PAGE―2〝いきなりハプニング〟
PAGE―2〝いきなりハプニング〟
「ウルド」
「あ、アリオン…」
「見たか?あの光はまさか…」
「……おそらく」
「…なぜ、あぁなった?」
「え~~と……多分…転移石に何かトラブルがあったのではないかと…」
「…まずいな、あれでは確実に大勢の人に見られている、ほとんどの国に知れ渡る事になるな」
「もし帝国に気づかれたりしたら…」
「……ここはクラウスに頼るしかないな」
「そう…ですね、彼がうまく彼女をここに連れてきてくれる事を祈りましょう」
「帝国に勘付かれなければいいが……」
「…………」
―――――――――――◆――――――――――◆――――――――――◆―――――――――――
あら、どうしたの瑠奈?―――――――――
うん、怖い…プラス不思議な夢見ちゃった
?それってどんな夢?―――――――――
なんかね、私の前に妖精みたいなちっちゃな男の子が出てきてね、急に私をどこかに連れていくって言ってね、その後本当にどっかに連れてかれちゃった夢
あらら、随分と面白そうな夢ね―――――――――
そんなこと無いよぉ、これでも結構怖かったんだから
クスクス、大変だったわね……でもね瑠奈―――――――――
?
これからはもっと大変よ……頑張ってね、瑠奈―――――――――
え?それってどういう事?
あれ?どこ行くの?
待ってよ、ねぇっ!
置いていかないで!
待って…待ってよぉ!!
「お母さ―――――――――っ!!」
「おわっ!!なんだなんだっ!?」
「……えっ?」
少女は目を疑った。
なぜなら、さっきの光景とは全く違っていたから。
上は星が満天の夜空、周りは暗い森林が広がっている。
「え……ここ…は…?」
「……あ~大丈夫か?」
「え?」
不意に心配げな声をかけられ、少女は声がした方にくるっと振り返る。
そこには背中から透明色の羽を生やした小人が宙に浮いて少女の顔をジッと見つめていた。
「あ…君は……」
「?」
「……あっ!」
そこで少女は思い出した。
この妖精みたいな小人と出会ってからの出来事を。
「あ……ね…ねぇ……い…一体何が?」
問いかけると、小人は気まずそうに説明を始めた。
「あ~~多分転移石に何かあったんだろなぁ……きっと君の世界で猫と絡み合っていた時、石に致命傷でも―――――」
「…え?ちょっと…待って」
「うん?」
小人の言葉に、少女は思わず説明を止めて質問した。
「き…君の……世界?そ、それってどういうこと?」
「え?それ…とは?」
「君の世界…てところ……」
「君の世界って…そりゃあ――――っ!?」
突然、小人の目つきが鋭くなり、注意深く辺りを見渡した。
「え?どうし――――」
「しっ」
何があったのか問いかけようとした少女に、小人は口元に人差し指を寄せて「静かに」と合図を送る。
「……そこにいるのは誰だ?」
小人が鋭さを含めた声を森の暗闇に投げかけた。
少しの沈黙の後、返ってきたのは低い、ガラの悪い男の声だった。
「ちっ、ばれちまったか」
ガサガサと草むらから現れたのは剣を持った男だった。
それも一人ではなく、次々と出てくる。
男たちは剣・ナイフ・弓等とそれぞれ違う武器を持っている。
「えっ!?えっ!!?」
少女はパニックになってキョロキョロし、小人はジッと男達を睨みつけている。
(何々!?この人たち何!?なんでこんな危ないもの持ってるの!!?銃刀法違反だよ!!)
そんな事を考えてる少女をよそに、危険物を所持している男たちはニヤリと口元を歪めた。
「へっ、妖精と女のガキか……まぁ、悪くねぇんじゃね?」
「ガキの方はまだ乳くせぇが、それなりにうまそうだなぁ」
「商品にしてもいい金になりそうだな」
男達は互いに言い合って二人にジリジリと近づいてくる。
「あ…う……」
「くっ…!」
少女は不安と恐怖のあまり、すっかりすくみあがってしまい、小人は険しい顔をし、警戒しながら周りを見渡す。
(まずいな……囲まれてる、数は十人弱………どうする?)
小人は自分に問いかけ、必死にこの状況を切り抜ける方法を頭に巡らせる。
(……あれをやるしかないな…)
そう心の中でそう呟き、ニッっと口元に笑みを浮かび上がる。
そして目を閉じ、スゥッと息を吸う。
すると――――
「……え?」
「なっ!?」
小人の体が小さく光り始めた。
「な…なんだ……!?」
「おい!妙な事をするんじゃ―――――――――」
刹那―――――
「うわぁっ!!?」
「きゃあぁっ!?」
強烈な閃光がその場にいる者全員の目を眩ました。
「ぐぅっ!目が!!」
「な……なんだ!?」
武器を持った男達は目をおさえて動きを止めた。
少女は驚きのあまり目をおさえて倒れこんでしまった。
「見えない……目が…見えないよぉっ!!」
そして小人は―――――――
「へっ!?あれっ!?……俺、まだ何もしてないよ!!?」
目を閉じていたため、被害はあまり無かったが、混乱していた。
その時―――――
「おーーい!こっちだっ!!」
若い男の声がした。
(え!?今度は何!?)
目がまだ回復していないため、少女は声の主が誰なのか見えない。
「っ!?誰だ!?」
小人の声が聞こえる。
「大丈夫!敵じゃない!!」
若い男の声だ。
「敵じゃないって……えっ!!?」
次に聞こえたのは小人の驚愕の声だ。
「えっ!?ちょ……お前…何で――――――!?」
「今はそんな事はいいから早く来いよ!!」
「あ…あぁっ!よし、こっちだ!!」
誰かが少女の服を引っ張っている。
おそらく小人だろう。
あの小さな体にしては意外と強い力で少女を起こし、そして引っ張り出す。
「えっ?えっ!?…何々ぃっ!!?」
ようやく回復してきた視界を頼りに少女は小人に引っ張られて、転ばないように走り出す。
二人は包囲網をすり抜けて暗い森の中を疾走した。
―――――――――――◆――――――――――◆――――――――――◆―――――――――――
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ、ここまで来りゃあ大丈夫だな」
かなり長い距離を走り続け、気がつくと森を抜けて草原に出ていた。
一本の木の下で少女は目を閉じ、胸に手を当てながらへたり込んで呼吸を整え、小人は宙に浮いて辺りを警戒している。
「危なかったな、大丈夫か?」
「あぁ、なんとか」
少女の耳にさっきの森の中で、逃げ道を案内してくれた若い男の気遣いの声がして、小人の答える声が聞こえる。
(そうだ、お礼言わなくちゃ…)
いきなりすぎる展開の連続に少女の頭は混乱ばかりだが、助けてくれたのだから礼は言わないとという思考はちゃんと働いた。
「大丈夫か?」
また若い男の声がした。
今度は少女に向けて言ったようだ。
「はぁ…はぁ…は、はい……あ…ありが……とう…ござい…ま――――――――」
途切れ途切れだがお礼を言いながら目を開いて顔を上げて―――――
「……え?」
固まった。
少女の前にいたのは人ではなかった。
そこにいたのは―――――――
(ワ……ワンちゃん?)
子犬だった。
金色の瞳を持つ、可愛らしい小さな犬だった。
「……えっ…と…」
周りをキョロキョロを見渡す。
見えるのは遠くに見える森林、草原、山、夜空、近くに一本の木、羽をパタパタさせて宙に浮いている小人、そしてこっちを見上げる子犬。
男の人はどこにもいない。
「……あれ?」
「……どうした?」
カクンと首を傾げた少女に問いかける若い男の声はすぐ傍から聞こえた。
「……へ?」
少女の目が点になった。
なぜなら――――――――
「怪我してないか?」
その声は少女の目の前にいる、子犬の口から聞こえてきたのだから。
――――――――To Be Continued――――――――