表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

やっと気づいたけれど。


熟考の末、ジルベルは王子──ライオスの申し出を受けることにした。


ただし、専攻学科も違うし、互いに嫡子としての教育もあるため、常に行動を共にするわけではない。

代わりに、ライオスが所属する生徒会に書記として名を連ねることになった。


ライオスは冷静沈着で模範的な王子と評判で、今のところ後継問題も特にない。

第二王子は兄を支えると公言しているし、妹姫は他国の王族と婚約している。


父も『殿下のよき友、忠実な臣下でありなさい』と言っただけで、特に反対する理由もないとのこと。

リルーシェにもさっそく手紙を書いて、今朝、配達人に託したところだ。


「へえ。婚約者は、留学中なのか」


昼食後、たまたま顔を合わせたライオスに誘われ、ジルベルたちは学園の庭園を歩いていた。

ライオスの〝友人〟二人は幼少からの付き合いのようで、護衛のように少し離れて付いている。


「はい。それはもう生き生きとした手紙が届きますよ。楽しそうで何よりです」


「なんというか……知ってはいたが、ジルベルは少し変わっているな。いい意味で。女性が家督を継げる法に変わり、社会進出も昔より進んではいるが、やはり家に入るのがまだ主流だろう」


「そうですね。特に、年上の世代には、まだ傾向が強く残っています。もちろん、私たちにも」


昔は、男子にしか王位も家督も継げず、女性が家の外で働くことは、貴族として恥とされていた。

数代前に法が改正され、少しずつ職業婦人も増えてはいるが、女性は嫁ぎ子を産むもの、という価値観は根強い。


「貴族は血をつながなければいけません。でも、子は女性にしか産めないから、お願いしてお嫁さんになってもらうのです。我が家は、たまたま長子が(おとこ)だったので」


「いいな、それ。私も婚約者をそのように見てみよう。痛い思いもせず親になれるのは、女性がいてこそだからな」


「本当に。私の婚約者も、本当は働きたいかもしれません。でも、貴族ですから、私のお嫁さんに来てくれるのです。領地のために学ぶと留学までして。感謝しています」


「それを尊重して快く送り出せるのも、私はすごいと思うが。だって、寂しいだろう。遠いと不安にもなる」


あ。

ぱちりとピースが嵌まるような感覚に、思わずジルベルは足を止めた。


気づいて振り返った白皙の美少年が、首を傾げる。

綺麗な綺麗な漆黒の髪が陽を反射する。


「…………そうかもしれません」


片側が軽いような、半側が欠けたような、あの感覚は。


「私は、寂しいのかもしれません」


「そうだな」


「うん、はい。足りない気がしていたのです。ずっと、半分が」


そうかと笑う姿が、光を発しすぎてうまく見えない。


ジルベルより頭一つ分小柄で、胴は二回りほど華奢で、けれどこれぞと思う威厳のある人。

この人を主君と呼ぶのだと、納得した心地がした。


「私は思っていたより、彼女のことが必要なようです」


ミルクティー色の髪に触れてみたい。蜂蜜みたいな琥珀に会いたい。

素晴らしい主君を得たと、今すぐに声にして伝えたい。


それができないから、ジルベルは確かに今、寂しいと思った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ