表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!  作者: 渡 幸美
第三章 建国祭と学園と

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/78

33.建国祭当日です

建国祭当日になりました!


今日から三日間、国中の街が彩られる。王都も言わずもがな。この間は、飲食店や騎士団の人たち以外はお休みだ。


殿下は、朝も早よから迎えに来てくれた。家族総出でお出迎えし、お父様とお母様から挨拶をする。お父様はどうしても仏頂面だけど、だんだんと少しずつ諦めている様子でございます。殿下もめっちゃ気を遣って挨拶をしている。そして、こちらに視線を移して、とってもいい顔をしてくれる。


「おはよう、リリアンナ嬢。いつものドレスも似合っているけど、町娘の格好も似合うね。可愛い」


すわっ、今日も安定の王子スマイルと、さらりと可愛い、ありがとうございます。だいぶ慣れたけど、まだ眩しいわ。


「ありがとうございます。殿下もお似合いです」


とは言っても、やはりお育ちの良さは隠しきれていないけれど。お育ちなー、なかなか隠せないよなー。


「マリーア嬢も似合っているね。今日も姉妹でお揃いなんだ。いいね」

「ありがとうございます、殿下」


マリーアとのお揃いシリーズはもはや鉄板だ。周りにも姉妹仲の良さを見せられるし、何よりマリーアが喜んでくれてるしで、痛々しくなるまでは続けると思われる。まだまだ可愛いもんねっ。


ヒンター様とマークス様にもご挨拶。もちろん二人も褒めてくれる。こちらも、今日もさすがである。


『皆揃ったのか。では参ろうぞ』

「シルフ様!今日も自由すぎる。街では団体行動ですからね?」

『はいはい、わかっておるわ。それよりリリアンナ、今日の格好も可憐だな』

「ふえっ?!あ、ありがとうございます」


き、急に褒めないで!動揺してしまう。

町の少年のようなシルフ様も……


「いや、キラキラしすぎじゃない……?」

『ほれ、参ろうぞ、リリアンナ。皆も』


思わず遠い目をした私を余所に、ぐいぐいと押し出すシルフ様。あれ、これ結構楽しみなんだな?


「で、では、侯爵、夫人、行ってくる。お嬢様方は必ずこちらへ送り届ける」

「よろしくお願いいたします、殿下」


シルフ様のせいで若干ぐだぐだだが、殿下が挨拶をしてまとめてくれた。やれやれ。



門の外には、紋章のないシンプルな馬車が停まっていた。お忍びだもんね。


中はもちろん広々だ。護衛の二人と、子どもが六人乗った位じゃ全く狭さは感じない。ちなみに、馬車の御者をしてくれている人も護衛だそうだ。


『ほう、馬車に乗るなど久しぶりだが、なかなか快適だな。これも魔道具か?』


シルフ様が思った以上にウキウキしている。何だか可愛いのだけれど。


「そうです!凄いですよね?わたくしお気に入りなのです」

『確かに凄いな。少ない魔力で、なるほど……』

「あっ、やっぱりダメなんですか?」

『いや、そうではなくな。道具が発展することが悪ということではない。そちらが優先されて、他への感謝を忘れるのがいけないのだ。何事も、人だけでは成り立たぬはずだろう?それを忘れると、大きなしっぺ返しを受けることになるからな』

「そう、そうですね。……分かります、なんとなく、ですけれど」


前世は正しくそうだったよな。温暖化とか、その後は大丈夫だったのかなあ。って、私がこちらへ来たのが向こうからの何年後って話だが。……頭が混乱しそうだから考えるのは止めよう。

こっちの魔王復活も、してしまったら大事(おおごと)だし。


『リリアンナは聡いな。それも、ずいぶん変わって来たであろう?人の王もなかなか良い判断をしてくれたと思うぞ。……それで、だが』

「はい」

『呼び方はどうするのだ?』

「……はい?」

『呼び方。街中でもわたしをシルフと呼ぶのか?』


つん、と人差し指で私の額をつつき、ニヤッとするシルフ様。馬車内の雰囲気がふっと和らぐ。

そうだ、今日はせっかくのお祭りだ。楽しまなくちゃ!


「そうですね!あっ、みなさんはわたくしをリリーと呼んで下さいませ!」

「リリー……?」


殿下が一人言のように、そして噛み締めるように呟く。


「はい!何ですか?殿下」

「っ、いや、試しにだな、その。わたしもフィスで構わない」

「……フィス様?」

「……!街で様はおかしいだろう?フィスでいいよ」

「フィス」

「!うん、そうして。……これからも、そう呼んで。もちろん、マリーア嬢も」


殿下あらため、フィスが目を細めて嬉しそうに微笑む。


「承知致しました。わたくしのこともマリーで結構です」

「僕はマークで」

「マリー、固いぞ。せっかくだから、友人として話そう。俺はヒンターのままでいい」

「うん。これをきっかけにして、二人とも気軽に話してくれたら嬉しいな。どう?」

「でん……フィスが言うなら。ねっ?マリー姉さま!」

「ええ、そうね。うん、せっかく街に行くのだし。久しぶりで、楽しみ!」


そうだ、マリーアからすると、久しぶりの街歩きだ。私が思う以上に楽しみにしていたのかもしれない。あっ、それに。


「もしかしてマリー姉さまは、街に詳しくいらっしゃる……?」

「もちろん!任せて頂戴。安くて美味しい屋台も、可愛いい小物のお店も案内できるわ!」

「やったー!さすが姉さま!ねぇ、まずどこから行く?」

「り、リリー!俺も結構詳しいぞ!いろいろ案内させてくれ」


マリーアのどや顔に、負けずにフィスも入ってくる。二人も詳しい人がいるのは心強い。祭り巡りは順路大事だよね!


「フィスもよく街に行くの?じゃあ……」

「あの、リリー?ちょっといい?」

「はい?」


フィスに詳細を聞こうとしたら、マークが遠慮がちに肩をつんつんしてきた。珍しい。


「マーク?何か……」


と、聞きながら、マークの視線を追うと、ふて腐れたシルフ様と、困り顔のヒンターがいた。


「あ」


しまった。言い出しっぺのシルフ様を完全に放置してしまった。ごめんと思いながらも、結構な長生きであろうはずなのに、子どもっぽくてつい笑ってしまった。


『……リリーがまた失礼なことを考えていそうだ』

「ないよ!ごめんなさい、シルフ様。あ、シルフ様にも普通に話していい?」

『……それは構わん』

「ありがとう!せっかくシルフ様から話してくれたのに、ごめんね。シルフ様は何て呼べばいい?」

『わたしに人のような名はない。リリーがつけてくれたら許す』

「えっ!四大精霊様に名付けって、緊張するんだけど!」

『リリーに付けてほしい』

「うっ、じゃ、じゃあ、ちょっと待ってね……?」


うわーん、美少年に上目遣いされるとクラっとするー!

えっと、シルフ様でしょ?やはり風か?風……あっ。


「ルシーアなんてどう?ルシーアで、ルシー!この間、古語を習ってね、風っていう意味なんだって」

『ルシーア、ルシー……うん、いい響きだ』

「気に入ってくれた?」

『ああ』

「良かった!」

『ありがとう、リリー』


そう言って、シル……ルシーアがまた私の頬に軽くチュッとした。


「なっ、もう、ルシー!」


頬を押さえて、慌てて距離を取る。

この距離感の近さは精霊だからなのか?ルシーアだからなのか?ルシーだし、綺麗だし、嫌じゃないけど、こう、居たたまれない。


「だから!ルシー!リリーに気安く触れるな!!」


フィスが私とルシーアの間に立ち塞がって叫び、


『すまんすまん、リリーがかわいくて。愛し子だしな』


ルシーアはしれっと楽しそうに流す。


「そっ、それは分かるけど……じゃなくて!ダメなものはダメだ!マリーもそう思うだろう?」


フィスが最終手段のように、マリーアに向かって同意を求めた。


「そうね。二人とも忘れているかもしれないけれど、リリーはまだまだわたしのリリーよ?その辺はしっかりと覚えておいてね?」


にっこりとしたマリーアの圧に、二人は「はい……」と返事をして大人しくなった。うん、マリーア最強。私、愛されてるわ。


ヒンターとマークは既に疲れたような顔をしているけれど、祭りはこれからだからね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ