Bad End
完結話です。一応。
うっすらと目を開ける。
そうだ。
俺は不死身能力者。
死なないんだ。
例え銃弾が眉間を貫いたとしても。
奇跡が起こることに縋って周囲を見渡す。
そこには日向の死体があった。
日向は死んでしまったのだ。
守れなかった。
あれだけ豪語しておきながら、俺は日向を守ることができなかった。
俺の世界の全てだった日向。
俺の世界を優しく照らし続けた日向は、もう、いないのだ。
ならば、この世界にはもう価値なんてない。
俺の手元に残る不死身能力のせいで、死ぬことすらできない。
これは悪夢だ。
急速に世界が色あせて見える。
空気がまずい。
無音が耳触りだ。
肌に突き刺さる日光が痒い。
思考能力もほとんど残っていない。
何も考えられなくなった俺は獣のように咆哮した。
「ゥゥゥゥォォォォッォォォォォォォオオオオオオオオオ!」
俺の世界。
俺の手が届く範囲にあった全ては、俺の指の間からこぼれ落ちた。
これだけは逃すまい、と抱きしめた太陽も、取りこぼした。
あとには、忌々しい不死身の肉体だけが残った。
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第七次世界大戦。
死者約五十億人。
生存者七百十四名。
最初D.F.S.人に躊躇った日本人も、自身の超能力を駆使して迎撃。
しかしD.F.S.人も弱いわけではない。
結果決着がついた頃には世界の、日本人の人口はわずか七百十四人にまで減少していた。
彼らはD.F.S.の船を奪い、大空へと飛び立った。
取り残された地球は、理論上では自浄作用によって何十年、何百年、何千年したら後、元の住める世界に戻るはずだった。
飛行船には、目が光を反射しない虚ろな少年がいる。
腕がない少年も足がない少女もいる。
そして。
不死身を持て余したとある少年もいた。
彼らは奪われた人間たちだ。
世界を恨め。
しかしその世界は滅んだ。
人間を恨め。
恨めるような人間は全部死んでしまった。
彼らには何も残らない。
ハッピーエンド、見たいですか?
一応書き終わってるんですけど。




