2-8. サイドラインの決意
(*未依沙視点)
今日はバレー部の練習試合。
瑠飛とかげちゃんは一年生だけど
メンバーに選ばれたと聞いて、
瑠飛の家族と一緒に見にきた。
これから新人戦が始まる。
3年生は引退して、1.2年生中心になる。
アップが始まり、かげちゃんは
部員にトスを上げ始める。
体育館にはスパイクの音が
まるでリズムを刻むように鳴り響いている。
一年生で新チームのセッターを任されるなんて…
かげちゃんって本当に凄いんだな。
トスを丁寧にあげていく姿からは
変な緊張感は伝わってこなかった。
いつもどおり。
この場でいつものようにできることに
かげちゃんの度胸が伝わった。
瑠飛は身長も高いし、技術も高いから
アタッカーとしてこれからどんどん活躍しそう。
試合が始まった。
いつもの部活の練習とはまた違った、
試合独特の緊張感。
真剣な表情にぐっと引き込まれる。
かっこいいな…
頑張っている姿がとても輝いて見えた。
練習の成果をしっかりと本番でも発揮する姿に
尊敬しかなかった。
瑠飛もかげちゃんも、すごい…。
このまま自分だけ置いていかれる…?
一瞬、そんな気持ちが湧き上がった。
あぁ、わたしにとって2人は
とても大切な存在なんだと改めて思った。
出来ることなら、これからも一緒にいたい。
特別な関係を望んでるわけじゃない。
ただ、一緒に過ごせたらいいなって思うだけ。
そのためにわたしに出来ることは、
何があるかな…
試合を観ながら、
頭の中がぐるぐるしていた。
「瑠飛もかげも頑張っているね。かっこいいな。」
瑠飛のお父さんがキラキラした目を2人に向けて、
この言葉をつぶやいた。
「本当に、かっこいいです!」
思考は置いておこう。
わたしは再び、意識を
2人の試合に集中させる。
「きっと、目の前のことに全力だから、かっこいいんだろうね。過去のこととか、未来のこととか考えず、「今ここ」に集中しているから、それが伝わるから輝いて見えるんだ…」
過去や未来ではなく、「今ここ」…
この言葉がわたしの中に響いた。
さっきまでのわたしは、
妙にしんみりしてしまっていた。
でも、そうだよね。
「今」を楽しんだらいいんだ。
「今」を楽しんだ先に未来があるもんね。
なんとなくだけど…
わたしの中に何か大切なことが
腑に落ちた瞬間だったのかもしれない。
試合途中の休憩で瑠飛がこっちにやってきた。
「未依沙、観にきてくれてありがとな。」
いつもの人懐っこい笑顔だ。
「瑠飛、点たくさん決めてたね!すごい!」
「今日、いい感じなんだ。あと、かげがいいトスを上げてくれるから思いっきり打てる。」
そう話しながら瑠飛はかげちゃんのいる方に
目を向けた。
「そっか、かげちゃんもすごいね。2人とも輝いてるよ〜」
最後は冗談っぽく、でもそれが
わたしの本心だった。
「はは。かげもこっちに来るかって言ったんだけど、集中したいからってベンチに残ってるみたい。」
「そっか。セッターは集中力大事だもんね。」
「ああ、一番多くボールに触るし、ドンピシャでトスを上げ続けるってすごいよな。俺、もう行くわ。またな」
かげちゃんはベンチに座り、
1人集中していた。
その横顔が眩しくて、
すごくかっこいい。
真剣な目が何かを射抜いているみたい…。
その時、わたしの心にすっと矢が通って
背筋が伸びるような気がした。
わたしも一生懸命になろう。
2人の横に並べるように。
そして、出来れば支えられるように。
今のわたしができることは、
全力で応援すること。
試合が再開した。
さまざまな場所から応援の声が上がった時、
わたしも自分の声が二人に届くように
一生懸命に声を張り上げた。
「かげちゃん、瑠飛、頑張ってー!」
瑠飛はわたしに笑顔で
ガッツポーズを返してくれた。
かげちゃんはチラッと
わたしの方を見て頷いた。
私の想い、届いたんだ。
よかった。
1番の応援者になろう。
2人のかっこよさを誰よりも知っていたい。
2人にとって、わたしも
自慢の幼馴染になれるように…




