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異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!  作者: 渡 幸美
第二章 夢と魔法の国

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27.勇者と聖女と、

先ほどまではキラキラ妖精さんに囲まれて、美しい庭園をキャッキャウフフとみんなで堪能していたのに、今は重い沈黙が支配する。


『これ、そんなに落ち込まなくともよかろうが』


シルフ様が不思議そうに首を傾げる。いやなんで不思議そうなんだ。

これは種族の差なのか?精霊さんたちはきっと魔法は変わらずに使えるのだろうし。でも、魔物たちにはみんなで困っていたはず。


みんなが悶々と考えていたその時、澄んだ声が庭園に響く。マリーアだ。


「あ、あの!わたくし、聖魔法を使えます!これからたくさん練習して、使いこなしてみせます!それでは間に合いませんか?魔王は復活してしまいますか?」

「わ、わたしもです!聖魔法は使えないが、ありがたいことに魔力量をたくさんいただけた。様々な魔法を習得し、剣術も今以上に努力します。この庭園の妖精たちを……いや、我が国にいてくれる貴方たちも守れるよう努めます。力不足でしょうか?」


マリーアに続き、殿下も矢継ぎ早にシルフ様に問いかける。

さすがの正ヒロインとヒーローだな!と、ちょっと感動してしまい、出遅れた。でもいいか。きっとここは彼らの出番のはず。私は邪魔にならないように、()()()()に行かないように、お嬢様道を邁進するのみだ。もちろん、協力はしますよ!


『ふふ、さすが光の愛し子よの。フローラ様も喜ばれようて。そしてサーフィス王子よ。この庭園を荒らしていたのが嘘のように成長したのう』

「……はい?」


「荒らして……?」と殿下が呆然と呟く。妖精さんたちは『そうそう、そうなの!』と何だか楽しそうに笑いながら、殿下の周りをくるくる飛んでいる。


『まあ、仕方のない部分もある。まだ幼き日々のことだ。王子には、そうさな、初代国王……オルソンの力を与えたからのう。力が有り余っていたのであろうな。本来はマリーアのように徐々に目覚めさせる予定だったのであるが、抑えきれずにおったようでなあ。監視と見守りでこの庭園に妖精たちを住まわせたが、無邪気に草花をちぎり散らかすのを止められず、わたしが少々封をしたのだよ。成長が追い付くまで、とな』

「「「「「「「!!!」」」」」」」


さらりと語られた事実に、本人も含めて全員が目を見開く。


『人間でいうところの、勇者であるか?此度……もしも魔王が復活したとなると、この国の創成期より強くなっているであろうとの我々の判断でな。少なくともオルソン並みの勇者は必要だろうと。もちろん、聖女もだ。マリーア』


二人は神妙に頷く。やだ、王道展開。不謹慎なのは百も二百も承知だが、目の前で繰り広げられるドラマにワクワクしてしまったり。いや、ふざけてない、ふざけてないのよ!でも、こう、おおっ!!ってなるでしょ?!ねっ?やっぱり二人が手を取り合うのが本筋でしょ!


「魔王が創成期より強いであろう理由はあるのですか?」

『怨み辛みを募らせておるだろうからの。やつはどうにも執念深い』

「なるほど……」

「え、迷惑な奴だな」


しまった、と両手で口を押さえたが、もちろん間に合わず。私の個人的な(しかも素が出た)感想は、しっかりと三人の話し合いの邪魔をして、視線がこちらに向けられた。


「す、すみません、お話の邪魔をして。どうぞ、構わず続けてくださいませ」


オホホ、との副音声が聞こえそうなほどの猫を慌てて被ったが、どうやら間に合わなかったらしい。シルフ様が華麗に近づいてきた。


『ふふっ、そうさな、我らからすると魔王なぞ迷惑でしかないな』

「そうですよね。ちょっかいをかけてこなければ、こちらだって放置しておきますのに。それで勝手に恨まれても」


シルフ様が普通に話を続けてくるのを無視もできず、私は諦めて会話を続けることにした。


『……ふむ、それもそうであるか』

「そうですよ~、なんで争いたがるんでしょうね?人間でもいますけど。力で支配をしたい?見せつけたい?……かまってちゃんなのかしら。力で支配したって本当の情は得られないって歴史が証明しているじゃないですか?不毛だと思うんですよ、疲れるし。土地は枯れるし。みんなが自由に暴れていたら食料を作る人もいなくなるわけで、どうにもならなくなるじゃないですか。バカなんですかね?」


話しているうちに、また無自覚に熱が入ってしまう。この前世からの性分は、どうにも直すのが難しいようだ。

シルフ様も陛下も、全員がポカンとしていることにも気づかない。


「ああ、魔王は人心を操れるのでしたっけ?それで人が争うのを見て、楽しいのかな?……何が面白いのかが、さっぱり分からない。自分で原因を作って、影で見ているような優越感……?結局は力自慢?自己顕示欲?やっぱりかまってちゃんだよね……」


もはや会話ではなく、一人問答になった頃。


『ふはっ!!リリアンナ、そなたは本当に面白い子だのう、ふはっ!ははは!』


シルフ様が盛大に笑い出し、我に返る。

そして周りは苦笑していた。シルフ様はよほどスイッチが入ったのか『魔王を、かまってちゃん……』と呟いてはヒーヒーしている。


「四大精霊でも意外と普通だな」

「これっ、リリアンナ!」


あまりにも楽しそうなシルフ様を見て、またつい素でぼやいたら、いつの間にか隣にいたお母様に叱られた。


『よいよい。そうさな、わたしは普通であるな。リリアンナが楽しいな』

「……ありがとうございます?」

『ふふっ、やはりそなたに魔力を授けたのは正解だったようだ。なるほど、こうも愉快とは』

「シルフ様、それは……」


「褒めてます?」との言葉は飲み込んだが、シルフ様はまた「褒めてるとも」と、しれっと言った。読心止める気ないな、この人。

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