【番外】ヒロイン志望者 3
調査が行われ、裁判が開かれ、事実と処罰が公表された時には、学園はすでに新しい年度が始まっていた。
新生徒会長の苦労が察せられる。ライオスと共に労いに行かねばならない。
騒ぎを起こされたケヴィディ侯爵令嬢や他の令嬢たちは、被害者側として立った。
まず、王家の影や調査の結果から、告発内容は一切否定された。
その身は完全に潔白で、婚約破棄を叫ばれた令嬢方はすでに婚約を白紙にする手続きを終えていた。
しばらくは周囲が騒がしく、新しい婚約にも影響が出るかもしれない。
加害者側は、特待生と取り巻き三人。
まず、互いに蹴落とし合っていた取り巻き二人については、準王族や他家令嬢に対する誹謗中傷、婚約者への不義などにより、生涯の下水処理の仕事が与えられた。
下水処理は、その名の通り汚水その他を処理する仕事で、平民の中でも最下層と眉を顰められる者たちの労働場だ。
そこから再浮上するのは難しい。生家はすでに彼らを除籍しているため、援助もない。
おそらく死ぬまで、仕事だけをして生きていく。
特待生に裏で嫌がらせをしていたロリィネ侯爵令息は、準王族や他家令嬢に対する誹謗中傷、婚約者への不義に加え、故意に事実を歪曲したことも重視された。
動機が『特待生と結婚したかった』の一点なのだから呆れる。
嫌がらせの真犯人を、想い人がどんな顔で見ているかも気にせず楽しげに将来を語る姿は、控えめに言っても常軌を逸していた。
ロリィネ侯爵令息は、国外追放。
彼も貴族籍からは外れていたが、罪人の刻印を押された上での処置なので、生き残るのは容易ではない。
罪人の刻印は、顔に刻まれる。どの国でも一目瞭然だし、人としての尊厳は最底辺と言って過言じゃない。
最後に、騒動を主導し、告発をした特待生。
彼女に関しては、裁判でも荒れに荒れた。
「ロリィネ侯爵令息ですら刻印のち国外追放。貴族の恩恵で学園に入りながら、準王族を害するなど死刑では」
「いやいや。さっさと死んで楽になっては、共犯の彼らこそ哀れというものですよ」
「娼館か? いや、男好きならば罰にはなるまい」
重々しい雰囲気で、あちこちから唸る声が飛び交う中、特待生は真っ白な顔色で震えていた。
しっかり現実を認識できたのだな、とジルベルは思ったので。
「ロリィネ元侯爵令息と婚姻させては?」
至ってにこやかに言うと、空気が凍った。ちょっと解せない。
「ジルベル殿? どういう意図ですかな」
「そのままです。彼の罪状と処罰はそのままに、彼女を差し上げては? もちろん、彼女に費やした資金は回収したいので、労働は与えましょう」
「……罪人の刻印持ちの男の妻として、生かしておくということですな」
「ええ。仮にも一年、民の税や王侯貴族の恩恵で、貴族と同等の衣食住と教養を得ていたのです。計上すればそれなりの額でしょう。返済させ民に還元するためにも、その間は生きていてくれねば困ります」
「…………さすが元監理長官のご子息ですな」
どういう意味だろう。褒め言葉にしては、頬が引きつっている気がする。
結論として、ロリィネ元侯爵令息とこの場で婚姻させ、共に国外追放。
追放先と職を与え、伴侶がどうあろうと完済までどこまでも追いかける監視付き。
罪人の妻として後ろ指を刺されながら働き、容易く死なないように管理され、一生かけて返済しなければならない。
回収したお金は、すべて各領地の学び舎に寄付される。
落としどころとしては、まあまあなのではないだろうか。
騒ぎを起こした当人たちの家門は、公表の翌日には学び舎への寄付に参加することを表明し、汚名返上に余念がない。
婚約白紙となった令嬢方は、王太子妃となるケヴィディ侯爵令嬢の侍女として王宮へ上がるという。
「いい出会いがあるといいねえ」
「はい。小侯爵、本当にありがとうございました」
「ふふ、私は何も。ご令嬢方の毅然とした姿勢、かっこよかったよ。あ、ごめんね。かっこいいって、褒め言葉だよ」
「わかっております、嬉しいです。小侯爵も、お幸せに」
あはは。本当に! 早く! 帰りたい!!




