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克法ロジックパラドックス -世界を変える簡単な方法-  作者: 墨崎游弥
反逆者の旅【大陸放浪編前編】
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21 崩落の後

 出口を作り、強引に脱出しようとすればタケルたちは現実に引き戻される。地上部分、暁城塞の崩落は今も続いている。瓦礫が落ちてくればエステルが砕く。タケルも錬金術でできることはやる。壁に穴を空け、道を開き。


「もうすぐ外か」


 エステルは歩きながら言った。


「どれだけ時間が経ったかわからないけど、もしマリウスたちが先に脱出していたのなら待たせてる。早く外に出よう」


 と、タケルも言う。


 地下の兵器工場では心を折られるようなものを見た。だが、エステルが隣にいるから耐えられる。

 2人は確実に足を進め、やがて暁城塞の外に出た。


 かつて建物の塊だったものはほとんどが崩落し、巨大な瓦礫の山と化している。地下に無事な空間があり、タケルが錬金術師だったからこそ生きて脱出することができたのだろう。

 タケルたちは命拾いしたのだ。


「外に出られたのか……」


 エステルは呟いた。


「そうだよ。僕だって出られるとは思っていなかったけど。よかった……マリウスたちとも」


 タケルは言葉を切って辺りを見回す。

 マリウスの姿はない。彼だけでなく、共に旅をしていた仲間も、ゼクスたちも。


「探そう」


 タケルが言うと、エステルは頷いた。


 そうして2人は暁城塞の周囲を見て回るが、仲間たちの姿はない。まだ脱出できていないのか、あるいは見捨てられたのか。どちらにしてもタケルにとって良い予感はしなかった。


 歩き回ってもマリウスたちと合流できず、タケルの表情は目に見えて曇っていった。


「もう一度中に入った方がいいのかな。マリウスたちがまだ中にいる可能性だってあるかもしれない」


 城塞の周囲を1周した頃、タケルは言った。

 タケルの言うことも一理あるが、危険すぎる。崩落が収まったとはいえ、原型をとどめていない建物――いや、瓦礫の山に入っては生きていられない可能性も高い。襲撃してきたラオディケもどこにいるのかわからない。

 エステルは何も言えなかった。


「もし怪我でもしていたら、助けられるのは僕くらいしかいない」


 タケルは再び口を開く。


「それは……」


「いいや、もう一度中に入る必要なんてねえよ。マリウスたちは無事だ」


 タケルの耳に聞き覚えのない男の声が入る。

 思わず振り向くと、そこには水色の髪のタケルより身長の高い男がいた。年齢にして30代後半くらいだろうか。


「その様子だと城塞の崩落に巻き込まれたんだろ? よく脱出できたな」


 その男は言った。


「よくわかりましたね。ところで、あなたは」


「グランツ・ゴソウ。鮮血の夜明団の構成員だ。別にお前らの敵じゃねえ。お前らのことはマリウスから聞いた。名前も顔もわかるからお前らは別に名乗らなくていい」


 男はグランツと名乗った。態度はどこか飄々としていて軽そうではあったが、奥深くには何か重いものでも抱えているようだった。


「そっか。マリウスたちが無事ならいいけど、今どこに?」


 タケルは尋ねる。


「俺の仮拠点だ。暁城塞の拠点がもう使い物にならないんでね。ゼクス含めて仮拠点を貸してる。タケルたちを見つけたら連れてくるように俺も頼まれたんだよ。安心しな。お前らは別に見捨てられていねえ。あいつは自分を犠牲にしてでも仲間を見捨てねえ」


 グランツはタケルの知りたいことを察したかのように詳しく答える。


 そうしてタケルとエステルはグランツに案内されて仮拠点へと向かう。その道中で、グランツはまた口を開いた。


「お前ら、Ω計画について嗅ぎ回ってんだろ? 俺たちもだ。ただな、去年の暮れから同僚の1人と連絡が取れなくなってな。信用できるヤツらと協力して探している」


「連絡が取れなくなったって……」


 タケルは思わず口にした。

 連絡が取れなくなることに心当たりがあったのだ。

 その心当たりとは、転生病棟。職員としても、患者としても、一度入れば二度と生きて出ることができないと言われていたあの場所だ。

 転生病棟には何人もの患者が入院しており、その中にもグランツが探している人物がいる可能性はあったのだ。


「何か知ってんのか?」


 グランツはタケルの顔を見て尋ねた。


「必ずそうだとはわからないけど、心当たりのある場所ならいくつか。転生病棟だとか、人体実験をする施設だとか。場所はわからないけど本部にいる可能性もあるかも」


 タケルは答えた。


「そりゃ有益な情報だな。とはいえ、マリウスが検査したヤツらの中にそれらしき人物はいなかった。ま、新人っつーことになっていたマリウスだ。担当させてもらえなかった患者もいるだろうよ」


 と、グランツ。


「転生病棟にいなかったとしても、必ず見つけ出すさ。あいつが簡単にくたばるはずがねえ。一度俺たちの組織を敵に回して生きていたんだ。今も絶対にどこかで生きている」


 そう言ったグランツはどこか遠くでも見ているようだった。

 件の同僚が生きていたとしても、おそらくグランツは過去に大切な人を何人も失っている。それが見て取れるようだった。


 やがて、タケルたちを案内するグランツはとあるビルの1階のバーの前で足を止めた。


「ここだぜ、仮拠点ってのは。正確に言うと、バーのマスターも俺たちの協力者でその上の物件いくつかを仮拠点にしている」


 そう言うと、グランツは『準備中』と書かれたバーのドアを開ける。

 からんからん、とベルの音が店の内外に響いた。

【登場人物紹介】

グランツ・ゴソウ

鮮血の夜明団の構成員。暗部のメンバー。マリウスの協力者。

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