True End
私はハッピーエンドで終わるお話の方が好きです。
「てい」
「痛!」
急速に意識が覚醒。
「悪い夢を見ていた気がする」
「そう、なら醒めてよかったね」
目の前には手。それをたどると日向の笑顔があった。
「あれ? 日向!? そうか、俺は死んだのか」
「ねえ、自分が不死身であることを忘れてない?」
「あ、忘れてた……ってことは日向、生きてたのか!?」
「そうだよ。わたしがなんの能力者か忘れた?」
もちろん覚えてる。Ⅲ群『火炎』。
「そうか、陽炎でそこにいるように見せかけてたのか」
溶けて見えたのは陽炎を消したから。
「うん、そうだよ」
「よかった」
ぎゅっと、日向を抱きしめる。
その暖かさを、体全体で感じ、安心した。
意識はブラックアウト。
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「ねえ、起きて、勇士」
「うわっ!」
「気がついた?」
「あれ? 日向!? そうか、俺は死んだのか」
「それさっきやったよ?」
「…………そうだった、思い出した! 良かった! 日向が生きてて!」
再度日向に抱きつく。
自然と涙が溢れるが、これは嬉し涙だ。
俺のも日向のもノーカンだ。
本当に、日向が生きていて良かった。
俺には日向さえいればそれでいい。
これからは強く生きよう、とそう思った。
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第七次世界大戦。
死者約五十億人。
生存者七百十五名。
最初D.F.S.人に躊躇った日本人も、自身の超能力を駆使して迎撃。
しかしD.F.S.人も弱いわけではない。
結果決着がついた頃には世界の、ひいては人類の数ははわずか七百十五人にまで減少していた。
彼らはD.F.S.の船を奪い、大空へと飛び立った。
取り残された地球は、理論上では自浄作用によって何十年、何百年、何千年したら後、元の住める世界に戻るはずだった。
飛行船には、目が光を反射しない虚ろな少年がいる。
腕がない少年も足がない少女もいる。
そして、不死身の体を持った少年と太陽な笑みをこぼす少女がいた。
彼らは奪われた人間たちだ。
世界を恨め。
しかしその世界は滅んだ。
人間を恨め。
恨めるような人間は全部死んでしまった。
彼らには何も残らない。
だが、少年――――――木嶋勇士の傍らには少女――――――糸野日向がいる。
少年は少女に笑いかけ、少女は微笑み返した。
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「なあ、日向。俺は、お前が好きだ」
「うん、知ってるよ」
「いや、真剣に聞いてくれ。俺は、お前が好きなんだ。結婚してくれ」
「もう、遅いよ」
そう言って日向ははにかんだような笑顔を見せた。
「俺はお前を愛している。世界中の何よりも」
「世界にはもうほとんど何も残ってないけどね」
「いいから。俺はお前が好きだ。その笑顔を守るためならなんだってする。だから――――――傍にいてくれ」
うん、いいよ。
日向は俺から離れ少し前へ行き、振り向いて言った。
「わたしも、勇士が好き。世界中の誰よりも」
そう言って笑う日向の笑顔は、今まで見たどの笑顔よりも素敵だった。
これで完結ですが、もしかしたら続きがある……かも。
8/22 というわけで書きました続き→http://ncode.syosetu.com/n3208bi/
訳あってここからしか開けません。
たしぎ はくマイページの活動報告「ここからしか開けない小説を投稿してみた」にはあらすじと一般公開していない理由も書いてあります。