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9 異様な研究所

「聞いた話だと、中枢部にはこの研究所にしかないものがあるはずだ」


 一行が研究棟に立ち入った直後、タケルは言った。

 研究所が何のために使われているのか。タケルたちは十分な情報を持っていなかった。パロの町と北部という情報、Ω計画の所業から考察しても、あくまでも考察にしか過ぎない。真実は研究所の全容を見なくてはわからない。


「この研究所にしかないものか。Ω計画について不勉強だからか想像つかんな……」


 スティーグは言った。


「僕もその詳細は知らないよ。幹部……おそらくアイン・ソフ・オウルの一部が出入りしていること以外は。エステルが知っていたあたり、マモニ族に関係あることをしていたんだろうね」


 と、タケルは答えた。


「ま、それ以外にあったとしてもろくな事じゃねえだろ」


 ミッシェルも口を挟む。

 ろくでもない実験を受けてきたミッシェルの言葉は、どこか説得力があった。


 一行はかつて搬入口だった場所から伸びる廊下を通り、研究棟の内部へと入ってゆく。廊下はここ最近使われていなかったらしく、床や手すりにほこりが積もっていた。が、足音に混じり、研究所の設備が動く音がかすかに聞こえる。どうやらこの区画が使われていないとしても、研究所は完全な廃墟ではないらしい。


 今のところ襲撃してくる者はいない。Ω計画の施設全般に言えることだが、雰囲気は異様だ。全員が警戒していた。


 そうして、一行は廊下のつきあたりに到達した。

 廊下のつきあたりにあったのはさび付いた重い扉。扉を封鎖する鎖と南京錠が、今では使われていないことを物語る。この先に何かがあることは明白だ。

 ラリは壁を破壊したのと同じように扉に触れた。だが、何も起こらない。まるで、扉が錬金術を拒んでいるかのようだった。


「ちゃんと錬金術使ってる?」


 と、ニッテは尋ねる。


「当たり前だ。問題はそこじゃない、錬金術を使っても壊せないんだ。この扉は」


 ラリはニッテに向き直り、そう答えた。

 するとタケルは言った。


「Ω計画の施設の扉はだいたいそうやって閉められているよ。錬金術を妨害する術式が刻まれているんだ」


「なに? 本当か。どうやったら開けられるんだ?」


 聞き返すラリ。


「妨害している術式を解析して、その術式に対抗できるエネルギーを放てばいいんだ。僕ならそれができる……」


 と、タケルは答えた。


 錬金術は術式でできている。術式はどんなに複雑になろうとも式として書き記すことができる。それを解析できれば、タケルなら対処ができる。加えてタケルは術式の解析を得意としている。


 タケルは重い扉に近寄り、扉に触れた。

 扉は厳重に封鎖されているが、刻まれた術式は単純だった。これならばすぐに突破できる。


 タケルは術式を解析すると、それに対して別の術式の演算を行い。

 扉を強引に開けた。

 彼の前に、錬金術の鍵などあってないようなものだ。


 その扉の向こうは大部屋の病室のようだった。いや、大部屋の病室ではない。清潔でベッドが鉄格子で区切られているだけの野戦病院というべきだろうか。

 だが、患者や被験者は誰一人としていない。つい最近患者が全員ここを退院したのではなく、長いこと患者がいないようだ。


「転生病棟とは大違いだな。あっちは実験体の収容場所といってもだいたい個室だったぞ……」


 扉の先の空間を見て、マリウスが言った。

 被検体への扱いが良いとはいえなかった転生病棟にいたマリウスでも、表情は引きつっている。


「使われている形跡はない。いや、ベッドにしみが……血液なのかな……」


 と、タケル。

 タケルは近くの鉄格子の隙間からベッドを見た。ベッドには拘束のための手錠、足枷、鎖が取り付けられている。ベッドサイドにあるのはおそらくバイタルモニターだ。当然ながらバイタルモニターは起動していない。

 ベッドに付着しているものはおそらく血液だろう。が、乾き、変色しているうえに臭いもない。かなり前についたものだろう。


「昔は使われていたのかもしれねーな。あんまりここにいていい気分はしねえよ」


 そう言ったのはミッシェル。

 彼女も彼女で何か思うところがあるようだったが。


 空気が変わる。

 どこからか気配が感じられる。

 その瞬間。


 とんでもない殺気。天井と壁が破壊され、床は崩落する。さらにセキュリティが作動したらしく、隔壁が動く。


「危ない!」


「上だ!」


 マリウスたちは崩落に巻き込まれた。対処しようとしたエステルとニッテは襲撃者の手で吹っ飛ばされた。タケルとラリ、アカネは隔壁によって引き離された。

 そうして一行は分断される。


 崩落に巻き込まれず、地上部分に残されたミッシェル。彼女が土煙の中で見たのは2人の襲撃者。さらに襲撃者はミッシェルもよく知る人物たち――同胞であるCANNONSだった。


 ひとりは凶悪な顔の青年。

 もうひとりは血に飢えたような雰囲気を醸し出す女。

 どちらも明らかにただ者ではないし、ミッシェルも見たことのある人物たち。


「どこかで会うと思ったぜ。ギル、オフェリア」


 ミッシェルは2人の襲撃者を見てそう言った。

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