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異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!  作者: 渡 幸美
第三章 建国祭と学園と

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53.夏休み明け

今回の後半はマリーア視点です。

おじい様たちの件は、身内の中で済んだので外には漏れずに済んだけど、サーフィスたちが話していた事件と似た怖さがあったので、手紙で知らせることにした。


そして、念の為ルシールたちにも。報連相は大事だもんね。


でもやっぱり封印は大丈夫らしくて。彼らも気持ち悪いなと言っていた。いろいろ確認する模様。


「てか、そういえば封印されてるのって、どこだ?」


肝心な事をきいてなかったなあ。私たちにも秘密とかじゃないよね?あ、サーフィスは知ってるかな?王族は知ってるよね。たぶん。


「リリー!じゃあ行ってくるわね!」


ぶつぶつと考えていたら、マリーアが私の部屋のドアからひょっこりとご尊顔を出してきた。


「わっ、もうそんな時間?待って~、お見送りさせて~」


今日からマリーアたちは新学期スタートだ。

慌てて後を追い、エントランスで家族と見送りに立つ。


「行って参ります」

「ああ、行っておいで」

「行ってらっしゃい。気をつけてね。マリー」

「行ってらっしゃい。姉さま、ちゃんとイデアの腕輪は着けてる?外しちゃだめだからねっ」

「大丈夫よ、リリーは心配性ね。ありがとう」


三人にクスクス笑われるけど、いいじゃん、心配なんだもん!


「だって。精霊さんたちにもくれぐれも外すなって言われたじゃない」

「分かってるわ。気をつける」


マリーアは私の頭をポンポンして、出掛けて行った。




いつもの道を通り、馬車で学園に到着した。

新学期。気合いを入れていこうと、ぐっと拳を握りしめたところで、かわいい妹の心配そうな顔を思い出し、クスッとしてしまう。


今日も愛されているなと再認識して、ニヤニヤしちゃうわ。グリッタ様の事で余計な心配をかけてしまっているのは申し訳ないけれど。


「おはよう、マリー」

「あら、ヒンター。おはよう。今日は一人?」

「少し職員室に用事があってさ。終わってエントランスを通りかかったとこ」

「なるほど」


学園に到着しエントランスを歩いていると、珍しく一人でいるヒンターに会った。普段はほぼほぼフィスと一緒だもの。


「せっかくだし、教室まで送る」

「あら、ありがとう」

「ん」


ひょいっと、鞄まで持ってくれる。


「ヒンター、鞄までいいわよ」

「大事な姫ですから」

「本当に思ってる~?まあ、ありがと」


おどけつつも、鞄を返す気がなさそうなので、素直に甘えることにした。


「初日からテストとか、この学園わりと鬼だよな」とか、なんやかんやと雑談をしながら教室へ向かう。


ヒンターは、人の機微に細やかに気付く人だ。従兄弟なだけあって、顔がフィスに似ているのは確かだけど、王太子教育からは少し逸れるせいか醸し出す雰囲気は異なる。今なら色変え魔法を使われてもどちらがどちらかすぐに気付けるくらいには違いが分かる。


教室に近づいて来ると、ヒンターが雑談を止めてふと立ち止まり、「あ~」とか「う~」とか言い出した。私がどうしたの?と聞く前に、


「大丈夫そうか?……その、グリッタ嬢のこととか」


と、意を決したように言ってきた。


……ああ、この人も心配してくれていたのだと、改めて思う。


「大丈夫よ。みんなにもグチを聞いてもらっちゃったしね」

「そうか」

「うん。でも心強いよ。ありがとう」

「ん。だったら、いいけど…あ!腕輪、ちゃんとしてるよな?」

「ふふっ、ヒンターまでリリーみたい。ちゃんと着けてるわよ、ほら」


そう言って、左腕を軽く持ち上げて見せる。


「よし」


なんて、なんでそんなにほっとしたような笑顔を向けるのよ。ほんとにリリーみたい。


ヒンターのくせに。


「マリー、おはよう。あ、ヒンター、ちゃんとマリーに会えたんだね?良かった確認できた?」

「……確認?」

「だっ、テンダー!」

「え?何?フィスはちゃんと送って来たよ?」


「そうじゃ…!いや、もういい!じゃあ、お互いテスト頑張ろうなっ!」と、ヒンターは慌てるように自分の教室に向かって行った。


「どうしたんだろ、慌てて。ヒンターにしては珍しいよね?」


不思議そうに笑うテンダーに、「そうね」と返事をしながら、ドキドキする。


「……フィスを教室まで送るの、頼まれたの?」

「ん?そう。誰か一人いればいいんだけどさ。今朝はマークが馬車トラブルで遅れてて、俺かヒンターだったの。そしたら、マリーが心配だから確認してきていいか、って。ヒンターって仲間想いだよね」

「……うん」


そう、仲間想いだ。ヒンターはそういう人だ。


でも、私に隠してわざわざエントランスで待っててくれたということよね?

あんなに聞きにくそうに心配を口にしてくれて、あんなホッとした顔をされて、慌てられたけれど。


うん、仲間想いよね。ヒンターだもん。きっとそうよ。


「あれ?マリー、顔赤いよ?熱はない?大丈夫?」

「えっ?!だっ、大丈夫大丈夫!!」


これまた仲間想いなテンダーの背中を押しながら、私は教室に入る。


うん、そう、みんな仲間想いなのよね。


うん。



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