最初のお仕事 1
なんとかフレイのいる神殿へとたどり着いた
「フレイ、帰ったぞー」
アリス先輩がドアを思いっきり開ける
「あら、おかえりなさい。で、中央宮殿はどうだった?」
フレイの質問は俺に対してだろう
「地獄のような場所だった……」
もうあんな所思い出したくもない。これから先、男の裸体を見ると失神してしまうのではというくらいのトラウマを植え付けられた
「た、大変だったのね、ご愁傷さま」
顔を附している俺にフレイは合掌をして何があったか察してくれた
「とりあえず飯なにー?」
「今日な和食よ」
天使は天界では直属の女神の元で生活するのが基本らしい
フレイの元にいる天使は俺と先輩の二人だけなのでこの神殿はいささか大きく思える
「明日から紫音さんにも仕事を頼むからよろしくね」
そして死んでから一日目の夜が訪れた
……今日なんて無かったんだ
次の朝は日本では毎日のように10時に起きてた俺が奇跡的に7時に起きるという快挙を起こした
「でも、まだ早いな…二度寝しよ」
そして毛布を頭まで掛けて今一度夢の世界へゆこうとすると、
突如俺のプライベートルームの扉が開けられた
「おーい!朝だぞー、起きてるよな?」
この声は先輩か…朝が早いんだな
「まだ寝てるのか?たっく、しょうがないな……」
そして近づいてくる足音
こ、これはゲームの中で何度も見てきた
『おにいちゃん、早く起きないといたずらするぞっ♡』的なパターンかっ!!
心臓の高鳴りが抑えられない。あと三歩、二歩、一歩……
「さっさと、起きやがれこのボケナスがぁぁぁぁ!!」
「痛ってぇぇぇぇぇぇぇ!!」
突如腹の横あたりに何か棍棒のようなもので殴られた衝撃が走った
そんな甘い妄想は打ち破られた
「寝ている人を殴るやついますか普通?」
俺は横腹を抑えながらベッドから降りる
「うちの家では日常茶飯事だった」
…あんたの家どうかしてるんじゃないのか?
「とにかく、仕事は8時からだからさっさと起きて身支度整えて朝飯食ってこい!」
「ふぁぁ〜い」
そして俺は身支度を整えるために着替えようとすると、
「な、なんで今着替えようとしているんだ?」
そんな俺を見てなぜか顔を真っ赤にしている先輩
「いや、先輩どうせ生前は毎日のように男を漁ってたんでしょ、だったら大丈夫でしょ」
「なっ、人をビッチ扱いするなっ!!」
「えっ?違うんですか?」
「…お前の中の不良のイメージはわからないが、私は……天使になったという時点で察しろバカ!」
ばんっ
そうして先輩は顔を真っ赤にしたまま枕を俺に投げつけて出ていった
「天使の時点で…?」
そっから身支度を整えてみんなで朝ごはんを食べている時も先輩は顔を合わせてくれなかった
「二人ともどうかしたんですか?」
そんな様子を見てフレイが声をかける
「なんでもない」
先輩はすぐに食べ終えて部屋に戻ってしまった
「…で、なにかあったんですか?まさか夜這い?」
「ち、違いますよ!!そんな勇気ありません」
「ですよねー」
「聞きたいことがあるんですけど」
「なに?」
「天使になる条件て何かあるんですか?」
俺の質問にフレイは何かわかったような表情をした
「はは〜ん、大体事情はわかりました。大方紫音くんが固定観念を押し付けてビッチ呼ばわりしたんでしょ?」
ギクッ、
なぜ天使の条件を聞いただけでそこまで見抜かれてしまったのだろう?
「実はですね…天使になるには童貞か処女じゃないとダメなんです」
「えっ?そうなんですか?」
…という事は、昨日中央宮殿へ行く時に見た60代くらいのオッサンは……
「愛里寿ちゃんはですね、あんななりですが実はピュアな女の子なんですよ、だからまだそっち系の話には疎いんです。だから気をつけてくださいね」
ニコニコしながらフレイは教えてくれた
「店長も処女ですもんね、気持ちがよくわかるんですね」
ぶちっ
何かの切れる音がした
「その話はなしと言ったはずでは?」
「す、すみません」
朝食の片付けを終えて、俺は…
「さっきはすみませんでした!」
先輩へ全力で誤っていた
やはり自分がそうでない事を人に決めつけられるのはいい気がしない。だから謝らねばと思った
「…顔をあげてくれ、別にそこまで怒ってはいない」
「で、でも…」
「大丈夫だ、それにむしろお前のことを見直したくらいだ」
「えっ…?」
「こ、この話はもう終わりだ、とりあえず仕事行くぞ」
そういって行ってしまった
「怒ったり、恥ずかしがったりと、わからない人だな」
俺は先輩の後ろ姿をみて一人呟いた
「わしはなぁ、孫がなぁ、欲しかったんじゃぁ」
フレイと対話しているのは80代くらいの白髪で背中を曲げた近所のおばあちゃんのような人だった
「えっと…つまりお孫さんが欲しいと」
「そうじゃなぁ」
「具体的にはどんな事をしてみたいですか?」
「えっ?すまんのぉ、最近耳が遠くて」
フレイはゆっくりと
「具体的にはどんな事をしたいですか?」
「えっ?具合はどうですかって?見ての通り元気じゃよ」
フレイは次はもっと大きな声で
「具体的にはどんな事をし……」
すると遮るようにして
「ショッピング」
……本当は最初から聞こえてたんじゃ?
会話が続く、多分俺だったら途中で投げたしてしまうかもしれない。女神って大変なんだな
「ーーというわけで、今回のお仕事は二人が一日下界に降りておばあちゃんの孫役をすること、何か質問は?」
「店長、外出たくないんでパスしていいですか?」
「あははっ、ゼウスのところへまた行きたいのかな?」
「誠心誠意頑張ります!!」
「愛里寿ちゃんは紫音くんのサポートもお願いね」
「ほーい」
「じゃあ、いってらっしゃい」
すると俺と先輩とおばあちゃんの足元に魔法陣のようなものが浮かび上がったと思った次の瞬間、
「こ、ここは?」
約一日ぶりの日本へと来ていた




