プロローグ4 魔剣士は異世界へ
「闇の王位が魔王だけじゃないってどういうことだよ!」
「言葉の通りです。闇の王位とはこの世の綻び。それが1つとは限りません」
「じゃ、じゃあ、魔王を倒したら解放してくれるって約束は?」
「はて?私が言ったのは、闇の王位を倒したら卒業させてあげます、という約束のはずです。魔王とは一言とも······」
「だ、騙しやがったなぁぁぁぁ!?」
俺はそういって聖剣ブラッディハートを振り上げる。
先程の魔王戦で血のほとんどは使いきってしまっていたとしても、それでもヤツを斬るだけの血は残っているはずだ。
足りなければ俺の血をいくらでもくれてやる。
「ま、待ちなさい、オーヴィアス!」
「そうだ、落ち着け!」
「離してくれ、レディさん、ガッツさん!今度こそあの駄女神をぶったぎってやるんだー!!」
必死になって2人が止めに入ってくれているけど、悪いがこの怒りは止められない。
やっとこさ解放されると思ってこの1年、必死に頑張ってきたのに、魔王で終わりじゃないって?
まだまだこんなヤツを倒せっていうのか?
「オーヴィアス、聞きなさい。魔王を倒したあなたならわかるはずです、世界の綻びは1つとは限りません。」
「それはあんたがサボってたからじゃないのか?」
「そんな、この女神がサボるわけないでしょう?」
「あ!目をそらしやがったな!ってことはまだ尻拭い」
「まぁ、女神に対して尻とは、そんな卑猥なことをいう子に育てた覚えはありませんよ?」
「こ、殺す······」
再び戦闘体制に入った俺をガッツさんとレディさんが必死になって止めにはいる。
ちなみにアホ僧侶はずっと気絶してやがる
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「オーヴィアス、そんなに女神様が嫌いなのね?」
「レディさん、あなたにはわからないかもしれないけど、色々あったんですよ、本当」
「まぁお前の力を見ればとんでもない修行をしてきたのはわかるが」
「そうでしょう、ガッツさん!」
一応この2人には俺と駄女神の悪夢の10年間のことは話してある。
同情はしてくれてるみたいだけど、それでもやはり女神信仰の王国民としての今までがあるからな、そう簡単に同意はしてもらえない。
ちなみにアホ僧侶は嬉々として聞いていたから、マジで殺意を覚えた。
そういえばあの日からだったな、この人のこと駄女神と同じくらい嫌いになったの
「5歳の時から修行修行で、友達もいないし学校にだって行ったこともないんだ!もっと普通の生活がしたかった······」
両親は俺が女神に選ばれたと大喜びだったし近所の友達とは会う時間さえ無くなってしまった。
御神体を壊したのは俺だから、非はこっちにあるのはわかっている。
それでも願って使徒になったわけじゃない。
俺は普通の生活を送りたかったんだ······
「そこまで追いつめられていたのですね······わかりました。では今度こそ全ての闇の王位を倒せたら、オーヴィアス、あなたを争いのない平和な世界へと転生させましょう」
「転生······本当か!?」
「ええ。女神は嘘をつきません」
「······なんだって?」
「メガミ、ウソ、ツキマセン」
「やっぱりぶったぎってやる!!」
こうして女神アルテミアから異世界転生の約束を取りつけ、残りの闇の王位を倒す旅が始まった。
「で、闇の王位ってのは全部でどれくらいいるんだ?」
「ざっと100体ですよ☆」
天王、狂王、正王、破壊王、影王······
様々な闇の王位と戦ったが一番大変だったのがおそらく61体目に戦った次元王だ。
空間を歪める力を持った次元王には本当に苦戦したが、魔······聖剣ブラッディハートを犠牲にすることでなんとか倒すことができた。
「ああ、私の聖剣が······」
「やっとこの魔剣とおさらばできる······」
そして、その次元王から出現したのが魔剣アブソリューダーだ。
おそらく犠牲になった聖剣を媒体に次元王の力を吸収して誕生したんだろう。
アブソリューダーの力は凄かった。
力の使用にかなりの魔力を消費するが、次元を切り裂く能力を持っている。
そのおかげで次に戦った鉄壁の防御を誇る、鎧王を簡単に倒せたんだからな、凄い魔剣だよ
「これでやっと、魔剣士が名乗れるな」
こうして100体······いや、あの駄女神に騙されながら 倒したから実際は108体だったわけだけど。
闇の王位を倒し、 女神の使徒として世界に平和をもたらした。
そして約束通り俺は異世界に転生することになった。
両親には悪いことをしたが、それでも俺はこの世界で女神の使徒としてあの駄女神の尻拭いをするのはもうたくさんだ。
これでやっと争いのない平和な日常を手に入れることができる。
普通に遊んで、 たくさんの友達を作って、 学校に通って、勉強して、彼女とか作って······
そいう普通の生活を俺はしたい。
その願いがやっと叶う。
ありがとう、皆。
そして、さようならだ、駄女神アルテミアさんよ······
これでプロローグは終わりです
次回から本編となります