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異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!  作者: 渡 幸美
第三章 建国祭と学園と

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63.学園祭。FINAL.

『召喚』


魔王が放つ、嫌な予感しかしない言葉だ。


そしてその頭上に、ぽっかりと深い暗黒の渦が現れる。


『解放』


ニイッと魔王は容赦なく嗤い、それを、それらを呼び出した。


「魔物…!くそ、学園には結界が張ってあるのに」

『ふふ、空間を繋げばどうとでもなる。さあ、勇者諸君、せいぜいわたしを愉しませてくれ』


フィスの言葉に魔王が本当に愉しそうに嗤う。

そして暗黒の渦から、次々と魔物が這い出てきた。


「すすす、スタンピードっ?!」

「大丈夫だ、リリー。それほどの数じゃない。下がってて」

「テンダー!でもたくさん」

「大丈夫」


テンダーは剣に炎を纏わせ、十数匹いたホーンラビットを一瞬で斬り伏せた。周りに、血と肉の焼けた匂いが充満する。


テンダー凄い!けど、情けないけど、この匂いに吐き気がする。こんな光景、話で聞くのとは訳が違う。


ーーー私はどこかで、楽観視をし過ぎていたんだ。


「うっ、うっ」


情けないやら悔しいやらで、勝手に涙が溢れてきてしまう。

動きたいのに、身体が言うことをきかない。


「リリー!どこか痛いのか?」

「ちが、ごめ、わたし…」

「フィス。きっと違う。リリーたちは魔物に慣れていない」

「あぁ、そうだよな。マリー、リリーとイデアを結界で守っていてくれ」

「わかったわ」


リリーが私たちを囲む結界を張る。


「で、でも、フィス、テンダー」

「俺たちは大丈夫だ!余裕ができたら魔法でフォローしてくれ」


サーフィスはポンポンと私の頭を撫でて。


「いつも元気なリリーの、そんな一面も可愛いぞ」

「おう!たまにはカッコいいとこ見せないとな!」

「たまにはとは何だ!」


なんて軽口を言い合って、二人で魔物へと向かう。


いつもの二人に、少しだけ肩の力が抜けた。


「リリー、大丈夫?」

「マリー姉さま…わた、わたし、なんだか口だけで、ごめんなさい」


マリーアは首を振り、優しく撫でてくれる。


「リリー、わたしも身体が固まってしまったわ。一緒よ」

「イデア…」


まだ怖い。怖いけど、私たちだって愛し子の端くれだ。

三人でぎゅっと抱き合って、覚悟を決める。


「まだ怖い、けど。スタンピードじゃなくたって、まだたくさんいる。二人のフォローをする!姉さま、結界を外して!」

「わたしも、大丈夫!頑張る」

「了解!」


マリーアが結界を解除する。途端に猛烈な獣臭が襲いかかる。けど、怯まない。私たちには、精霊の加護だってある!遠くで嗤って見ている、魔王の思い通りになんかしないんだから!


「風よ切り裂け!」

「ストーンランス!」

「ホーリーランス!」


剣と違って、直接腕に重みを感じることはない。けれど、魔物だけど、動物の命を奪うことに変わりはない。こんな時は、前世の記憶が邪魔をする。どうしたって、慣れない。


「魔物討伐部隊とか…気楽に言ってすみませんでした」

「どうしたの?大丈夫?リリー」


私の一人反省会と一人言に、マリーアが振り返る。「なんでもない」と言いかけて、思考が固まる。


「姉さま、危ない!」


視線を私にずらしたマリーアの横に、魔物の大きな爪が迫ってきていた。

私のダメダメなことに、マリーアを巻き込むなんて!

私は咄嗟にマリーアを突き飛ばした。


「リリー!」


マリーアの悲鳴のような叫びが聞こえる。

良かった、マリーアは大丈夫みたいだ。

私も大丈夫だよ、飛んでるけど、痛くない。きっとルシーの加護のお陰だ。

けど、ちょっと頭が、くら、くら……


誰かが、遠くから叫んで、私を抱き抱えてくれる、感覚。


そこで、意識を手放した。


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