襲撃
四話です。
D.F.S.から使者が出された。
D.F.S.国民は全員が日本の領土に降り立った。
みんな丸腰。
当たり前だ。
日本兵もみんな丸腰。
当たり前だ。
持つ必要がないから。
日本人は存在そのものが兵器となんら変わりない。
そしてD.F.S.国民の代表格的な人間が言った。
『我々は、この状態においてもなお、諦めることをせず、日本人に戦いを仕掛ける。和平はありえない。……さあ国民よ! 行け! 日本を滅ぼすのだ! 「ノアの方舟計画」のために!』
ノアの方舟。
たしか、選ばれた人類と動物たちが方舟に乗り洪水から逃れる話だったはず。
つまりD.F.S.は自分たちはノアである、と、そう言いたいわけだ。
そして汚染された地球をリセットするわけだな。
代表格が片手を振り上げると、三十分の一ほどが居なくなった。
は?
思わずテレビを二度見した。
「え? 何々? 今何が起きたの? ねえ勇士、見えた?」
箸を加えながら日向。
うん、今日も可愛い。
朝から可愛い日向を見れた。今日もいいことがありそうだ。あ、いや、日向が隣にいること自体が幸せなんだ。
これ以上の幸せがあるはずがない。
「うーん。よく見えなかったな」
今日俺たちは、日向の家で朝飯を食べている。
学校は臨時休校だそうだ。
そりゃあまあ、D.F.S.国民が攻めてきたわけだからな。
いっそ撃ち落とせばよかったのに―――じゃなくて。
さっき瞬間移動したように見えた人間どもはなんだ?
宇宙旅行と同じく無理と断念された瞬間移動の技術を完成させたというのか!?
「そういえば、同じクラスに瞬間移動能力者がいたね」
「ああ、柿内な。いたな、そんな女子」
「あれ? 反応薄いね。結構可愛い顔してて男子にも人気があるのに」
「俺は日向にしか興味ないよ。ほかの女なんてゴメンだね。それに、『校内割とガチで投票して! ミスコンクール』の《顔だけ部門》《性格だけ部門》《全部合わせて部門》の三冠とってただろ?」
なんも細工はしてない。
細工なんかしなくとも日向は可愛いのである。
というか細工なんか必要ないのに、俺が細工なんかするわけがないだろ?
俺は日向が世界で一番可愛いと知ってるんだからさ。
「そういえばとってたけど、勇士以外に褒められても嬉しくないかも。わたし、勇士以外の男の子はみんな同じ顔に見えるし」
「奇遇だな、俺も父母とお義父さんお義母さんを除き日向以外の人間は見んな同じ顔に見えるんだ」
ズガァン!
ズガァン!
ドゴォン!
「なに? 外?」
素早く日向を抱き寄せる。
いいにほひ……じゃなかった。
柔らかい……でもなくて。
さっき消えた瞬間移動した人間たちだろうか。
いざとなれば俺(不死身)が盾になればいいし、日向が炎を出しても壁になるだろう。
だから俺が日向を抱きしめているのはただ単に抱きつきたかったからであり、それ以外に他意はない!
これは誓うことができる!
胸を張って言える!
―――――ここまでの思考で約0,001秒。
素早く周囲を見回す。
家の中は大丈夫そうだ。
しばらくはここで大丈夫だろう。
座りなおす。
あぐらをかいた膝の上に、俺に抱きつくようにして日向が座る。
猫のように大きなその瞳と見つめ合い、目は逸らさない。
きゅっと抱きしめると、小柄な体躯で俺の背中に手を回し少し強めに力を込めてくる。
最近肩甲骨あたりまで伸びた黒髪。よく髪を褒める時に『絹糸と見紛うような』という言い回しをするが、日向のそれは決して見紛ったりなんかしない。絹糸なんかよりも十倍は美しいその髪は、いつも柑橘系のいい匂いがする。
「わたし、ちょっと怖くなってきた」
「嘘つけ。今までさんざん平然としててよくそんなことが言えたな」
「うん。まあ、本当は怖くないんだけどね」
「でも、怖いってことにしてくれない?」
「いいよ、ほんとうは怖い」
「大丈夫、俺がいる。俺がいるから怖くないだろ」
抱き合った日向の肩を押して、唇を押し付ける。
「ん」
日向の口から漏れる声が艶かしい。
「ん。もう大丈夫。落ち着いた」
「そうか、それは良かった」
「それじゃあ、行きますか」
「ああ、行くか。レッツ野次馬」
「え、違う、ベッドに」
「いや、朝っぱらから」
「このチキン野郎!」
「笑顔で言われても可愛いだけだしなー」
「む、意地悪。もういいもん、ここでする」
「え? ちょ、おま、待ってうわ!」
服を脱がされる。
まあ、最後の方はほとんど自分で脱いだけど。
そして日向の服にも手をかける。
朝は学校に行くつもりで来ていた制服の夏服のブラウスのボタンを上から順に外していく。
そして少し苦戦しながらブラも外す。
上半身は裸で胸を両手で隠す我が幼馴染殿。
流石に一緒に風呂に入るのは小五で卒業していたので日向の裸を見るのは久しぶりである。
小ぶりながらも形良く整った胸から腰にかけてのラインは、ミロのヴィーナスよりもはるかに美しい。
そしてスカートはあえて脱がさず、日向が好んで履くしましまパンツを脱がせる。
「勇士の……変態」
「なんだよ、誘ったのは日向だろ」
「そう、だけど……」
「ねえ、手、どけて?」
「嫌だよ! 恥ず――――ムグ」
生意気なことを言う口は塞いでおいた。
そして日向の手を外す。
そっから先のことは誰にも言わない。
日向は、俺のものだ。
そして俺は、日向のものだ。
今でも言える。
俺は日向さえいれば他の物は何もいらない、と。