第一話 プロローグ
私は時音紡。
作家をしている高校2年生だ。
異世界系の小説が大好きな私は、魔法が使える異世界に憧れていた。
高校の授業は眠くなるほど退屈で、いつも小説について物思いに耽っていた。
この世にはなぜ魔法というものが使えないのだろうか。もしかしたら小説の世界のように、いつか私にも魔法が使えるんじゃないか。主人公みたいに獣人と一緒に暮らせる世界で生活してみたい。
不満を持ちながらも平和にすごしているこの世界。魔法を使うなんて、現実では出来ないだろう。しかし、そんな希望を持たせてくれるのが、今の世界では無い、別の世界の物語だ。
枕元に本を置く習慣がある私は、今まで読んでいた本を片手に持ち、明かりを消して布団へ入る。いつでも気づけば深夜になっていると言う重度の本好きでもあるため、絶えず寝不足なのは言うまでもない。
横になると睡魔が襲ってくるのは毎度のことな私には、寝る前にする、とある習慣がある。
それは流れ星を見つけた時のように、願いを口に出して唱えることだ。
誰にだって、夢はある。私の場合、異世界へ行くのが夢だ。今まで沢山の異世界系の本を読んだ。転生して冒険者になる、みたいなものもあれば、文明が未発達の世界で自分の夢を叶えたり、とある世界の住民の話だったり…。
小説は、簡単には言いまとめられないほど奥が深い。だからこそ、小説というジャンルの一つ、異世界に惹かれた。そして、その物語を創作することにも興味を持った。
気づけば筆が進んでいる。
この世界では実現することができないこともある。しかし、小説も世界だったら、その世界でだけ、年齢関係なく自分の夢が実現できる。非現実的なことでも可能にできるのだ。
物語の主人公は私。二度目の人生とも言える世界を文字で創り、旅をする。
そんな作家に、世界に、憧れないはずがなかった。
祈るように手を組み、3回。
「異世界に行きたい!異世界に行きたい!
異世界に行きたい!」
そう呟いて、目を閉じる。
いつか異世界に転移することを願ってつぶやく日課は、目覚めた時をワクワクさせた。
そして、眠りにつくと、私は三人称視点の変な夢を見た。
周りに何も無い真っ暗な場所で、可愛いしっぽのついた小さな子どもが今にも泣きそうな顔で走っていた。後ろを見てみると、その子どもの親であろう女性が満面の笑みで追いかけている。子供が泣きそうな顔で走っているのは不審に思ったが、永遠と続く暗闇の世界で泣きそうな顔になる原因が見当たらず、とりあえず、しばらくその様子を見ていることにした。
こちらからは何も手出しできないため、見守ることしかできない。
特に何の変化もなく、ただぼーっと、そのふたりを見ていた時だった。
途端に、女性は姿を変えた。
子供の身長より少し小さい、しかし現実ではありえない、何十倍にも大きい蜘蛛のよう何かがいる。その体は見たこともないような禍々しい色をしており、さっきの女性だったと脳が理解するのには時間がかかった。
姿形を変えても、何かは止まることなく、子どもを追いかけ続けている。
先ほどの女性の姿でいるより、子どもを追いかけるための足は速くなり、私には走っているようにも見えた。子どもと女性とで比べれば、言うまでもなく女性の方が速い。
このままでは追いつかれてしまうのも時間の問題だろう。
焦燥感に駆られた私は精一杯の声で叫ぶ。
「逃げて!逃げて!このままじゃ、追いつかれちゃう!」
当然私の声なんか聞こえるわけが無い。ただ見ているだけしか出来ないことがもどかしく感じる。
本当に何も出来ないのか、何か助ける方法はないか、そう考えていた時、子どもは何かに躓いて転んでしまった。次の瞬間、蜘蛛に似た生き物は、足元の闇に、溶けるように吸い込まれていき、私は目を覚ました。
目覚めのせいなのか、強烈な眠気と目への違和感がある。
天井に付いている照明器具がズレていることから、目の焦点が合っていないのだろう。ズレているまま動いても怪我の元になりかねない。大人しく布団に入ったまま時が経つのを待つ。しばらく天井を眺めていれば、目の焦点が合った。
目の焦点が合い、周りを見渡す。
外はまだ薄暗く、時計を見てみると4時を指し示している。ふと、先ほどの夢を思い出し、少し嫌な予感がした。
目の焦点は合っているが、まだ少しぼやけている目を擦り、
よく目を凝らして部屋の状態を確認する。昨日ベッドに入った時と全く同じ状態で、
「まぁ、何かあるわけないよね。寝てただけだし」
とホッとして呟き、ベッドに目を落とす。
「え…」
ブワっと全身の鳥肌が立ったのを感じた。目線の先には乱雑に折り畳まれた紙が落ちている。嫌な予感が当たったと本能が言っているが、信じたくない私は昨日読んだ本に挟まれている紙が落ちてしまったのかと思い込み、手に取って開く。
「遘√◆縺。繧停?ヲ蜉ゥ縺鯛?ヲt」
明らかに日本語ではない、よくわからない文字が、赤くその紙を染めていた。触ってみればインクとも取れるような、深紅の色をした文字は少し不気味だった。
先程の夢で、子どもたちを助けれなかった虚しさと、部屋に誰もいない寂しさ、文字の意味が分からない手紙の恐怖が部屋中に広がってゆく。
そのせいか、両親の顔が見たくなった。
夜目に慣れている私の目は、明かりをつけることを嫌がる。仕方なしに電気をつけずベッドから降りる。
先ほどまで寝ていたはずだが、恐怖を感じる手紙のせいですんなりと動いた。それでも手足が震え、足が重い。
本能も、ベッドに戻ってこのまま寝てしまえ。そう騒いでいる。
しかし、どういうわけだか好奇心が顔を出している。それはもう、子どものように。
“これは何だろう?” “こんなことしたらどうなるのかな?”
心が少しだけ、ほんのちょっとだけ、弾んでいる。
私の体が誰かに操られているかのように、意志に背いた行動をする。気絶すれば次起きたときには親も起きているだろうと考えたが、どうすれば気絶できるのか。今の私は意識の中の私でしかない。
思うように動かせないのなら、。私は警戒心を残し、抵抗することを諦めた。
私の体は、物音を立ててはいけないような、そんな気配を感じ取っているのだろうか。ゆっくりと、そして息を潜めてドアのある方へ向かう。
…ドアが閉まっていない。昨日、寝る時に閉め忘れたのだろうか。いや、そんなはずはない。小説の世界に集中する為、普段はしっかりと閉めているはずだ。扉を開けたのも、乱雑に折り畳まれた紙も、もしかして…、夢に出てきた何かが関係している?
いやいやいや、そんなはずはない。
仮にも、夢の中での話だ。現実で起こり得るはずがない。偶然が重なっただけだ。そう考えていると、急に眠気が襲ってきた。
先ほどまで目が冴えていたのはなんだったのか。不思議に思いながらも、やっと意識を手放した。
…次に目を覚ました時には、青々と茂る森の中に居た。
執筆経験がないため、処女作になります。
誤字脱字、おかしい言い回し等あると思いますがよろしくお願いいたします。