られてる。

 しかも表記も変わってるし雑になっているような。

 あとどっから生えてきたんだこの加護は。なにかした覚えがないぞ私。

 ……っていうか、そんなことよりもだ。


「……お前さん、大層な名前の種族だね……?」

「ぴきー」


 セージてお前。

 "賢者"とか大層すぎて驚き通り越して真顔になるわ。

 というかいつの間に仲間になってたんだよお前さん。

 明らかに上位種だろ。

 畜生ドヤ顔しおってからに、そうそう簡単に人間の仲間になるような種族じゃないだろお前さん。

 なに「いるのが当然ですが何か?」みたいなノリでついてきてるんだありがたすぎるわありがとうなスライム。


 そういえばやけに静かだけれどヘレナさん達どうしたんだろう……

 ……ヘレナさんが静かに涙してた。え、なんで。


「く、苦痛耐性がカンストしてる……なんで……?」


 あ、それ多分毎日なんかしらの理由で殴る蹴るされてたからですわ。


「人間、毒耐性、普通持ってない……よね……?」

「よほどのことがない限り取得する機会はないはずだよ……」


 それは鎮痛剤ばっかり飲んでた弊害かなぁ。

 睡眠不足でずっと頭痛がしてたし。

 薬も過ぎれば毒になるからね。


「料理と生活魔法がカンストって……

 どんだけこき使われたらこんなスキル構成になるんだい?!」

「気持ちは分かる。だが落ち着けリーゼ」


 それは幼い頃からの生活環境による影響ですな。

 五歳の時から家事やってたからなぁ……

 魔法スキルに変化しているのが最高に解せぬけど。

 魔法使ったことないっちゅーねん。

 家事全般ひっくるめて《生活魔法》ってことになっているんだろうけど、どう使ってどんな効果があるんだろうね、これ。


「……あれ?だけどさっきは魔法を使ったことがないと言っていなかったかい?」

「あ、そういえばそうだったね」

「真贋魔法の結果は白だったけど……」

「でも、魔法、使わない、技量、上がらない」

「だねぇ」


 まぁ使わなければ上がらないだろうし、不思議だよねぇ……なんでこんなんなってんだか。

 皆で首を傾げていると、スライムがぴょこんと腕の中からテーブルの上に移動した。

 そしてぴきぴきと鳴いて何かを訴え始めた。


「……ああ、なるほど」

「何か分かったんですか?」

「このスライムがね、ユーナちゃんが無意識で魔法を発動させている可能性があると教えてくれたのよ」

「え」

「何かを訴えているようだったから疎通魔法を発動して耳を傾けてみたの。

 そうしたら洞窟内で君に治癒魔法を使われた覚えがある、もしかしたら無意識に発動している可能性があるかもしれない……って」


 マジか。

 あー。だから《神聖魔法》のレベルが上がってたのか。

 ……ってちょっと待て。無意識で魔法使っちゃってるってそれヤバくないか。


「……とりあえず、魔法の勉強は魔力を身体にとどめることから始めましょうか。

 もしかしたら魔力がダダ漏れの状態かもしれないし……」


 ですよね。

 まぁ魔力無限とかいうふざけたチートがくっついてるから私自身は大丈夫かもしれないけども。

 ……それにしても、なんで《ネットモール》とかの一部スキルが隠されたりしてんだろう。

 いや、見られたら説明に困る代物だけどね、《ネットモール》。


「ところでユーナちゃん。このセージスライムに名前を与えないの?」

「え?」


 一人で考え込んでいると、レーアさんがスライムを指さしながら質問してきた。

 いや、まさかテイムしているだなんて思いもしなかったからなんだけれども。

 その内野生に帰るんだろうなとか思ってたし。


「どうやらお互いに意思疎通ができていないから名前を付けていない状態だと思ったんだけれど、違うかしら?」

「いえ、違いませんが……名前を付けると意思疎通ができるようになるんですか?」

「念話での会話が可能になるわ。離れていても意思の疎通が可能になるから便利よ」


 おお、それは便利だ。連携がとりやすくなりそうだ。

 いや、そのためのものだろうけれど。

 それにスライムっていわゆる種族名だから、うっかり外でスライムって呼ぶと他のスライムまで出てきそうだし。

 でも私、ネーミングセンスないんだよなぁ。

 うーん……「セイジ」や「ムラサキ」は安直すぎるし……

 ……そういや洞窟で鉱石モリモリ食べてたな。

 最近は私と一緒に料理を食べてるけど……

 最後にいたとこ、確か天井部分も発光してる鉱石あったよなぁ。

 まるで規模のデカい晶洞みたいな……


「……"ジオ"ってどうだろう」

「!」


 晶洞ジオードをちょっと短くしただけだけど、それなりにカッコいいかも?

 なんて自画自賛していたら、スライムがぷるぷる振動していた。

 お?もっかして感動で震えてたりするんかな?


 と、思っていた時期が私にもありました。


『お前なぁ!名づけるのが遅いんだよぉ!どんだけ俺を待たせんだアホ!』


 しかし現実は非情である。めっちゃ怒られた。

 震えてた理由は感動じゃなくて怒りでしたわ。

 まぁ、テイムしといて最低でも一週間名付けず放置とかテイムされた側としてはじれったかったんだろうなぁ……いや、テイムした自覚すらしてなかったけども私。

 今度からはちょこちょこステータスを見よう。そうしよう。


 ……ってか、お前男だったんやな……


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