プロローグ 病棟の反逆者
「カノン! お前を倒してでも外に出るんだ!」
少年は黒目の錬金術師を前にしてこう言った。
彼の後ろには錬金術によって改造された者たち、被験者、錬金術により生み出されたホムンクルスがいた。
彼らは反逆者。
病棟を支配し、非人道的な研究を行う錬金術師に囲われていた者たち。だが、あるとき錬金術師に歯向かった被験者が他の被験者を募り、反逆した。
「被検体の分際で我々に刃向かおうなど。やるんだ、アイン・ソフ・オウル」
黒目の錬金術師カノンが言うと、別の錬金術師たちが現れる。彼らと少年たち被験者は刃を交えることになるのだが。
ひとり、またひとりと被験者は倒される。
「ケヒャッ! ロクな力も武器もねえ君たちに何ができる!?」
「人間燃料がアタシたちに歯向かわないでちょうだい」
「ふむ、脱走した面子からこれは良い爆発が期待できそうですねえ」
アイン・ソフ・オウルの隊員たちは圧倒的な力で以て被験体たちを沈黙させ、殺し、爆破し。
気がつけば少年ひとりが残されることとなった。
「くっ、骨のある少年め。貴様は何と言う?」
女騎士を思わせる隊員はここまで耐えた少年を見て言った。
「タケル」
少年――タケルはそう名乗った。
「あくまで通称を名乗るか。錬金術学生だったタケルはもう死んだというのにな。ふはは、滑稽なことだ」
女はそう言うとタケルの胸を剣で刺し。
タケルは意識を失った。
「鎮圧したか。生き残りは閉鎖病棟に収容する。燃料用の生き残りは今すぐ生体炉へ回せ」
「承知しました。とはいえ、景気よく爆発してくれたのであんまり残っていませんよ?」
眼鏡をかけた女はそう言った。
ここはレムリア大陸の錬金術研究所。表向きは大病院ということになっているが、建物ひとつが研究施設として稼働。ここでなければできない、人体実験をはじめとした実験が行われている。
その名も『転生病棟』。
新作です。
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