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生徒会もベテラン域なもので


王子の側近になったとはいえ、学生の本分は勉学であり、貴族家嫡男としての教育や社交もこなす日々は目まぐるしく、多忙すぎて寮には寝に帰る程度。


気がつけば、最終学年になっていた。

青春? 社交の人脈作りのことだろうか。


十七歳で成人となるこの国では、貴族は十二歳になる年から五年間を学園で過ごし、成人の年に卒業し本格的に社交界に進出する。

婚約者がいる者は、卒業して一年以内で婚姻する者がほとんどだ。


そのため、学園生活は社交界の縮図であり、卒業後の就職先を得る場でも、婚姻相手を探す出会いの場でもある。

家督を継がない者たちは特に、就職先や婚姻相手の獲得に必死だ。


すでに後継者と定められている者は、彼ら彼女らを決して邪魔立てしないよう、そして過ぎた妨害行為などが起こらないよう監視する。

最終学年ともなれば、落ち着いてくる者が多いため、特に下級生たちを監督する立場になった。


もちろん、その最たるものが生徒会である。

一年生の頃から会長を務めるライオスは、すでに熟練の域に達しているし、ジルベルやライオスの友人たちも同様だった。


結局、ジルベルは王宮で働く者や上の世代から側近を選出したようで、学園内での側近はジルベルのみ。

現在の友人二人は、卒業後も補佐官として王子を傍で支えるという。


「今年もこの季節ですねえ」


変わらず書記を務めるジルベルが書類を配ると、あちこちから同意の声が上がった。

一年ごとに新入生から人員を補填し、たいていの者が卒業まで務めるのが慣例だ。


今いるのは、いわゆる上位学年のベテラン勢。

生徒会歴三年以上の面々だ。


優秀だが、学園に通う余裕のない下位貴族や平民を対象とした『特待生の編入期間』。

希望者は全員、教養、マナー、言語などの試験と面接を合格しなければならない。


最低限とは言っても、ジルベルたちの最低限と平民のそれとは大きく異なる。

そもそも、下位貴族と高位貴族ですらマナーや教養に差があるのだから、枠を勝ち取るのは容易ではない。


衣食住のすべての費用を学園が負担して学ぶ代わりに、卒業後は国の管理下で就労する。

学ぶ意欲と実力があれば学びの場が提供され、国は優秀な人材を得られる仕組みだ。


とはいえ、学園に通う貴族の子女がほとんどの中、その余裕すらない貴族家の出身だったり、そもそも平民だったり。

そういう者が、いきなり貴族子女の中に放り込まれたとて、馴染めるわけがない。


受け止める側にだって、やはり負担があるわけで。

毎年、学園入学から二ヶ月の間を開けて、それなりに学園生活が円滑になった頃、合格者を編入させている。


もちろん全員、一年生からのスタートだ。

試験の受験資格は十二歳〜十七歳と幅広いが、だいたい十五歳くらいが多い。

そもそも、合格基準が一年生レベル。飛び級もなし。なぜなら、社交という面では経験値がないから。


そういう、いわば『特待生と言いつつ手のかかる編入生』をうまくフォローするのが、教員と生徒会の役割だ。

そして、たいてい毎年、『なぜきみが?』という生徒が一人はいる。なぜか必ずいる。不思議だ。


「今年の編入生は五名。男子三名、女子二名。年齢は一覧の通りです」


書類をまとめたジルベルが、ひとまずの説明を担う。

側近という立場もあり、ここ数年は会長補佐も兼任していた。


できるだけ柔らかく、雑念が入り込まないように、努めてゆったりと話す。


「うち男女共に一人ずつ、平民出身の生徒がいます。他三名に関しては、各クラスで補佐の生徒を付ける予定ですが、平民出身の二人に関しては、最終学年から補佐を付ける予定です」


「ジル、書類ありがとう。あとは代わろう」


この四年ですっかり親しげになったライオスの声掛けに、ジルベルは微笑みで答えて椅子に座った。


「みなも知っての通り、同学年だと余裕のない者も多い。下位貴族ならばまだやりようはあるが、平民出身者は異国に来たのと同じほどの補佐が必要となる。そもそも、平民出身の合格者はなかなか出ないため、学園としても手探りになる」


幅広く門は開かれているとはいえ、まだまだ平民の学力は低い。そこは国の課題だから置いておく。

つまり、平民出身者が入学できること自体が稀で、下位貴族のみの年の方が圧倒的に多いのだ。


「ひいては、生徒会の面々で補佐を務める予定だ。特に、女子には同性がいいだろう」


生徒会のベテラン勢に、女性は二人。

ジルベルと同学年の二人は、にこやかに頷いた。


「わたくしたちが持ち回りで担当いたしますわ」


「ええ。どうしてもの時は、声をかけますわね」


高位貴族女性が付きっきりは慣れないかもしれないが、こればっかりは我慢してもらうしかない。

一人は婚約者がいるし、もう一人も女官試験を通過しているので、適任なのだ。


「ありがとう、助かる。私は基本的に入らないが、男子の補佐に回れそうな者はいるか?」


「でしたら、殿下。我々二人が主に担当します」


すぐに手を挙げたのは、進路が決定している王子の友人二人。理想的な人材だ。


「助かる、頼んだ。ジル、それで進められそうか?」


「そうですね。一応、みなの顔合わせをと思っています。頼っていい者の顔は、一人でも多い方が安心でしょう」


「こちらとしても、一般生徒とのトラブルを避けられるしな。日程については改めて決めよう」


今年はどんな編入期間になるか。

期待とほんの少しの不安がありつつ、ジルベルたちは迎えるための準備に移った。




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