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克法ロジックパラドックス -世界を変える簡単な方法-  作者: 墨崎游弥
反逆者の旅【大陸放浪編前編】
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38 次なる旅路

「タケルくん。あなたとは一緒に行けないけど、あまりここにこもらないでたまには手伝いに行くね」


 山奥の拠点を出るとき、リルトはタケルにこう言った。


 タケルたちは山奥での用事を済ませて再び下山してディレインの町に向かった。

 山奥でタケルたちが戦ったからか、道中での襲撃はなし。


「アイン・ソフ・オウルのひとりやふたり、襲撃してきても良いと思ったんだが……なんだか拍子抜けだったな」


 ディレインの町に着く頃、マリウスは言った。

 とはいえ、山を登り、降りてきた後だ。一行の顔には疲労の色がにじみ出ていた。


「確かにそうともいえる。だが研究施設や町なんかでは戦えても、あの山奥に送り込めなかったのだろうな」


 そう言ったのはスティーグだった。


「そりゃ、一理あるな。それか、研究と無関係なことはさせてもらえなかったか。とにかくその辺の事情はΩ計画のみぞ知るって感じだよな。コイツは何も吐いてくれなかったし」


 と、マリウス。

 彼に捕縛されたローベルトはあからさまに目をそらす。


「ったく、てめえはΩ計画の改造人間なのに本当に知らねえの?」


 目をそらせば、今度はミッシェルが悪そうな顔で尋ねた。

 だが、ローベルトは何も話さない。


「もしかして戦闘員だからって何も聞いてねえって?」


「……そうだよ。大事な情報がどうのってのは、俺たちの仕事じゃねえ。最前線で戦う人間が情報を持っていたらどうする?」


 ローベルトは答えた。


 考えてみれば当然のことだ。

 戦うことは捕まって拷問されるリスクもあるわけで。


「そりゃそうだな。聞くならアイン・ソフ・オウルだよな」


 と、マリウス。


 このときから、マリウスはディレインの町を出たときのことを考えていた。




 一行が鮮血の夜明団の本部にたどり着いたのは、下山した日の夕方だった。事前に会長シオンと話していた通り、これから山奥でのことを報告する。それから、捕縛したローベルトの引き渡しもしなくてはならない。


 本部の門で、守衛に手続きをしてタケル一行は本部に入る。

 すると、職員が執務室まで案内し。


「おかえり。1人増えているようだが、そいつは誰だ?」


 会長の席に座っていたシオンは言った。

 彼の隣に控えているのは監査官の初音。ほかならぬタケルを拷問した張本人。彼女は眼鏡越しに、狂気的なまなざしをむけていた。


「Ω計画の実験体で戦闘員だそうです。もし確保したら春月支部の検査に回せと話を聞いていまして」


 タケルはシオンの雰囲気や初音のまなざしに負けず、答えた。


「元戦闘員ということでミッシェルが検査を受けたようだが……」


「あたしは純正のCANNONS……ローベルトと同じ型の実験体じゃねえからな。純正の方をどうにか検査してほしいってわけ。ちょうど生きてもいるからさ」


 そう言ったのはミッシェル。


「なるほど。我々にとってはよくわからないやつ。あらかた検査をして遺伝子を採取したら、春月に移送しよう。ここからは我々に任せてくれないか?」


 と、シオン。


 鮮血の夜明団とあまり深く関わっていないタケルとエステルは、シオンを信用すべきか悩んでいたが。


「お任せしてもよろしいですか?」


 と、アカネは言った。

 マリウスとスティーグもシオンを信頼しているようで、異存はないらしい。


「ああ。任せてくれ。お前たちの時間をとるわけにもいかないだろうからな」


 シオンは答える。


「それから……お前たちはそこそこ急ぐ旅をしているようだが、これからどうする?」


 さらにシオンは続けた。


「今考えているところです。候補はいくつかあるんですが……」


 そう答えたのはタケル。

 まず第一候補は北――パロの町。それから南西近くのグレイヴワームに、とある人物が潜伏しているとされる町。加えて、レムリア大陸の外の島――パシフィス島。どこに行くかどうかをこの中から選ぶのだ。

 タケルはシオンに行き先の候補を書いた紙を手渡した。

 シオンは紙に目を通し。


「なるほどな……鮮血の夜明団の支部がある町なら俺に手伝えることはある。パロとグレイヴワームなら、支部長にこちらから声をかけられる。いや、先にパロ支部に行くのはどうだ?」


 シオンはそう言った。


「パロ支部ですか。あの北のところですよね」


 と、タケル。


「ああ。対魔族の最前線で、数年前にできた謎の研究施設への対処にも追われている。消息を絶った暗部のあいつによると、その研究施設はおそらくΩ計画のものだな」


 シオンは答えた。


「承知しました。できることなら、北の研究所も破壊してきます」


 そう答えたタケルの目には、確固たる意思があった。


 そうして、タケル一行はシオンに見送られつつ鮮血の夜明団の本部を後にする。


 スラニア山脈から大陸西の平野部へと向かう途中、運転中のスティーグの後ろ。マリウスはかかってきた電話を取った。


『マリウスか? 俺だ』


 電話をかけてきたのはパーシヴァル。

 テンプルズ支部で別れてから、パーシヴァルはペドロやロゼとともにΩ計画の施設を破壊すべく動いていた。


「おう、パーシヴァル。そっちはどうだ? 俺は……Ω計画に対抗できる協力者を見つけた」


 マリウスは言った。


『そうか。順調そうで何よりだ。俺たちは今、春月の少し南にある寺院を破壊した。そこもΩ計画の施設で、CANNONSとやらの教育をする場だったそうだ』


 と、パーシヴァル。


「へえ。そっちは次にどうする?」


『次は、少し南下して東海岸の倉庫を叩く』


 パーシヴァルがそう言うと、マリウスの表情は険しくなった。というのも、倉庫は鮮血の夜明団の暗部のひとりが消息を絶った場所。破壊した寺院より厳しい場所であることは容易に想像できた。


「倉庫な。気をつけろ。転生病棟並にとんでもねえ場所かもしねえ」


 マリウスは言った。


『気をつける。倉庫を叩いたら次は北だ。北に何かある』


「研究所だな。俺たちが今向かっているのもそっちだ。ま、その前にパロの町に用事があるから、合流するとすれば研究所だ。生き残れよ」


『そっちもな。俺たちもうまくやる』


 パーシヴァルがそう言い、電話が切れた。


 やがて車は坂道を抜け、平坦な森の道に入る。

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