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11 独房と反逆者たち

「タケル……やっと来てくれたんだね。世界が変わっていく中でさ、君は僕のところに来てくれなかった。なんでか僕もわからないえど、そろそろって時に君は死ぬ。でもね、今回は違う。たとえ君の意志じゃなくても来てくれたことには変わらない。

 捕まってる? それなら僕が迎えに行くよ、タケル」


『転生病棟』の地下に囚われた青年グリフィン。長い紫髪にヘテロクロミア、入院着に身を包んだ彼は、探していた人物がここに来たことに気づいていた。その人物が見えているわけでもなければ声が聞こえるわけでもないのに。

 グリフィンの足首にはバーコードが印字されており、この病棟では被験者として扱われていることを示していた。


 グリフィンは立ち上がり、独房の閉ざされた扉に触れる。部屋の空調は一定に保たれているにもかかわらず、無機質な扉はあいかわらず冷たい。外側から施錠されており、グリフィン程度の人間なら扉を開けることもかなわない。

 だが、グリフィンには秘策があった。


「このことばかりは墓場に持っていくつもりだったけど……使いどころは今か」


 グリフィンはイデアを展開し、独房の扉を水に変化させた。これでグリフィンは外に出られる。グリフィンは独房を出て周囲に人がいないことを確認すると、他の独房の様子を確認することにした。

 今、地下牢の独房で使用中のものはグリフィンがいた独房をふくめて6つ。それらを1つ1つ見て回る。


 グリフィンの隣の独房には水色髪の女がいた。意識はなく、備え付けの医療用ベッドですやすやと眠っていた。彼女のことはグリフィンもよく知っている。同じ戦闘用の実験体で、暴れ者ゆえによく病棟の職員に反抗していた。しまいには脱走や職員の殺害までに至っており、戦闘用から燃料用に転用された。

 変わったのか変わらないのかわからないまま、グリフィンは次の独房の前へ。


 次の独房の前にはグリフィンもよく知る職員がいた。マリウスだ。


「……そうか。君は患者に入れ込みすぎたのか。まあ君ならやりかねないか。本当に君は僕たちのことを想っていてくれたようだからね」


 グリフィンの脳裏に、病棟での記憶がよみがえる。看護師や検査技師たちは事務的でどこかグリフィンを見下しているかのようだった。が、マリウスは違った。だから実験体からも好かれていた。グリフィンだってマリウスに対して悪い感情は抱いていなかった。


 グリフィンはさらに足を進める。

 マリウスの独房の隣には赤髪の見た目10歳前後の少女が閉じ込められていた。少女の目は吸血鬼のように赤い。詳細を知らない人間が彼女を見れば誰もが吸血鬼だと勘違いするだろう。だが、グリフィンは詳細を知っている側の人間。


「燃料用ホムンクルス……ロゼか」


 と、グリフィンは呟く。

 赤髪の少女の名はロゼ。とある目的のために作られたプロトタイプだとグリフィンは聞いているが、それ以上のことは知らない。

 グリフィンが独房を強化ガラスから覗き込むと、ロゼを目が合った。ロゼは何か口を動かしているようだったが、グリフィンにはわからない。そうしていると、ロゼはふくれっ面を見せ。


「話をしたいなら出すよ」


 と言って独房の壁に触れ、壁を水に変えて独房を開けた。

 すると。


「おおーっ!」


 と声を上げ、ロゼはグリフィンに向かってきて蹴りを入れようとした。が、グリフィンは片手でロゼの蹴りを受け止める。彼女は喧嘩っ早いようだが、力に関してはそうでもないらしい。


「やめてくれ、暴力的なことはしたくないんだ」


 グリフィンは困り顔でそう言った。


「ロゼが暴力的? ロゼ、ずっとここにいただけなのに」


 不満げにロゼは言う。だが、これ以上ロゼはグリフィンに対して抵抗しない。グリフィンが静かに目線でロゼを威嚇したのだ。


「出したと思ったら蹴られるかと思ってね。まあ、この通りだけど。ところでロゼはこの病棟を出たいかい?」


 グリフィンはロゼに尋ねた。


「わかんない。だってロゼ、生まれてからずっとここにいるんだもん」


「まあいいや。僕もここから出したい人がいるのでね。気が向いたらここを出よう」


 と言って、グリフィンはまだ見ていない独房を確認した。

 次の独房は部屋が緑色の光だけで照らされ、異様な雰囲気を放っていた。中にいるのは色のわからない入院着を着た女。近くにある椅子やベッドなどと比較すると彼女がかなり大柄だとわかる。


 グリフィンは最後の独房を覗き込む。

 やっと見つけた。そこにはタケルがおり、彼はすでに目を覚ましていた。部屋の中を調べてどうにか脱出の手がかりを探っている。ただし、タケルは何があったのか全裸。

 タケルの姿を見て昂揚するグリフィン。すぐさま独房の壁に触れ、壁を水に変えてタケルを解放する。


 グリフィンの心臓が高鳴る。この瞬間までずっと会いたいと願い続けた相手が、今ここにいる。タケルの表情は明るくなり、光を失っていたようだった両目に光が戻る。


「会いたかったよ、タケル」


 そう言ってグリフィンはタケルに手を差し伸べた。


【登場人物紹介】

グリフィン

『転生病棟』の実験体。用途は戦闘用。タケルに対して妙な執着を見せるが……?


ロゼ

『転生病棟』のホムンクルス。燃料用の実験体。外見は赤毛の少女で、極端に世間知らず。

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