異世界転生
「おめでとうございます。あなたは魔王に選ばれました」
目の前には女神がいた。
当然女神なんていままで一度も見たことないけど、人間離れした美貌と神々しさを持つこの人は女神だと確信した。
それと同時に、
(俺、死んだのか)
その事も確信した。
やっぱり死んじゃったか....まああんなスピードのトラックに引かれたら当然か。18年間あっというまだったなぁ....
いつもお酒ばっかり飲んでたけどやさしかったお父さん、毎朝わざわざ起こしに来てくれたお母さん、いままでありがとう。
話かけてくるくせに答えると無視してどっか行っちゃう妹をお願いします。
(まあ別れの挨拶はこんなもんか)
正直死んだ事も、もう家族と会えない事も、そんなにショックじゃないんだな。
なぜなら....
(ついに俺のターンきたぁーーーーーー)
そう、漫画とかアニメとか大好きな俺はこのあとの事を考えると生前の思い出なんてどうでもよくなっちゃうぐらいドキドキワクワクしまくってるからだ。
このあとはあれだろ? 俺は目の前の女神様に聖剣とかチート能力とか貰って異世界行って、か弱い美少女たちを守って惚れられてウハウハハーレムライフを送っちゃうんだろ?
ヤバい、楽しみすぎる。
(でもせめて最期にカレーライスを食べたかったなぁ)
なんで人生最後の飯がハヤシライスなんだよ! いやハヤシライスが嫌いな訳じゃないけど......
でもなぁ......カレーライス食いたかったなぁ......
そんな事を考えてると女神様が何か話しかけてきた。
そういえばさっきから何か喋ってた気がする。
「これからあなたはいくつもの困難にぶつかるでしょう。ですがあなたなら自分を信じ、仲間を信じ、必ずや目的を達成できると私は信じています。さあ旅立つのです! まだ見ぬ仲間があなたを待っていると思います!」
(おいおい、俺の知らないところで話が進んでる感があるぞ)
俺は聞いてなかったけど女神様の話はクライマックスみたいだ。
ていうか「待っていると思います!」って......待ってるのか待ってないのかどっちなんだよ。
でも、これから異世界転生するのは合ってたみたいだ。
天国に行って静かに暮らしてなさいとか言われたら泣き寝入りする所だった。天国も悪くないけどこの状況で異世界転生じゃなかったら詐欺だろう。
そんな俺を置いてけぼりに女神様は話を進めてる。
神様なら俺の心ぐらい読んで欲しいもんだ。
異世界転生する前に世界観の説明とか言葉は通じるかとか、聞きたいことが山程ある。事前説明は大事だ。まあ俺が聞いて無かったのが悪いんだけど。
せっかくいい感じに話が終わりそうなのに雰囲気壊れるのは俺も嫌だけど最初から話して貰おう。
「あの女神さ「時間がありません。今すぐ転生させます」
えっ、ちょっと待ってよ。はしょりすぎじゃね?
「新たなる魔王よ、願わくばあなたが世界を統一せんことを」
その言葉を最後に俺は光に包まれた。