天界の長
「おい、歩くのさっきより遅くなってないか?男なら女をエスコートするくらいの気持ちでいやがれ」
…誰のせいでこんな風になったか
そんな事をいったら多分二度目の死を迎えれそうなので言わないが
「ところで、どこか目的の場所とかあるんですか?」
「とりあえず天界の長のところへ手続きしにいかなきゃ行けないからな、中央宮殿へ向かってる」
歩きながら先輩は丁寧に天界のことについて教えてくれた
天界は国ごとに存在しているらしく、ここは日本を担当していること
他にも、女神は星の数ほどいて、一人で全てを担当するわけではないこと
フレイは従えている天使こそ少ないがかなり高名な女神であること
…何だかんだいって先輩は面倒見がいいようだ、この人は俺の知ってる不良の人たちとは違う、そう思えた
そうこうしているうちに目的の場所へとたどり着いた
中央宮殿
何の捻りもない単純明快だが、その姿は『天空の城』とでもいうようなものだった
「す、すごい!!」
「だろ!?やっぱみんな最初はそう思うよな!?うんうん」
アリスは共感出来たことが嬉しいのか一緒になって感嘆の声をあげてくれている
「よし、行くぞ!ついて来いシオン!!うおおおおおお!!」
そういってアリスが目の前の階段を一気に登っていく
「了解っす先輩!!」
それに続いて奇声をあげながら付いていく俺
この時の俺達のテンションは旗から見るととても痛いものだったと思う
中は中世ヨーロッパをイメージしたような石の部屋のようになっていた
…これはゲーマーとしてテンションがあがらないわけがない!
そわそわしている俺を他所に、
なぜ先程あんなことをしてしまったんだろう
と、賢者タイム中の男子のような顔をしているアリス
…なかなか感情の振れ幅が大きいようで
とはいえ、天界の制服をメイド服にしようとする天界の長に早く会ってみたい感はある
「では、私はここで待ってるから行ってこい」
「えっ?俺一人で行くの?」
「当たり前だろ、それとあの人は癖者だから気をつけろよ。私も最初の時は…」
そういって身を震わしていた
……一体何が待っているんだ?
そして宮殿の使用人に部屋まで案内してもらった(もちろん使用人はメイドさんだった)
「ご主人様は何をお考えになられているかが読めない方です。なので何も考えないことをお勧めします」
「はあ、わかりました」
はじめそのメイドさんの言ってる意味が分からなかった、しかし数分後その意味を身をもって知ることになる…
「失礼します」
ドアを開けて挨拶をする、それと同時に
「ぬぁぁぁぁぁ!!ワシのトランプタワーがぁぁぁ」
俺は無言で扉を閉めた
「すみません、部屋間違ってるぽいんですけど」
「いえ、あの頭のおかしい方がそうです」
「マジですか…」
俺は意を決してもう一度中へ
「ようこそギャルゲーの主人公のような名前だが見た目はモブな少年。天界へようこそ、我が名はゼウス。この天界の主にして神々の頂点に立ちし者」
書斎のような部屋の真ん中で上裸のマッチョな白髪に白ひげでなぜかドヤ顔のおじいさんが決めポーズをして立っていた
「………」
俺はもう一度扉を閉めようとした
「ワシはそういう態度をとられると逆に萌えるタイプだぞっ♡」
とても凄まじい悪寒が走った
素直に中へと足を踏み入れる
「…ご武運を……ちなみにあの人バイですから…」
メイドさんは洒落にならない事をいって扉を閉める
「えっ?ちょっ…まっ、これから一体何が!!」
俺の叫びは彼女に届く前に扉に阻まれた
「まぁ座りなさい」
そういってゼウスは手招きをする
「なにもしないから安心せい。君のことはフレイから聞いておる。あの娘が認める子だ。今更ワシが見定める必要も無いだろう」
フレイに信頼されている、か、俺はまだ何もしてないような気がするが…
「とりあえず脱ぐがよい」
「う、うわぁぁぁ」
「馬鹿者!やましいことをするわけではない!天使への正式な儀式として背中に刻印を刻むだけじゃ!…全く最近の若いものは年寄りを何だとおもってるんじゃ」
「す、すみません」
さすがにまだ知らない人を始めから疑うのは悪いと思った
ここは素直に上着を脱ぎ背中を向ける
「……いい背中じゃな」
突然滑らかな手先で背中を触られた
前言撤回、このじじぃやばいやつだ
「ほれ、動くでない。痛くなるじゃろ?」
「きゃぁぁぁあー」
ーーーそしてここから数分の間、俺は天界という場所で地獄のような時間を過ごしたのだった
中央宮殿からの帰り道
「ぐすっ…ふぇぇん」
子供のように泣きじゃくる俺はアリスとともに歩いていた
「よしよし、怖かったな。そうだ、たい焼きでも奢ってやるから、今日のことは忘れるんだ」
「先輩って性格のいい不良ですね…」
俺は弱々しく言った
「ば、馬鹿野郎、私も経験があるから同情しただけだからな!勘違いするなよ」
夕日に照らされたアリスの頬は少し赤く染まっていた…
今日は帰ろう。帰って何もかも忘れてしまおう…
そうして二人は帰り道を一歩ずつゆっくりとした足取りで帰っていった




