表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/32

8.「いやあ。しかし、びっくりしたな。息子よ、父はてっきり」

ブックマーク・いいね・評価お願いします!制作の励みになります!

「領主様、頼みがあるんだが、いいか」


マスケット銃をシャルルに献上した後、レイは言った。


「なんだ。今なら何でも聞いてしまいそうだが」


「そりゃあいい」


ジャックはレイが次に言う言葉を予想できた。


「領主様、あんたのところの息子をウチのパーティーに入れていいか」


「・・・・・・」


しばしの沈黙が流れた。


はじめに口を開いたのはシャルルだった。


「レイ。自分が何を言っているのかわかっているのか」


「ああ。今日の決闘で確信した。ジャックは冒険者として生きるべきだ」


「お前ほどのものから見てもか」


「間違いねえ。数年あたしのところ預けてくれれば一流の剣士にしてやる」


「貴種たる我が息子の将来を、平民ですらない貴様が決めるのか」


静かな、しかし確実なプレッシャーが空間を包んでいくのが分かった。


「ああ」


「ほう」


お互いの体から染み出す、魔力同士のぶつかり。


その濃密さにジャックは気を失いかけていた。


「不敬であるぞ」


「不敬で結構。こちとらわざわざお伺い立ててやってるんだ。ありがたいと思え」


またお互い黙ってしまった。


「父上、レイ」


溜息を吐くシャルル。


「まあ、お前にこういうのは通じんか」


「そりゃあそうだろ。こちとら竜を狩ってきたばかりだ。今更人間一人怖くねえ」


「お前が息子のことを思って言っているのはよくわかる。日々世話になっているしな」


「じゃあ」


「しかし、だ。大事なのはジャックの意思だ。そうは思わんか」


「・・・・・・」


今度はレイが黙る番だった。


「お前がこんな風に段階を踏んでやってくるタイプとはこっちも思ってはおらん。大方、ジャックを先に誘って断られたのだろう。どうだ、ジャック」


「おっしゃる通りです。父上。私は冒険者ではなく、この街の領主となりたい」


「でもよ、この街の連中はジャックのことを侮ってやがる。単に魔法が使えないからってこの街の未来が暗いだのなんだのよ。あたしは許せねえ」


「魔法は貴種の証だ。そこは複雑なところだが、ま、私とて手をこまねいているわけではない。約束しよう。ジャックの魔法は必ず覚醒する」


「本当だろうな。嘘ならただじゃ置かねえからな」


「どうしてレイがそこまで怒るのさ・・・・・・父上。何か手立てがあるのですか」


ジャックにとっても寝耳に水であった。


「まあな」


「どうして今まで黙っていたのですか。そんな手があるのなら早く教えてくださらないと」


「父としても最後の手段と考えておってな。ただレイの言う通りの風評被害が出てしまっては致し方あるまいて」


「・・・・・・」


「悔しいか。自分の手で魔法を手に入れらないことが」


「ええ。まあ」

ジャックは目を伏せて言った。


シャルルがジャックの頭に手を置いて言った。

「案ずるな。私の予想では必ず覚醒するといってももおそらくそう簡単ではない」


「・・・・・・そうですか」

魔法を絶対に手に入れるための方策。その道のりを想像してジャックは今から寒気がしていた。


「なら、今回の話はいったんなしにしておいてやるよ。もしダメだったらわかってるよな」

ソファにふんぞり返ったレイが言った。


「そのときは冒険者でも何でも好きにするといい」


「どうしてレイが上から目線なのさ。父上も勝手に決めないでください」


シャルルが大きく笑って言った。

「いやあ。しかし、びっくりしたな。息子よ、父はてっきり」


「てっきり?」


「てっきりレイが婿取りのあいさつでもするのかと思っておったわ。いやあつい自分の時のことを思い出してしまった。あれは今と思い出しても大変だった」


「はあああああああああああ?」

レイが顔を真っ赤にしながら立ち上がった。


「・・・・・・父上」

父の良くないところが出てきたとジャックは思った。


「いやだってジャックがレイの横に神妙に座りながら、領主様頼みがあるんだが、であるぞ」


「レイにそんなつもりはありませんよ。ねえ、レイ」


「あ、あ、当たり前だろ」

レイがゆっくりと座り、俯く。


「ほら。父上のただの思い過ごしですよ」


シャルルが再び大きく笑った。

ブックマーク・いいね・評価お願いします!制作の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ