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克法ロジックパラドックス -世界を変える簡単な方法-  作者: 墨崎游弥
反逆者の旅【大陸放浪編前編】
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35 敵襲

 ザグルールが、現れた敵意に気づいた直後のことだ。

 外で銃声がしたかと思えば、窓ガラスが割れ。血を流すエステル。彼女のこめかみを銃弾が貫通し、壁にめりこんでいた。


「……危なかった。私でなければ死んでいた」


 エステルは銃創を再生させつつそう言った。


「外に出て迎え撃つか。それぞれのタイミングで外に。得意な戦い方でやるぞ」


 と、ラディム。

 ある程度打ち解けたとはいえ、特にマリウスとスティーグはラディムの言葉を信用できなかった。

 だが、ラディムの身内であるザグルールが先陣を切ることとなった。


 ザグルールは割れた窓を開け、窓から外へ。

 外に出ると、周囲の様子を探るべく目を閉じて精神を統一し。


「わかっているよ。鬼才と天才のいるここを甘く見ないことだ。彼らを守る存在は、当然強いのだからね」


 と言って、ザグルールは目を開ける。

 彼の太陽のような瞳はうっすらと赤みを増していた。

 さらに黒くいくつにも分岐した翼のビジョン――ザグルールのイデアまでも展開した。


「退くなら今のうちだ。これから僕の信用した錬金術師たちがここに来る。意味することは、わかるね?」


 ザグルールは続ける。


 放つ雰囲気は異様だが、襲撃者たちはそれにも負けずにザグルールの前へと現れた。


「あるべき世界に比べれば、我らの命など惜しくない」


 襲撃者の先頭に立っていた男はそう言った。


 ならば、手加減などいらない。ザグルールは一瞬でその襲撃者の前まで詰め寄り。分岐した黒い翼で切り裂こうとした。が、襲撃者は持っていた武器で受け止め。


「増援が来るにしても今は1人だ! やれ!」


 先頭にいた襲撃者の声で、別の襲撃者たちはザグルールたちの家に押し入ろうとした。

 だが。


 衝撃波のようなもの――実際はそれですらない、謎のエネルギーが襲撃者たちを弾き飛ばす。ザグルールは口角を上げ。


「加勢、助かるよ。強くなくても数で押されるときついからね」


 ザグルールはそう言った。


 その時には、スティーグをはじめとしたタケル一行と、ラディムとリルトが外にいた。


「やろう。こいつら、あるべき世界とか言ってるから……きっと」


 ザグルールの声を合図にして、ミッシェルが戦陣を切る。というのも、彼女は襲撃者たちの中に見覚えのある人物を発見していた。


「へへ、見つけたぜローベルト! じゃなかった、クソ野郎! こいつだよ、春月の祠をぶっ壊したヤツ!」


 ミッシェルそう言うと、目的ではない襲撃者を適当に蹴散らしてローベルトの前へ。彼女の眼中にはもはや、あのとき仕留め損ねた男しかなかった。


「がっつくなよ。肉食女子はモテないぞ?」


 ローベルトはサーベルを抜いた。


 ザグルールとミッシェルに続き、他の面々も戦闘に入る。

 マリウスはイデア能力を発動し、怪獣へと姿を変える。こうなれば狙撃されても耐えられるし、遠距離攻撃もできる。


「お前ら、スナイパーには気をつけろ! もしやられたらタケルかリルトのところに行け!」


 マリウスは変身したことで大きく、よく通るようになった声でそう言った。さらにエステルも。


「私とマリウスが壁になる!」


 直後、2人の後ろにいたラディムを狙うように横から仮面の襲撃者が突っ込んできた。が、当然2人は気づいている。エステルはその身を翻し、蹴りを入れた。


「がはっ……!?」


 隙でもついたつもりだろうが、人間以上の感覚を有するエステルに対しては無意味。仮面の襲撃者は胸に蹴りを受けて即死した。


 それがきっかけとなり、タケルたち防衛側は勢いづく。

 その勢いを削ぐべく、遠くから狙撃手はスティーグ――倒せそうかつ殺しても問題ない人物を狙い、発砲。銃声が響く。

 真っ先に反応したのはまたしてもエステルで。


「危ない!」


 水の塊で銃弾を受け止めた。

 さらに、銃声と銃弾の方向から狙撃手の潜む方向を確認したマリウスはエネルギーを溜める。

 狙撃手は簡単には動けない。威力のある大きな狙撃銃を撃った後は反動で動けないだろう。しかも、場所は動きの制限される山、森。


 マリウスは溜め込んだエネルギーを光線として放出し、これまでにない威力で森ごと狙撃手を焼き払った。


「まるで怪獣の環境破壊だな……!」


 マリウスは呟く。

 そんなマリウスに迫る襲撃者のひとりを、スティーグが斬りつける。斬りつけてマリウスから引き剥がし。


「この程度……Ω計画の戦力を以てしてもこのような山奥にはアイン・ソフ・オウルを送り込めなかったと見た」


 スティーグは呟いた。


 その反対側、アカネとラディムが背中合わせで戦っていた。2人とも錬金術師。襲撃者と相対する中でそれぞれ考察していた。


「赤毛の。なにか違和感はないか?」


 ラディムは言った。


「おそらく同じ勢力の人と戦ったことあるけど、その人たちとは違う。均質な感じかな、クローンとかそういうの」


 アカネはそう答えながら、向かってきた襲撃者を殴りつける。とんでもない攻撃の重さに、襲撃者はのけぞる。さらにアカネは襲撃者の武器に対して錬金術を使う。


「なるほど、俺も同じように考えていた」


 と、ラディム。彼は彼で襲撃者の攻撃をいなす。ただの錬金術師だと言うラディムだが、戦闘も苦手ではないようだ。

 向かってきた襲撃者の攻撃を再び防ぎ、ラディムは続ける。


「採取して検証するか。連中の体の一部を手に入れる。DNAがわかればそれでいい」


「わかった。やってみるね」


 アカネはそう言うと、数名の襲撃者たちの中に突っ込んだ。それを待っていたかのように、襲撃者のひとりはアカネの攻撃を受け止める――なんてことはできない。

 アカネの攻撃は重く、襲撃者の男は何かに押しつぶされるようにして即死した。


 その様子を間近で見た別の襲撃者は声を漏らす。


「こいつ……ゴリラか?」


「褒め言葉だろうけどありきたりで面白くないっ!」


 アカネは畳みかけるように攻撃をしかけ、蹴りで襲撃者を昏倒させた。この威力だ。当分は目覚めないだろう。

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