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克法ロジックパラドックス -世界を変える簡単な方法-  作者: 墨崎游弥
反逆者、倉庫にて【施設破壊編】Side:パーシヴァル
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12 最重要情報

 壁とドアで仕切られたその先も同じような光景が続いていた。いくつものコンテナが置かれ、足場が組まれて上の階層が形作られている。が、上の階層の一部は足場が組まれているのではなく、1階と2階で明確に分けられているようでもある。

 それ以外は特段確認すべきものもないだろう。


「俺が転生病棟にいた頃……まあつい最近までだな。その頃はまだ死者蘇生もうまくいっていなかった」


 歩きながら、ふとパーシヴァルは言葉をこぼした。


「急にどうした?」


 と、ペドロ。


「さっきの蘭丸とロゼを見て思うところがあったんだ。確かに転生病棟では死者蘇生について研究しているやつはいたよ。でもな、あいつは転生病棟で蘭丸と一緒に死んだ。タケルやマリウスたちに殺されたんだよ」


 パーシヴァルは答え、語る。


 彼がそのことを知ったのは、再教育施設にいたとき。パーシヴァルが裏切りを明かした後、タケルもその口で語ったのだ。


「だろうな。そこまではわかる。俺には権限がなかったから詳しいことは知らねえが、お前はもっと知ってるんだろ? パーシヴァル」


 ペドロはそう聞き返した。


 パーシヴァルは「まいったな」と言わんばかりに再び口を開く。


「死者蘇生用の検体として霊安室から出された遺体の数は病棟でも把握していた。が、たまに遺体の数が合わないことがあった。俺は直接関わっていないが、ハリスが言うにはあいつでさえ深追いするなと釘を刺されたらしい。転生病棟でもかなりの権限がある、アイン・ソフ・オウルなのにだぞ?」


「恐ろしいな、Ω計画。一体誰なんだろうな。責任者だったハリスのいない今、果たして転生病棟で死者蘇生ができる人間がいるのやら」


 パーシヴァルの話を聞き、ペドロは言った。


「まあ、霊安室の近くで何か起きていることは知っていた。あの日タケルが生き返ったのも、もしかすると……いや、考えすぎか」


 と、パーシヴァル。


 一行はこの後も話をしながら歩き。

 鉄の階段をのぼり、上の階層へと移動した。


 この階層から屋上へと行けるらしい。が、屋上への扉はないらしく。


「構造が変わってるのか……」


 零は呟いた。

 もともと、2階に相当する階層には屋上へと通じる階段とその前の扉があった。が、その扉らしきものはなく。代わりに仮眠室らしきものがあった。


「3ヶ月も前だからな」


 ペドロは言った。


「そう言ってしまえばそれまでか」


 と、零。

 そこには一抹の後悔があるようにも見えた。


「ひとまず仮眠室を見てみようか。階段と同じ場所にあるのならもしや……」


 仮眠室らしき部屋にも目線を向け、ペドロは言った。


 そうして一行は扉の前に立ち。いつも通りにパーシヴァルが解錠した。


 案の定、その部屋は仮眠室だった。

 部屋にはベッドとロッカーとデスクが置かれ、壁にはカレンダーが貼られている。そのカレンダーは4月のもので、つい最近の日付まで「×」がつけられている。職員が使っていたのだろう。


 パーシヴァルの注意はカレンダーやデスクに向いたが、ロゼは違った。


「にいに、あれ。ベッドのした」


 ロゼは言った。


 パーシヴァルはしゃがんでペッドの下をのぞき込む。

 ベッドの下には紙切れが落ちていた。それは白紙ではなく何かが書かれているようだが。


「ロゼ、あれとってきていい?」


 ロゼはパーシヴァルに尋ねた。


「頼む」


 パーシヴァルはそれだけを言った。


 ロゼはその後、小さな体をベッドの下にねじ込み。ベッドの下に潜り込んで、落ちていた紙切れを手にする。何かが書かれているようだが、ロゼにはほとんど読めなかった。どれも難しい単語ばかりだったのだ。


 ロゼはベッドの下から這い出ると、パーシヴァルに紙切れを手渡した。


「よんで。ロゼ、わかんなかった」


 ロゼは言う。


「ああ」


 パーシヴァルは紙を受け取ると目を通す。


「1枚目は……小型飛行艇についてか。日付は4月5日。まだある可能性は高い。この近くに来たのが4月4日。それから空の様子は見ていたが、特に変わりはなかった。解体でもされていないなら……」


 と、パーシヴァルは呟いた。


「行けそうなのか?」


「そうだな」


 ペドロが言うと、パーシヴァルは答えた。


 パーシヴァルはその先にも目を通す。

 飛行艇の操縦方法、飛行艇のセキュリティ解除について。格納庫のパスワード。どれも外部に漏れればただではすまない内容だろう。


「このメモは無くすわけにはいかない。俺たちでメモを持っていよう。パスワードに操縦方法。どれかが無ければ空から脱出なんてできないぞ」


 パーシヴァルは言った。


「そりゃ違いねえ。俺も持っとこう」


 と、ペドロ。


 パーシヴァルは2枚目のメモに目を通し始めた。


 ――飛行艇の操縦もできるようになった。だが、僕は人間を使った発電なんてとんでもないものを見てしまった。疑問を持ってしまい、僕はついラオディケさんに聞いてしまった。その翌日、僕は新型Fタイプの兵器を持って戦場に送られることが決定した。使用者の命を消費するタイプの兵器だ。おそらく僕は死ぬ。だから僕は知りうる情報をここに残す。

 大陸の西部にはΩ計画の天文台がある。何に使われているかはわからないが、おそらく世界の思想がひっくり返るような施設だ。理事長の思想とも関係があるのかもしれない。


 それは遺書のようなものだった。

 一部はパーシヴァルたちも知っていたが、それ以外――特に後半部分は病棟幹部であるパーシヴァルさえも知らないことだった。


「……Ω計画ならやりかねないな。反抗した人間に死に場所を与え、粛正する。Fタイプの兵器が実戦投入されることは知らなかったが」


 パーシヴァルは呟いた。


「待て。俺はよくわからんぞ。粛正はそこそこ想像できるがFタイプの兵器?」


 ペドロが聞き返す。


「そういうのがあったんだ。ラオディケが実験していたのを見たことがある。それから、メモの後半部分には別の施設のことも書かれていたんだ」


 と、パーシヴァル。


「別の施設? 教会と寺院、この倉庫……色々と破壊したし北の研究所に本拠地は確認済だが……」


「大陸西部の施設のことは何一つわかってないだろ? そのうちのひとつが分かった。天文台だ」


 ペドロが尋ねると、パーシヴァルは答えた。


「これまた予想外の施設だな。何をするんだ、天文台で」


「さあな。だがメモによればレムリア大陸の思想がひっくり返るかもしれないとのことだ。北の研究所を片付けたら行ってみようと思う」


 パーシヴァルがそう言うと、しばらくペドロはだまり。


「……まあ、今は次の次の施設なんて手がかりもなかったわけだ。天文台に行ってみるか」


 ペドロは言った。


「その前にこの倉庫からの脱出だ。せっかく飛行艇の操縦方法も控えてある。早く脱出しよう」


 と、パーシヴァル一行は屋上へと向かおうとした。


 だが、ロゼは背後からの殺気に気づいた。


「にいに、うしろ」


 ロゼは言った。


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