2-14. ねぇ、お母さん聞いて
(*未依沙視点)
あれから数回先輩と一緒に帰ったわたしは
「わたし実は…学校から家に送ってくれてる先輩がいるの」
夕食を食べながら
お父さんとお母さんに打ち明けた。
「そうなの?先輩なの?」
お母さんは少し驚いた顔をしている。
「うん、サッカー部の2年生」
「未依沙はその先輩のことどう思ってるんだ?」
「うーん…」
お父さんにどう思ってると言われて、
すぐに答えることができなかった。
何回か一緒に帰っていて、
話しやすいし良い人だと感じている。
「素敵な先輩って感じかな」
わたしは答えた。
「未依沙は、その先輩と付き合いたいって思う?」
お母さんがどストレートに質問をした瞬間、
お父さんはギョッとした顔で
お母さんを見つめていた。
お父さんはきっと、付き合いたいの?って、
本当は聞きたかったんだろうな。
「付き合いたいか…それはないかも?」
「そっか。なら、一緒に帰るのはやめた方がいいかもよ?期待させちゃうから。未依沙と付き合えるかもって。」
お母さんはまるで普通のことを話すかのように
サラッと言ってのけた。
わたしはお母さんの言っていることが難しくて、
イマイチ理解できなかった。
「先輩の気持ちを思うと断われないとかか?」
お父さんに言われてドキッとした。
あれ、なんでバレてるんだろう…
「確かに、一緒に帰ることになったのは、断われなくて決まっちゃった感はある…」
「そっか。だったら、このまま仲良くなった先に未依沙と付き合えるかもって先輩は思ってしまうかもしれないね。」
「未依沙は先輩の他に気になる人とかいないの?」
いつもお茶目な感じに聞いてくるお母さんなのに、
今日はなぜかとても真剣な気がした。
「気になる人か…」
そう言われて一番最初に浮かんだのは、
かげちゃんだった…
自分でも驚いた。
かげちゃん?
幼馴染なのに…?
そっか…
先輩と一緒に帰っていることが
なんとなく後ろめたく感じてたのって…
かげちゃんにそう思われたくないからか…
自分の中にストンと落ちた。
何となくあった違和感の正体が。
わたし、かげちゃんに誤解されたくないんだ。
そっか…
なんだかわたしの心がクリアになった気がした。
先輩に伝えよう…
もう一緒に帰れませんって…
これまで優しくしてもらっていたから、
伝えるのは正直怖い…
でも、次、一緒に帰る時、
勇気を出して伝えよう…
✳︎
夕食が終わり、テレビを見ていたら、
後ろで両親の話し声が聞こえてきた。
わたしは手元を見るふりをしながら、
つい耳をそばだててしまう。
「未依沙、先輩から好意を寄せられてたんだね。ビックリしちゃった。」
わたしの名前を普通に口にする声に、
胸がちょっとドキッとした。
「うん、俺もビックリした。でも、同時に、誰かさんの血をしっかり引き継いでるなって妙に納得した」
ふふふ、とお母さんが笑う声も聞こえる。
わたしのことを話している…
なんだか不思議で恥ずかしい気持ちになった。
「俺が初めて会った時、この人は天然の人たらしだなって、わかっていたのに恋に落ちたからな。未依沙もそうなのかもね?」
わたしの顔が熱くなるのを感じながら、
思わず髪を触った。
お父さんもお母さんも楽しそうに話しているのに、
わたしだけがドキドキしてしまう。
「わたしね、未依沙にはすでに想い人がいる気がするのよね〜。女の勘ってやつ?」
「そうなのか。俺は全然わからんな。でも、もしそうだとしたら、その思いを大切にしてほしいな」
「きっと大丈夫よ。あの子なら。安心して見守りましょう」
わたしの耳が熱を持って、
心臓がバクバクしているのを感じた。
両親は、わたしの気持ちに
気づいているのかもしれない…
こんな風に一度も話していないのに、
すごいな。




