64.新しい関係の始まり
想定外の学園祭から1ヶ月。
あれだけ観客の皆さまがいたし、たくさんの妖精さんも出現したし、誤魔化すのも困難ということで、陛下と学園長と私たちも参加した話し合いの結果、魔王のアーティファクトに対しての注意喚起の発表をすることになった。
怪しげなものには触れずに、王家に報・連・相を!ってことで。
ちなみに、アーティファクト満載のドゥルキス家はどうなのかとの心配は『そんなもの、僕が気づかないわけないでしょ?』との、イルスの一言で終了した。
封印のヒビに関しては、調査中。こちらは不安を煽りすぎるので、公表は控えた。
中止になった剣術大会も、近々予定を組むらしい。上級生とかだと、将来の進路にも関わるし、学園もそこは何とかしてやりたいもんね。
そしてエレナは、1ヶ月の停学という名の休学。アーティファクトの影響とは言え、学園祭は中断されてしまったし、そこは表向きの処罰と。裏は彼女の環境を慮ってと、後遺症がないかとの確認と、アーティファクトについての情報の聞き取りとで。
もちろん、しっかりと協力してくれているけれど、どこで手に入れたのかはどうしても思い出せないらしい。弟くんも。後遺症もなさそう。まあ、うちの聖女マリーアの浄化をまた掛けたしね!ドヤア。
グリッタ家は心配だったけど、侯爵は少しだけ大人しくなったみたい。ケガも、あの後すぐに治療できたし、何より、ローレンがいろいろと努力してくれているようだ。
兄弟なんだから仲良くしなよ!って強制するのは違うけど、うまく付き合えるに越したことはないもんねぇ。仲良くなれたら楽しいしね!
そして。
「本日はお招きいただきまして…」
明日から休学明けというエレナを、マリーアと二人でサバンズ家お茶会に招待した。
外に対しての仲良しアピールとして、明日からリスタートのエレナの学園生活が少しでも気楽になるようにとの、ちょっとした心遣いだ。役に立てればいいけど。
せっかくのご縁、本当に仲良くもなりたいし。
秋も深くなり外はだいぶ寒くなってきたので、本日はサバンズ家自慢のサロンにて。
「……改めまして、お二人には大変なご迷惑をお掛け致しました。その後のお気遣いも、なんとお礼を申したら……」
ソファーに座る前に、エレナはまた深々と頭を下げる。
「友達なんだから、当たり前でしょ!これからは堅苦しいのはなしにしたいわ、エレナ」
「マリー様……」
「様もナシよ!聖女命令なんだから!」
マリーアのいたずらっ子な笑顔に、エレナもつられて「ありがとう」と破顔する。
「お姉さまが増えて嬉しいです!エレナ様、さっそくお茶に致しましょう」
「ありがとうござ、いえ、ありがとう、リリー。リリーも親しく話して欲しいわ」
「…いいの?」
「もちろんよ。わたしも妹が欲しかったから、嬉しいわ」
儚げ美少女がはにかむ姿もよき……!
うっすらと染まる頰が、なんかこう、庇護欲をそそるよね。
とか、悶える私は置いといて。
和やかにお茶会は始まり、エレナの近況を聞く。
「お兄様にね、泣いて謝られたの。今まですまなかった、って。あ、でもね、昔はお兄様もわたしたちを庇うことを言ってくれたのよ?でもその都度、父がさらにわたしたちを詰るから、何も言えなくなって……。わたしは仕方ないと思う部分も多かったの。
でも、お兄様が結局は自分の保身だったって。褒められてはいても、父の機嫌を損ねたら追い出されるかもって思いがあったって。確かに保身かもしれないけれど、お兄様だってまだまだ子どもの頃だもの。やっぱり仕方なかったと思うの。
……でもね、話してくれたことが、嬉しくて」
そう語る、彼女の顔はとても穏やかで、しっかりとかわいい妹だった。ローレンも甘々になったりしちゃうのでは?と思うくらいに。
「二人と皆さんの心遣いで、世間でも同情していただいて、許されているのは本当にありがたいの。でも、過去の事も含めて、わたしはきちんと自分を振り返って反省したくて。偽善者と言われてもなんでも、今までどこか他人事だった慈善活動をしっかりすることから始めたいと思っていて。病院の介助とか」
「その前向きな姿勢は素敵だと思う!エレナの水魔法は綺麗だし、きっと喜ばれるわ」
「……そう思う?」
「思う!」
マリーアの強い肯定に、エレナがホッとした笑顔を浮かべる。いいわね、絵になるわ、快活美少女と儚げ美少女の共演。
そうそう、これこれ。いがみ合いからの仲良しモード。最高。
そして一通り、今後のやりたいことなんかを三人で話して、一段落着いた頃。
「それと、あの。グローリア様のこと、なのだけれど……」
エレナは少しだけ言いづらそうに、でもしっかりと私たちを見て、そう口にした。
グローリアは今回の件に関して、直接関係はないけれど、やっぱりあれかな、サーフィス関連かな。
なかなか答えるのが難しいこともありそう、だなあ……。




