58.学園祭。now.3
エレナに感心しながらもちょっと鬱々して、しばし。
「55ー26!マリーア=サバンズの勝利!」
会場がまた、どっと沸く。
エレナもすごいが、ヒロインマリーアもさすがだった。
周囲の人たちも「初めての一年生優勝か?!」と盛り上りを見せている。
「リ、リリー。マリーもすごいね」
「ほっ、ほんとだね」
と、私たちはもう両手を繋いでいる状態だ。
お父様とお母様も、さすがにここまでとは思ってなかったらしく、驚きと喜びで顔が上気している。その隣でドゥルキス夫妻も興奮気味にマリーアをベタ褒めだ。
マリーア、カッコイイ!!
夜遅くまで魔力コントロールの練習をしてるなあと思っていたのだけれど、このためだったんだよね。さすがだなあ。
マリーアは確かに才能がある、あるけれど、さらに努力ができる人なんだよ。そもそも、努力できる人が才能のある人だって、私は思っているけどね!……私も見習おう。前世にちょっとサボった分も。
そんなこんなでトーナメントは順調に消化され、なんと本当にマリーアとエレナの決勝となった。
周りのざわめきがすごい。
初の一年生同士の決勝だし、それはそうか。
「素晴らしいね。お二人ともに全て50越えだ」
「まったくですな。聞こえて来たことによりますと、あのお二人に引っ張られて、他の子どもたちも例年より伸びたらしいですぞ」
「確かに、今年は皆30前後だものな。なかなかないぞ」
「これは上級生の部も楽しみですな」
ほうほうほう。
いいですね!できる人に引っ張られての、自分のガラスの天井破り!青春だわ~!
お互いに切磋琢磨し合ってのドキュメンタリーとか、大好きだったのよね。部活とかの。
ぶつかり合いながらも、最後には認め合う二人…!うん、これ、アリじゃない?
「お待たせ致しました!決勝戦を開始します!一年生初優勝は、エレナ=グリッタか?マリーア=サバンズか?」
おおおおっ、と期待感を表すような歓声。
二人はお互いを見ずに、的を見つめている。な、なんか、あんまり認め合うような雰囲気はないけども。
そして。
「決勝戦!始め!」
開始の合図とともに、会場はしんとなり、皆の視線がステージに集中する。
二人は次々と的を落としていく。
その内に、二人の邪魔をしないように息を潜めていた観客から、だんだんと戸惑いのようなざわめきが広がり出す。
無理もない。エレナも今までと同じように、いや、むしろ決勝の方がさらに精度が上がって見えるくらいなのに、マリーアがその上を行っているからだ。
「ま、まりーねえさま、ひとつも外してなくない……?」
「だ、だよね?すごすぎるわ、マリー」
イデアーレと前のめりで見てしまう。いや、よく見たら、観客の皆様のほとんどが前のめりだわ。
…3、2、1。
「そこまで!72-59!マリーア=サバンズの勝利!」
わあっ!!と、今まで聞いたことのないような大歓声が会場中に響き渡る。
「素晴らしい試合でした!二人からの感想は、全ての試合の終了後にまた!」
コメントは後ほどか~、と思ってマリーアを見つめていたら、視線に気付いてくれたのか、こちらを見て笑顔で手を振ってくれた。私とイデアーレもブンブン振り返す。
もちろん、後ろで泣き笑いの両親もだ。
エレナは今までの試合と同様に、さらっとステージから降りて去ってしまっている。
「いや~、驚いた!さすが聖女さま候補ってところですかな!」
「まさしく。グリッタ嬢は残念ですな。今年でなければ間違いなく優勝でしたのに」
そう興奮しながら話す観客の声が耳に入る。
……それは確かにあるよね~。神様どんな意地悪なのって言いたくなるくらいに。いつもの時代なら間違いなく天才と呼ばれるであろう人が、さらに突き抜けての天才が上にいて、2番手に甘んじてしまう時が。
きっとそれを、辛く感じてしまうこともあるだろうな、と思う。
けれど、その2番手は、胸を張っていいことのはずだ。少なくとも今回のエレナの記録は素晴らしかった。
「リリー!みんな!見てくれていた?」
そんなことをしみじみと考えていると、華やぐ笑顔の女神マリーアが、観客席へと来てくれた。
「もちろんだよ~!姉さますごかった~!」
「感動したわ、マリー!」
「うれしい。ありがとう、二人とも!頑張ってよかった」
ぶふぉっ、美少女の照れたハニカミ笑顔の破壊力よ。浄化されるわ~。
「マリー、おめでとう。お母様、途中で立ち上がりそうになってしまったわ」
「マ、マリー、なんて素晴らしいんだ……」
目にいっぱい涙を浮かべて喜ぶ両親に、マリーアも貰い泣きしそうになりながら、二人に抱きつく。
「お父様、お母様、応援ありがとうございます!アドバイスを役立たせていただきました!」
ふふっ、といたずらっぽく笑うマリーアに、また二人がそれぞれ抱き締める。お隣のドゥルキス夫妻も温かい目で見守ってくれている。
マリーアが、そんなご夫妻にもお礼を言おうとした時。
「やっぱりお前は何をしても中途半端だよなあ。2番手にしかなれんのか!」
という、あり得ない言葉が耳に入る。
妙に声が通るその人は、エレナを見下ろしながら「情けない」だの、「やはりこんなものか」だの、嫌な言葉を嬉々として言っているようにさえ見える。
「グリッタ侯爵…。あの方は変わらんのか…」
お父様が少しため息を吐きながらぼやき、ああ、やはりエレナの父親なのかと思う。残念なことに。
周りの人たちも気遣わしげに見ているが、やはり他家のこと、口を出せずにいるようだ。
エレナがなんでマリーアに、私たちに絡むのかと思っていたけれど。
なんとなく、理由がわかった気がした。




