48.顔合わせ 3
「それでも俺は、マリーが聖女だと思うが」
一瞬の沈黙を破って、そう言ったのはヒンターだった。ものすごく当たり前だって顔をして。
「何を、」
「根拠か?まずは、最初の茶会の件だな」
ゲホッと急にサーフィスが咳き込んだのを、イデアーレとテンダーが不思議そうに心配して、マークスがそんな二人に大丈夫とジェスチャーしている。
「あれは、リリーだって」
「誰よりも先に正確に気づいたのはマリーだ」
それはそう。
「それに魔力量だけでは測れないのは重々承知しているが、紺色魔力はそういない」
「リ、」
「リリーも素晴らしいが、精霊さまの愛し子としての上乗せ分みたいのもあるのだろう?いや、リリーを馬鹿にしている訳じゃないからな?愛し子もすごいと思ってるぞ?」
「ふふっ、分かってるよ、ヒンター」
普段クールなヒンターが、何となく必死でフォローしているのがくすぐったい。
「それに何より、マリーの魔力は温かい。他の誰とも違うと思う」
「あっ、それ、僕もわかる!癒しの授業の時思った!」
「あ~、確かに!」
ヒンターの言葉に、マークス、テンダーと続く。
「あの、僭越ながら、だけどっ。わたしもそう思うわ、マリー」
「イデア」
「マリーは、いつも無意識に周りの人を優先するよね?もちろん、それだけが聖女様の素質なのかなんて分からないけど、寄り添ってくれて、肯定してくれて。ダメなことはダメって言ってくれるし、でも、人を悪く言わないの。今回のグリッタ様のことだって、文句言ってもいいくらいなのに、全部自分が引き受けているよね?そんなこと、誰にもできることではないと思うの!」
仔猫みたいに必死で言い募るイデアがかわい。そしてそれにみんなも深く頷いている。
さすが、みんな姉さまを分かってるねっ!
「そうそう!さすがみんな、わかってるぅ~!わたしの自慢の姉さまよ!」
「でた、相互シスコン」
ヒンターの言葉にみんなで笑う。「もう、みんな……ありがとう」と、マリーアも泣き笑いだ。
「そうよね、くよくよなんてしていられないわ!わたしにはリリーを守る使命があるもの!あっ、みんなも!」
「ついででも、思い出してくれて良かった」
ヒンターとまた軽口を言い合って、それぞれとぎゅっとハグをするマリーア。
良かった、きっと私の心配なんて杞憂に終わる。
聖魔法の完全な目覚めだって、きっとできる。
「あの、それで、ですね。なかなか言い出せなかったのですが…実は、わたしもみなさんにプレゼントと言いますか、お渡ししたいものがございまして…」
みんなが落ち着いた頃、おずおずとイデアが手を挙げた。
「あら!嬉しいわ!始めに狭量な王太子がケチをつけてきたから言えなかったのね?」
「人を悪く言わない聖女はどうした」
「まあまあ、いつものマリーに戻って良かったよ」
「そうだね~」
「ある意味ほっとするな」
「……」
ヒンター、マークス、テンダーに立て続けに流され、サーフィスは無言になる。
まだ慣れないイデアーレがおろおろし始めたところで、声をかける。
「イデア、いつものことだから慣れてね~!それで何なに?楽しみなんだけどっ」
「慣れ…う、うん、頑張る。で、これなんだけど」
イデアーレが出したそれは、光の加減で何色にも見える美しい腕輪だった。「おお…」とみんなで息を飲む。
「わたしが作った魔道具なんだけど、少しでもみんなの役に立ちたくて。無毒化だったり、悪阻防止だったり、普段用みたいのはたくさん出てるけど、ほら、対魔王さんとかって普通にないから」
まあ、それはそう。魔王にさん付けかわいいな。
「でね、自分なりにいろいろ文献を読んだりしたの。そうしたら魔王さんは幻影・幻覚・麻痺・痺れ・眠らせる…みたいないわゆる状態異常の魔法が得意のようだったから」
うんうん。なるほど。
「全部を防ぐ、状態異常回避の腕輪です!あっ、もちろん毒も大丈夫!」
ほ、ほう……?
「あ~、イデア、確認なんだが、これは複数の効果が込められている腕輪ということで間違いないか……?」
「はい!フィス様!」
輝く笑顔のイデア。キラッキラで眩しいし、かわいい。かわいい、が。
「待て待て待て待て!やばいやばいやばいやばい!!」
「ヒンター、だっ、だよね?!えっ、これ僕ももらっていいの?」
「すごいなあ、イデア。俺のやつ先に出しておいて良かったわ」
「テンダーの方が芸術的よ。わたしのはただの魔道具だもの」
さらっと謙遜?するイデアに、全員で一度固まり。
「「「「「「ただの魔道具じゃないよねっっっ!?!?!?!?!?!?!?!?」」」」」」
と叫んだ。
「???ただの魔道具だよ?」
当の本人は、きょとんと首を傾げる。
そりゃ、魔道具だけれども。
天才怖い。




