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克法ロジックパラドックス -世界を変える簡単な方法-  作者: 墨崎游弥
反逆者の旅【大陸放浪編前編】
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14 暁城塞の乱戦

 真正面から銃弾を受け、人間ならば死ぬような傷を負ってもエステルは立っている。受けた傷口はたちどころに修復され、5秒もすれば完全に再生した。

 まさに化け物。敵たちはあの程度では死なないエステルを見て動揺する。


「これが効かないだと……!?」


「嘘だ……これはラオディケさんが開発した錬金術兵器だぞ!?」


 と言って、彼らはエステルに対して銃口を向ける。


「なるほど、錬金術兵器。どうりで少し痛いわけだな。普通の弾丸より威力はあるよ。聞こえるか、皆」


 エステルは敵に背を向けることなくそう言った。

 すると、従業員らしき男がエステルに向けて発砲する。


 そんなときだ。従業員や兵士たちの後ろから手を叩く音が聞こえたのは。

 そうしたのはラオディケ。


「ふふふ、正解です。タケルくんが術式を解析して見抜くと思っていましたが、まさかあなたが気づくとは。しかもそんな力業で」


 彼女は錬金術を使う様子も武器を出す様子もナノースを使う様子もなく、ただ戦闘をしていた従業員たちの間を縫って前に出てきていたのだ。


「確かに、その兵器は錬金術の術式を兵器に搭載したものです。要するに外付けの術式。どんな術式なのかは、喰らってみてからのお楽しみ」


 ラオディケは続けた。


「くっそ、それならこの人数の錬金術師と戦うのと同じじゃねえか。どうすんだ」


 と、ゼクス。


 彼の後ろでタケルも考え込んでいた。

 錬金術師とのさしでの戦いであれば、タケルは術式を解析できる。だが、数で押されたのならそれは不可能だ。


「いけそうだと思ったやつから戦闘に加わろう。俺はいけるぜ」


 そう言ったのはマリウス。「大丈夫か」と声をかけられても、マリウスは水の壁を強引に抜けて。そのタイミングでイデア能力を使用した。


 姿が変わるマリウス。

 その姿は映画に出てくるような怪獣の特徴がマリウス自身に出てきたようなもの。


「映画では怪獣に兵器が効かねえってのがお約束だよなあ?」


 と言って、マリウスは従業員や兵士たちに突っ込む。

 兵士たちはマリウスに銃口を向けて発砲。さらに、連携しているかのように、斧を持った男もマリウスに斬りかかる。


 すると、マリウスは今の姿からは想像できないほどの素早さで振り返り、斧を持った男を蹴り飛ばす。からの、返す刃で射撃武器を持った者も制圧する。

 姿も相まって、まさに怪獣だった。


 近距離の相手を片付ければ、次は離れた場所にいる相手。

 マリウスは怪獣さながらに光線を放つ。


「よし……マリウスに続け!」


 と、スティーグ。

 彼もいつの間にか鉈を手にしていた。鉈を片手に水の防御壁から飛び出し、付近の従業員あるいは兵士に斬りかかる。


 さらにアカネ、ゼクス、レフ、ミッシェルも続く。

 防御壁の中に残されたのはタケルとはるだけになった。


「あんたはいかないのかい?」


 はるは尋ねた。


「僕がなんとかできる人数じゃないよ……だから、ここは僕が回復に回る。あの人……ラオディケに手を出せないのは困るけど」


 と、タケルは答えた。


「そうかい。無謀ではないみたいだねえ」


 はるは言う。


 今のタケルは自身の置かれた立場、実力、戦況をよく見ていた。


 防御壁の外側は乱戦になりかけていた。

 マリウスは相変わらずイデア能力で兵器が効きにくいのをいいことに暴れ回っている。

 スティーグは鉈を片手にイデア能力で身体能力を強化し、遠近両方の兵器使いに対応していた。羽織っている白いレザージャケットについている血はおそらく返り血だろう。

 アカネはアカネで、付近の敵の兵器を無力化していた。アカネがイデア能力を使えば物体の密度が変わる。兵器はただのおもりと化したのだ。


 そして、ミッシェル。

 兵器そのものに対しての有効打はなかった。だが、彼女が身体能力とエネルギーの爆発を持ってして敵を退ける間。彼女は異質な敵と接触した。


 ミッシェルが相手する銀髪の男の首筋には転生病棟の管理用バーコードが刻まれていた。実験体のいずれかだとは見てわかる。


 ミッシェルの拳と男の持つメイスがぶつかり合う。瞬間、メイスに仕込まれた術式が発動するが、ミッシェルの爆発させたエネルギーがそれを塗りつぶす。


「はっ、こんなところに紛れてやがったか。てめぇ、『CANNONS』だろ」


 と言い、ミッシェルは爆発によってメイスをはじく。


「紛れているとは失礼だな。工場長が工場にいなくてどうする」


 その男、クリフ・ヒューズは言った。

 クリフは『CANNONS』にしてラオディケのビジネスパートナー。互いに食えない人物同士、兵器の案件を回している。

 そしてその髪色は、『CANNONS』本来の髪色だった。


「戦闘用の改造人間『CANNONS』が工場長? 笑わせるんじゃねえよ」


 と、ミッシェルはクリフをばかにしたような口調で言った。


「物事を知らないお前の方にこそ笑わせるなと言いたいところだ。知らないんだろう、この工場が何の工場なのか」


 クリフもミッシェルを煽る。

 2人の『CANNONS』は互いを見下しているようにも見えた。


「大方ラオディケが関わってんだろ。兵器工場ってことは知ってんだよ。未来でもそうだったのを今思い出した」


 ミッシェルはかっと目を見開き、狂気をはらんだ笑みを浮かべる。


「はは、正解だ。ここはな、ラオディケが開発した兵器を製造する工場だ。お前の言うとおり!」


 と言って、再びクリフがミッシェルに突っ込む。

 応じるミッシェル。

 ぶつかり合うクリフのメイスとミッシェルの拳。

 エネルギーが爆発する。


 クリフはすぐに異変を感じ、メイスから手を放した。

 すると、ミッシェルはチャンスだとクリフに突っ込もうとした。

 クリフはミッシェルに蹴りを入れ、ミッシェルは吹っ飛ばされた。


「ったく、格が違うんだよ。『ROSE』もどきの分際で」


 クリフはそう吐き捨て、近くに転がっていた遺体のそばにあった銃剣型の兵器を手に取った。


「そう思うよなあ?」


 さらにクリフは続け、少しばかり離れたミッシェルを見下ろした。

 まさに強敵。だが、ミッシェルもクリフを相手取りながらも笑みを絶やさなかった。


「なめんなよ、クソが!」

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