25.庭園の妖精さん、と
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
元旦からこちら……祈ることしかできませんが、皆様に少しでも幸多きことを。
できることを少しずつでもやっていけたらと思っています。
『ほんとにほんと?リリスに名前をくれたあの子?』
『そうそう、そうよ』
『わーい!わーい!ありがとう』
『リリー、リリー、こんにちは』
「こ、こんにちは!みなさん来てくれてありがとう」
きゃー、ご挨拶できたわー。こんなにたくさんの妖精さんに囲まれるなんて、夢みたい。
妖精さんたちは、それぞれにいろんな色を纏っていて、妖精さん自身が花のようだ。
そしてそれはまるで、庭園全体が虹に包まれたような光景だった。様々な色の光が反射しながらも融け合って、いっそ現実味がないくらいの輝きだ。
「こんなにたくさんいたのね……」
50人はいるだろうか。あまりにもの鮮麗さに感嘆のため息が出てしまう。隣ではマリーアの瞳もキラキラしている。
『リリー!リリー!ぜんぶ食べてもいいのよね?よね?』
「え、ええ、どうぞ」
『『『『『わーい!わーい!』』』』』
私の返事に他の妖精さんたちも一斉に喜び、くるくる飛んでお菓子を両手で持って食べ始めた。か、かわいすぎる……ずっと見ていられるわ……!
「リリス、こっちのマドレーヌはいかが?」
『たべるー!おいしいおいしいお菓子がいっぱい!』
「ふふっ、たくさん食べてね」
あまりにの可愛さに、次々とお菓子を手に取りすすめる。隣のマリーアもせっせとお給仕している。
「何だか忙しそうで済まないが……。リリー、そろそろわたしたちにも説明をしてもらえるか?」
「はっ、そうでした!また、つい!」
お父様に遠慮がちに声をかけられ、我に返る。
奇跡のような光景に、またまた姉妹二人で楽しんでしまった。これ、他の人が見たらお菓子が勝手に消えている感じだよね、きっと。
「すみません、わたくしたちで楽しんでしまって。……あの、今妖精さんたちがたくさん集まってくれているのですが、やはりお父様たちには見えませんか?」
「残念だが。でも光の輝きと、虹がかかっているのは見えているよ。これだけでも神秘的で美しい光景だ」
お父様の言葉に、周りの大人たちと殿下も頷く。
『ふふふっ、わたしもあのこも得意なの。みんなで楽しいと虹になるのよ』
「そうなのね!素敵。そうだリリス、他の人にもみんなを見せてあげられる?」
『いいよー!お菓子のお礼にね!はいっ』
リリスはクッキーを持ったまま、陛下たちの目の前でくるくると回り、『これで見えるよね?』と、さらりと私の肩に飛んで戻って来た。
「おお、これは……!信じがたい光景だ……!!」
「まあ、なんて美しい!」
大人たちはあまりにも美しい光景にすっかり見とれており、やや放心状態だ。ちょっとわかる。
「初めまして。君がリリス殿かな?」
そんな中、殿下が私の肩にいるリリスに声を掛けてきた。
『そうそう、そうよ!でもね、でもでも初めましてじゃないのよ?かわいいフィス。ねぇ、みんな?』
「えっ?」
『そうだよ、そうそう、小さなフィスとたくさん遊んだ』
『小さな小さなお友達』
「たくさん、遊んだ……?」
妖精さんたちの言葉に、殿下は困惑気味だ。懸命に思い出そうとしているみたいだけれど、なかなか思い出せないでいる。
「確かに、昔から殿下を見守っていたような感じでしたよ?」
「そのようだが……すまない、リリス殿。どうしても思い出せないみたいだ」
殿下は丁寧にリリスにお詫びの言葉をかける。うん、その姿勢は嫌いじゃないわ。リリスもくるくる回って、殿下の肩にちょこんと座った。
『そうね、そうそう、そうなのよ。仕方がないの、小さなフィス。ちょっとヤンチャな王子様。シルフ様が決めたのよ。運命と会えるその日まで。見つけられて変わるまで』
リリスが歌うように語りながら、殿下の周りをくるくると回り飛ぶ。他の妖精さんのクスクス笑いも、まるでコーラスのようだ。
「わたしの……運命……?」
そう言うと、殿下は私を見た。
え?私?!いやいや、違うでしょ、まだ私じゃないでしょ?!年齢で全てを測るのは好きじゃないけれど、でも早いって!これから出会いはたくさんありますよー!!貴族社会は狭いけどーー!!
『ほう、そなたがリリアンナか。なるほど、確かに少し変わった魂だな。ふふ、それに安心するがよい。運命の出会いだから必ずしも結ばれる訳ではない。……知っているだろう?』
はっ、確かにそうだわ。悲恋ものとか、確かにそうだわ。この原作に引き摺られて焦って……って。
今の声は、誰?とても綺麗な声だけど、王妃殿下ともお母様とも、妖精さんたちとも違う。凛とした、頭に直接話しかけられるような美声。
私は恐る恐る、その美声の主へと視線を向ける。
そこに優美に佇んでいたのは、儚げながらにも存在感のある、輝くエメラルドグリーンの流れるような髪をした、とても美しい人だった。
まさか、この人は……。
『わたしは四大精霊のシルフだ。そなたに会えるのを楽しみにしていたぞ、リリアンナ。そして光の愛し子、マリーア。王子は久方ぶりか』
わーっ、やっぱり?!会えたのは私も嬉しい!嬉しいけど!いろいろ急ですよ!
『さほど急ではあるまいて』
ついでに、人の心を読むのも止めていただきたいです!




