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5 ある女の日記

15年後のとある未来、とある人物の日記。

 魂の転移という技術は蘇芳蘭丸が作り出したってことは有名だと思う。その技術は実は魂の抽出にもつながっていたって。

 なんで魂の抽出の話をしたかって。

 私が魂を抽出されてここにいるから。思い出したのは今日。

 これから思い出したことを書いていこうと思う。


 ある病院に拉致されて、検査と投薬を何度もされた。私、その時には病気なんてしていなかったんだけどね。

 だから私は聞いてみた。


「どうして病気でもないのに変な薬を打つの」


 って。

 そうしたらキイラ先生はこう言ったんだ。


「代表は女神の遺体にあなたの魂を入れようと思ってんの。同じ魂だから」


 私はわけがわからなかった。

 だからキイラ先生にもっと聞いてみた。

 そうしたら、病院のある部屋に案内されたんだ。


 私も来たことがない部屋で、病室とも手術室とも診察室ともいえない部屋だった。

 けれど印象的だったのは棺のようなもの。

 ガラスの窓から中を見ると、そこには黒髪の女性が眠っていた。正確に言えば眠っているのではなく、すでに死んでいるらしい。


 キイラ先生が言うには大洪水の後に女神レクサが遺体で見つかったらしい。

 女神が死んだことで世界がどうなるかも聞いた。女神は楔みたいなもので生きていればこの世界は安泰だとか。詳しいことは知らないけど、世界とかそういうことに関わっていたらしくて。だから代わりが必要だって代表って人が判断したらしい。

 代わりになるのが、私?


 私が世界を救えって?


 物心ついた頃には両親はいなかったし、異質な生まれらしいことはわかっている。

 それでも私が特別だなんて考えたことはない。

 魂がなんだとかも考えなかった。


「それにしても、あんたが適合してくれて嬉しいよ」


 そんなキイラの言葉はすごく印象的だった。


 キイラたちのような職員たちは私をちやほやしていた。それは私の目からもわかる。

 気分は悪くなかったけど、その後に起きることはわからなかった。


「魂を転移したらどうなるか知ってっか?」


 あるとき同じ病棟の、青い髪の女がこう言った。

 魂の転移について、私も気になっていた。けど、職員たちははぐらかすばかりで重要なことを答えてはくれなかった。


「魂を転移したらな、死ぬんだよ。元の肉体が。魂が適合しなきゃ、魂も死ぬ。偶然適合したなら転移先で生きてられるだろうが、果たしてそれは元のお前かな?」


 彼女の言葉はあまりにも印象的で不安を駆り立てて。

 でも、私は病棟から逃げ出すことができなかった。


 私は明日、女神の遺体に魂を移す。

 成功率はわからない。

 もし生還したとして私が私でいられる自信はない。


 パーシヴァル。

 私はもう覚悟を決めたよ。あんたがこの日記を読んでいるとき、私は私じゃないかもしれないし、死んでいるかもしれない。

 もし死んでいたら、私のことは忘れてくれたらいいなって。


 強く生きて。

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