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異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!  作者: 渡 幸美
第四章 聖女と勇者と精霊と

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挿入話 サーフィス=オルランド 2

「テンダーもかあ……」


ぐったりと、執務机に項垂れる。


学園祭からこっち、仕事が増えた、からではなく。


「まあ、ちょっと節々に感じることはあったよね」


と、苦笑いのマーク。


「そうなのか?テンダーはみんなに優しいから気づかなかったな」


とは、ヒンター。もっと人を見なくてはと一人言ちている。


「「どっちにしろ、頑張るしかないね」」


その通り。二人に言われるまでもなく…だが、


「ライバル、強すぎないか?」

「そこは否めないね」

「俺たちもどちらかに肩入れはできないしな、こうなると」

「確かに、そうだね」

「ぐぬぬ。まあ、でも当然だな。二人がきちんとしてくれていて、ありがたいよ……」


思わず情けない声になり、さらに机に突っ伏した。


だって前途多難すぎるだろ。この一年、リリーは口説くと照れてはくれるけど、()()自体を恥ずかしがっているだけで、まだまだ()()を持たれている訳でもないし。…兄のようには好かれているとは思うが、そんなのはコイツらとテンダーだってきっと同じだろう。




ーーー今日、話があると、テンダーが珍しく城に来た。

学園でも会えるし、何なら数日もすればサバンズ家でも会えるのに、休日にわざわざ、だ。

どうしたのかと(いぶか)しんでいると、拳をぎゅっと膝の上で握りしめて、一瞬だけ言い淀んで、でも俺たちを真っ直ぐに見て、はっきりと、


「俺もリリーのことを好きなんだって気づいたんだ。…今まで、フィスを応援していたのも嘘じゃない。俺が自覚して頑張ったところで可能性は低いと思うけど、フィスたちに…何より自分に嘘をつきたくなかったんだ。すまない!」


そう言い切って、カバッと頭を下げた。


俺はと言えば、情けなくも一瞬言葉が出なくて。もちろん怒りなんかじゃなく、でも表現が難しい感情が一斉に出てきてしまったのだ。


「フィス」


マークに耳打ちされて、ハッと我に返る。

どうやらヒンターも珍しく驚いて固まっていたようだった。


「……そうか。ひとまず、テンダー。頭は上げてくれよ」


内心バクバクしながらも、何とか言葉は発した。

少しだけ、冷静になってくる。


「まず、話してくれてありがとう。言いにくかったよな?なんというか……これからは一緒に頑張ろう!か?」

「は?」


頭をひねっても、語彙力がどこかへ行ってしまったらしく、うまく言葉が出てこない。けど、本心ではある。


「……いいのか?」

「いいも何も、残念なことにリリーの婚約者でも何でもないからな。俺の許可なんかいらないだろ。むしろ、ちゃんとテンダーが話してくれたことが嬉しいよ」


テンダーは少しきょとんとしているが、これも本心だ。


「ありがとう、フィス」


普段いかついと言われているテンダーの破顔一笑。ヤバい、これはやられるやつだ。


ふつふつと、焦りが込み上げてくる。


「っくっわ~!!テンダーもとか!リリーが全然靡いてもくれてないのに!ライバルたちが強い!!」

「はっ?フィスなんて王子で勇者だぞ?最強じゃないか。俺なんかの方が」

「お前何言ってんの?リリーにそんなの関係あると思ってんの?」

「……確かに」

「だろ?!まだ!誰も!そういう意味でリリーは縛れないんだよ」


はあ~、と思わずため息を吐く。


「本当にぜんっぜん靡いてくれないもんな…」

「さっきも言ってたな。そうなのか?」

「見ていてわかるだろ?まあ、ルシーにも似たようなもんだから、まだあれだけどさ…」

「いや、俺たちがいるから照れてるだけかと」

「希望的観測だな、それは」


ゴクリと、二人で喉を鳴らす。


「まあ、まだ大人びいていてもリリーは10歳だからね。ゆっくり焦らずにいきなよ、二人とも」

「うるさいぞ、婚約者持ちが」

「え~」


マークが眉を下げる。そうコイツは、先日相思相愛の幼なじみとめでたく婚約をしたのだ。


「こら、八つ当たりすんな。マークの言うことも一理あるだろ。

…でも、あれか?マリーにはテンダーの方が好感度高そうか?」


ザーッと、血の気が引いた。

ものすごく、あり得る。というか、その通りだろ。


「……そういえば、マリーは確かにフィスに厳しいけど、なんで?」

「うっ」


気持ちを正直に話してくれたテンダーにいつまでも隠すのはダメだと思い、諦めてやらかしたお茶会について話した。


「き、厳しいんだな、マリー」

「そうだな。まあ、フィスがというよりもリリーに近づく輩に厳しいと言うか何と言うかという部分もある気がするが」


テンダーが戦き、ヒンターがフォローなのか何なのか微妙なことを言う。


ともかく、その場はお互いの健闘を祈るような感じでお開きになり。


ーーー今に至る、訳だが。


「テンダーなあ。手先器用だし、好感度高いよな。しかも剣も強いしさあ、この前リリーもカッコよかったって褒めてたよな…。俺も何か作るべき?」

「落ち着きなよ。フィスはフィスなんだから。フィスにもありがとうって可愛く言ってたじゃない、リリー」

「そうそう。自分らしさを大事にするのは好感度高いようだぞ」


婚約者持ちといないはずの側近にフォローされる。


「何だか二人に置いていかれてない?俺。マークはちょっと分かるけど、ヒンターまで」


ジト目で言うと「一般論だよ。姉も言っていた」と、焦ったように返されたけど。まあ、いいか


ぐらぐら揺れて、情けない勇者だけど。ダメと言われても、仕方ない。だってリリーは諦められないし、諦めたくないし。


「あー、もう!分かってますよ!自分なりに頑張るよ!!」


それしかできないよな。


ルシーもテンダーもカッコいいしさ。負けないようにするしかないだろ。


うんうんと、先に大人になったような側近二人を横目に見つつ、俺は俺らしく、少しずつ進んで行こう。


……進める、よな?


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