68.リリー入学式!の朝
「リリー、似合う!やっぱりかわいいわ、世界一!」
「ありがとう、マリー姉さま。姉さまも今日も素敵だよ!」
あれからあっという間に二年半が経ち、私もいよいよ学園へ入学だ。
魔王は不気味なほどに動きがなくて。ルシールたちによると、不完全な状態で浄化されたものだから、また完全に封印された可能性も高いのでは?とのこと。本当にそれならいいのだけれど。うーん。
「わっ、リリーねえたま、マリーねえたまといしょ!かわい!」
「きゃあー、ありがとう、エルぅ」
不穏な思考も、天使の前ではあっけなく吹き飛ぶ。そう!ウチのエルちゃん!イヤイヤ期のない奇跡の天使なのですよ!
グリグリ頬擦りが止まらない。
「きゃっ、ねえ、たまっ、くつぐった!」
くぅ~!それでも嬉しそうにきゃっきゃする天使……!控え目に言って最高。
「はあ~。これからエルといる時間が減るのがさびし~い!」
エルをさらにぎゅっと抱きしめる。
「ふふ、わたしの気持ちがわかったでしょう?」
「うん……。でも、姉さまとの時間が増えるのは嬉しいかな」
これも本当。学園も楽しみだし。
へにゃりと笑ってそう言うと、マリーアが私ごとぎゅってしてきた。
「二人のかわいい妹弟ができて、わたしは幸せ者だわ……」
「ほら、二人とも。気持ちはわかるけど、もう行きますよ」
三人できゃあきゃあぎゅっぎゅしていると、お母様が仕方ないわねと言った感じで声をかけてきた。
「そうだぞ!お父様だって離れがたくても毎日頑張ってお仕事に行っているんだからな!」
すっかり家族溺愛のお父様。よくこれだけの熱量を隠していたもんだよな、と、しみじみ思うわ。
「じゃあ、いってくるわね。エル、頑張ってお留守番できる?」
「できましゅ!あんも、しゅじゃんぬも、あいりもしぇばすもみんなであそぶでしゅ!」
アンとは、エルの乳母さんだ。その腕に抱っこされて屋敷のみんなにぺカーっと天使の笑顔を振り撒くエルに、さすがの侯爵家の使用人たちも「エル様……」「尊い……!」と相好を崩す。
うんうん、仕方ないわね。エルの可愛さは限界突破しているから。
「ヤバい……エル離れできないかも」
思わず溢した本音に、家族全員が頷く。
「当然だ。うちの家族はみんな可愛い。お父様は絶対に家族離れせんぞ!」
「あ、それはちょっと困ります」
「娘が冷たい!」
いつものようにお母様とマリーアに慰められながら、馬車へと乗り込むお父様。
サバンズ家は今日も仲良しです!




