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克法ロジックパラドックス -世界を変える簡単な方法-  作者: 墨崎游弥
反逆者、倉庫にて【施設破壊編】Side:パーシヴァル
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4 囚われの男

 ドアの先には広い倉庫があった。保管されているものはコンテナやそれより小さな箱。倉庫は3つの階層に分かれているようで、それらの階層間の移動はゴンドラで行われているようだ。


 最下層にあるのは主に大きなコンテナ。トラックや貨物列車に積まれているものと同じくらいの大きさで、人間を監禁することもできるくらい。一体何が入っているのだろうか。

 中層と最上層にあるのは小型の箱やそれらを運ぶために使われているであろう台車だ。やはり床の強度などもあるだろう。


 パーシヴァルは、手始めに今いる最下層から見て回ることにした。


 倉庫の最下層のコンテナはどれも鍵で厳重に保管されている。どれも電子鍵ではない鍵と錠前で施錠され、加えて錬金術で細工されている。オルセンの協力を得ることができたのなら空けられただろう。

 だが、そんなできないことを考えている暇などない。


 開け方とペドロやロゼの居場所について考えながらつかつかと倉庫を歩く。


 無意識だったのだろう。

 気がつけばパーシヴァルは先ほどから感じていた、ピリピリとした気配を放つ場所に吸い寄せられるように歩いていた。


 目の前には異様な雰囲気を放つコンテナがある。このコンテナも他のコンテナと同じ色、同じ鍵がかけられている。

 だが、何かが違う。


 パーシヴァルは思わずコンテナに触れた。


「……中に誰かがいる? しかもこの気配、あいつと似ているがあいつよりピリピリする。熟練のイデア使いか?」


 呟くパーシヴァル。


 中身が誰だったとしても、ここを開ける意味はあるだろう。

 パーシヴァルは思いきってコンテナに錬金術を使い、人が通れる程度の穴を空けた。


「……っ! なんだ、これは!」


 コンテナの中からしたのは、ペドロやロゼとは違う、聞き覚えのない声だった。

 仲間ではない、と落胆するパーシヴァル。それでもパーシヴァルは、中にいる人物と目が合った。


 まず見たのは、瑠璃色の瞳。パーシヴァルの知る人物では、ガネットと同じ目の色。だが、彼女と違って肌の色は薄い。化粧もしているようで、目の周りは黒く塗られている。目の下にあるのはピアスだろう。

 さらに見えたのは、レムリア大陸でも珍しい藍色の髪。これもガネットと同じ色。藍色の髪は肩より少し長いくらいで、前髪は右目を隠していた。

 服装はみすぼらしいシャツとズボン。ほぼ全裸のパーシヴァルよりはましだが、これでもひどい扱いを受けたのだろう。体型からはそれなりに身長の高い男だとわかる。

 それでもその男は美しかった。


「誰だ、あんた。こんなところに人がいるなんて聞いていない」


 パーシヴァルは言った。


「助け……じゃないのか。俺の名前は織部零。この倉庫の調査をしていた。お前は」


 その男――零は答えた。


「パーシヴァル。この倉庫を破壊しに来た」


 パーシヴァルはそうとだけ答える。

 すると、零の表情が明らかに変わる。


「まだだ……この倉庫の事情がわかるまでこの倉庫の破壊は待ってくれ。俺はまだ情報を集め切れていない!」


「情報……ということはΩ計画の人間ではないのか」


「そうだな……ところで、今日は何日だ?」


 零は尋ねた。


「事務所の時計で確認した限りだと、4月8日だな」


「4月……だと? 俺は3ヶ月もここに監禁されていたことになるのか……」


 パーシヴァルが答えると、零は驚く様子を見せた。それほど長く監禁されていたようだ。


 そんな零の様子を見て、パーシヴァルは語る。


「そうなるな。ちなみに、あんたが探っていた情報は古い可能性が高いぞ。3ヶ月前……1月8日から考えたら色々と変わった。転生病棟は崩壊したし、病棟の幹部は半分が死んだ。兵器工場も寺院も破壊された」


 これらはすべて2月半ば以降――零がコンテナの中にいた時に起きたこと。外からの情報が遮断されていたわけで、零は知っているはずもなかった。


 零は顔を左手で覆い、こう言った。


「なんてことだ……任務失敗じゃないか……」


 相当重要な任務だったのだろう。零は深く絶望している様子だった。


「……頼む、倉庫を破壊するなら俺も連れて行ってくれ。プロパガンダのビデオにお前の姿があったあたり、お前もΩ計画の関係者だろう?」


 と、零は続けた。

 そう言われ、パーシヴァルは一瞬答えに詰まるが。


「その通りだ。元だがな。俺の友人もあんたと同じことをしていた。潜入先は転生病棟。あいつは、正体をずっと隠して反乱を成功させたんだよ。すごいやつもいるもんだよな」


 パーシヴァルはそう言った。

 すると零も口を開き。


「それは凄いな。何があったかわからないが、俺としたことが……いや、こんなこと言っている場合じゃないな。連絡しないと。俺が生きていること、監禁されていた間に色々と変わったこと。お前、Ω計画の元関係者で裏切り者なら情報をくれ。俺もできる限りの情報を寄越すから」


「あんたが監禁されてから3ヶ月だぞ?」


 パーシヴァルは聞き返す。

 確かに正論ではあるが、それでも零は言う。


「それでも、お前は知らないだろう。俺をコンテナに閉じ込めたのは、望月(もちづき)(しずく)。錬金術師で、アノニマスなる人物の直属の部下だそうだ。ここで会ったし、プロパガンダのビデオにも出てきた」


 零の答えは、紛れもなくパーシヴァルの知らないことだった。

【登場人物紹介】

織部零

レムリア5th『町に怪奇が現れたら』、レムリア6th『GIFT of Judas』、レムリア外伝『Dogma of Judas』に登場。

鮮血の夜明団構成員で、所属は暗部。Ω計画の潜入調査をしていたが、第2倉庫で捕まってしまう。

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