2-12. 放課後に待っていたもの
(✳︎未依沙視点)
部活が終わり玄関へ向かう。
手紙だったから断ることができなかったし…
こうするしかなかったと自分に言い聞かせた。
でも、心の中にずっと何かが引っかかっている。
玄関には首にマフラーを巻いて
手を温めながら待つ立川先輩の姿があった。
「立川先輩!待たせてしまってすみません」
「上野!部活おつかれ」
わたしは初めて先輩の顔を
ちゃんと見ることができた気がした。
1回目はあまりにも突然で…
2回目も目の前にいることにびっくりだったから…
優しく微笑む先輩の顔を見て、
なぜか少し安心した。
「先輩も部活、お楽しみ様です」
「さぁ、帰ろうか。上野の家まで送るよ。家の方向どっち?」
学校を出ていく先輩に続いて玄関を出た。
まだ部活が終わったばかりだから、
生徒が何人かいた。
一緒に帰ってるところを見られたら、
付き合ってるって誤解されるんじゃ…
戸惑いながらも、わたしは
ついていくことに必死だった。
「先輩はどこの小学校出身ですか?」
「俺は徳の台小だよ。上野は…こっちってことは南部小か。」
「はい、そうです。でも、先輩、徳の台小学校ってことは、反対方向ですよね…わたしの家まで送るの大変じゃないですか…?」
わたしは申し訳ない気持ちになって伝えた。
先輩は反対方向と聞いて一瞬ピッと止まっていた。
少し考えてから
「ちなみに、上野の家って歩いてどのくらい?」
「歩いて10分くらいです」
「そっか。片道10分くらいなら、走って帰ればトレーニングになるから問題ないよ」
ちょっとクールで、でも思っていることは
サラッと言えちゃう性格なのだと
少しの会話から思った。
そっちゃんが学年一カッコいいって
言ってた理由がちょっとわかる気がする。
「ありがとうございます。じゃあ、今日はお家まで送ってもらえますか?」
「うん、俺がそうしたいから。」
わたしの方を向いたけど、すぐに
視線は前に戻ってしまった。
いつもと変わらない帰り道。
一人でも、瑠飛やかげちゃんとも
何度も帰っている。
でも、今日はなんだか、
体がフワフワしてるみたいで
足が地面についていない感覚がする。
わたし、緊張してるのかな…
いつもと違う感覚を感じていたら
先輩の視線を感じて、顔を向けた。
「俺、2年だし、部活も外と中で、上野と全然会う機会がないからさ…
また一緒に帰ってくれる?」
そんなこと言われたら…
断ることができない…
何か言わないといけないのに…
頭の中がぐるぐるして、
言葉に詰まってしまう。
「ごめんな。俺のわがままばっかで。でも、上野を困らせたいわけじゃないんだ。もしまた一緒に帰ってくれたら嬉しいなって」
先輩の思いが伝わって来て、
わたしはドキドキしてしまった。
「いえ、あの…嫌とかではないんですけど、冬の寒い中、部活で疲れているのに反対方向に送ってもらうのが申し訳なくて…」
「上野は優しいんだな。」
「そうですか…?」
本当のことを言ったのに、
優しいと受け取られてしまった。
優しいのは先輩の方だよ…
「じゃあ、月に2回はどう?そのくらいだったら大丈夫?」
「あ…えっと…はい、大丈夫です。」
「やった!上野、ありがとう!」
断れなかった。
特に断る理由がないし、
大丈夫って言っちゃった…
わたし、どうしよう。
これでいいのかな?
ニコっと笑顔を向けられ、
わたしは恥ずかしくなった。
わたしと帰ることに、
こんなに喜んでくれるなんて…
不思議な気持ちだった。
この初めての気持ちはなんなんだろう…?
人を好きになるのとは違う…
誠実に思ってもらうことが
なんだかくすぐったいのかも…
これまで、告白されることはあったけれど、
いつも唐突に告白されることばかりだった。
でも、立川先輩は、
まるで関係性を育むところから
大切にしてくれてる気がして…
悪い気はしないって思ってしまった。




