66.新しい家族
そしてまた日々は過ぎて行き。
本日はサバンズ家の一大事、お母様の出産が始まっております!
そして予想通り、陣痛が始まったと同時に騒ぎ始めたお父様は部屋から追い出され、私たちと別室で待機となっております。
この世界でも立ち会い可能のようだけど、あまりのお父様の動揺っぷりにお母様がやんわりと断っていた。まったく情けないな~、と思うと同時に、それだけ心配なんだろうとちょっとほっこりしたりしている。
「お父様、少しお座りになりませんか」
が、さすがに部屋中をウロウロしすぎているので声をかける。
「う、うむ。でもじっとしていると落ち着かなくてな。リリーは落ち着いているな」
「そうですね。まあ、マリーお姉さまもいますし…」
「そうだが!だって痛いんだぞ!?」
まあ、知っている。言えないけど。記憶の彼方にはなっているけれど、よく言われる鼻からスイカが出るくらいと言われるのも伊達じゃなかったわ、と思ったのは覚えている。痛いだけでは表現できない痛さだよねぇ。
でも。
「お父様がそんなに一緒に痛そうにしてくれたら、お母様もうれしいでしょうね」
「リリー…お父様は時々母上…リリーのおばあ様と話している気持ちになるよ…」
遠い目をされた。ヤバい、オバチャン記憶を押し止めなくては。
「ふふっ。でも少しだけ落ち着いたでしょ?お父様。万が一はない方がいいですけれど、その時はわたくし、誰がなんと言おうともお義母様と赤ちゃんを守りますのでご心配なく!」
「…頼もしい娘たちがいてくれて、お父様は幸せだよ……」
へにゃり、とお父様は微笑み、すとんとソファーに座る。
そんなやりとりを、スザンヌとアイリに温かく見守られながら、お茶を5回くらいお代わりした頃。
「おぎゃぁあぁっ!!」
と、隣の部屋から元気な泣き声が聞こえ、全員でバッと立ち上がる。すると部屋のドアがバタンと開き、
「お産まれになりました!元気な男の子でございます!!」
と、出産を手伝っていた、お母様の侍女さんが飛び込んできた。
「よかった!弟かあ!」
「ほんとによかった!もう会いに行っても大丈夫かしら?」
「もちろんでございます!どうぞ」
私たちが大はしゃぎしながら部屋を出ようとしたところで、お父様が静かなことに気づく。
「あれ?お父様…」
振り返ると、お父様は静かに泣いていた。隠すこともせずに、ボロボロと涙を溢して。
「お父様」
マリーアが優しく寄り添う。
「すまない、安心して……リリーの時から間が空いたから、心配で……よかった……」
「はい、旦那様。奥様もお元気でございます」
「ああ、そうか、うん、よかった、よかった……」
「もう!お父様、しゃんとしないと!行きますよ!」って、元気に声をかけて部屋を出たけれど、私とマリーアももらい泣きをしてしまった。
侍女のみんなも、泣き笑いだ。
お父様が優しい人で幸せだ。ヘタレだけど。
前世の記憶を思い出せて、この優しさに気づけて良かった。この大事な家族を、なくさずに済んで良かった。なんで私がリリーで、前世持ちなのかはわからないけれど、そんなことどうでもいいくらい幸せだ。
そして今、新しい家族まで。
……絶対になくさないぞ。
お母様の部屋に入ると、天女か?という程の優しい微笑みを浮かべたお母様と、天使の生まれ変わりか?というくらいの可愛い可愛い×1000000000の弟が、おくるみにくるまれてスヤスヤと眠っていた。
「「ほわぁぁぁぁぁ!てんしぃ……!!」」
マリーアと共に駆け寄る。
「ジョゼ。お疲れ様。ありがとう、本当にありがとう」
「……はい、アル様」
涙の後が残るお父様の頰を、そっと撫でるお母様。美しい絵画のようだ。
そしてお医者さまが、そっとお父様に赤ちゃんを抱かせてくれた。
「お父様!お名前は決まっているのですか?」
「ああ。お母様と、男の子ならエルランサと」
「エルランサ!かっこいい!エルぅ~、リリーお姉さまですよ~!」
「エルランサ!マリーお姉さまよ~!」
「エルランサ、お父様だぞ」
みんなで囲んできゃっきゃする。
ふにゃふにゃしてる~、当たり前なんだけど~!ほんとかわいい、新生児最高!一瞬だから、楽しむわよ!人手も多いし、なんて幸せ、お嬢様生活!ありがとうございます!
「エルランサ、サバンズ家へようこそ!一緒に幸せになろうね」
これからますます楽しくするからね!




