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2話 謎と仕事

 礼さんが死んでる、ということを聞き、アンチモンを部屋に放置して声のした方に向かう。


 その場所は僕の部屋を出てすぐで、霧野が腰を抜かしている方向を見る。


 床がアルミホイルで覆われており、機械チックな部屋に赤い血が流れている。これだけ明るい血なら本当にさっき殺されたらしい。


「霧野さん、ごめんなさい。ちょっと礼さんの様子を見せてもらっていいですか?」


「え、うん......」


 礼に近づくと血の臭いがするが、慣れている。


 見たところ背後から体を貫くように刃物に刺されたらしい。


 けれどその刃物は見つからない。それより問題なのは血に紛れて置いてあるカードだ。


 通称殺し屋カードである。僕も持っているが、殺し屋が殺した相手の近くに置いておき、任務を達成したことを証明するものだ。

殺し屋のコードネームが本人の直筆で書いてある。

これが無いと報酬が貰えない。


 殺し屋が半分黙認されつつある状態が生み出したものだろう。


 さて、このカードにはどんな名前が書いているのだろう。


 ディリジア


 知っている。僕が最初に知った殺し屋の名前だ。


 僕の両親は生まれた時には死んでいた......らしい。細かくどのタイミングに死んだのかは知らないし、どのように殺されたのかも知らない。けれど、その時に置いてあったカードに、


 ディリジア(母 代筆)


 と書かれていたらしい。


 なぜ母なのかは今でも分からないままだ。


 ただ、そのディリジアというのが僕の近くに来ていた、ということは確かだ。


 僕は特に復讐がしたいわけでもない。正直、顔も見たことがないため、実感が湧かないものだからだ。


 けれども、ディリジアのことは許せない。僕が今まで守り続けていた信念を邪魔されたからだ。


 仕事で殺す人以外で僕の周りにいる人は死なせない。


 僕は不用意に人が死ぬのは嫌なのだ。

依頼によって殺される人は言い方を極悪にすると、死ぬべくして死んだ、と言える。


 しかし、それ以外の人は生きているのを急に邪魔されるべきではない。例えそれが他の殺し屋によって殺されそうであっても助けてあげたい。


 僕は一般的に言う自己中なのだ。また一方で自分が殺している責任だとも思っている。


 だからこそ、今回の件をそのまま置いておくわけにはいかない。


 どうしたら、殺されそうな人を守ることができるだろうか。寮に入る、というのははじめてのことだから、夜、寝ている時でも気をつけなければならない。

これまでは会社の幹部だ、とか、学校の教師、とか人と同じところに泊まることはなかった。


 それに、今回はもう一つ問題がある。アンチモンのことだ。ティリミアのことを知っていることと、僕を殺しにきたことから、これからも殺しに来ることになるだろう。すると、応戦しているうちに今日みたいになることがあり得る。


 そもそも、この寮は全体的にセキュリティが甘い。その対策をすれば、警戒するところが減らせるだろう。


 よし、それは明日するとして今夜はもう眠るしかない。


「霧野さん、大丈夫ですか? 大丈夫ではないのは分かってるんですけれど、とりあえず休んでください」


「うん......」


 弱々しく霧野が返事する。


 今なら、殺せるかもしれない。いや、やめておこう。あまりにも残酷すぎる。


 霧野が自分の部屋に戻る。そういえば、テルルはどうしているのだろうか。普通は寝ていても起きてしまうと思うのだが。


 部屋に戻ると、アンチモンが気絶したままになっている。誰も廊下にいないことを確認して、引きずってアンチモンの部屋に連れて行くことにした。


 部屋に入ると、壁一面が黒板になっており、小さな黒板もたくさん置いてある。なぜかチョークは見当たらないが。


 よし、寝よう。

一応糸はさっきと同じ様に張っておく。


 持ってきた目覚ましの音が部屋に響き、起きる。


 6時起きは基本だ。8時なんかに起きていたら、頭が10時くらいまでしっかりとは回らなくなってしまう。


 下の階の共用スペースに行くと、壁に貼ってある当番表が目に入る。


 今日の朝は......ネオン、礼......か。


 ぼくが代わりに朝ごはんを作るか。


 他の3人がいつ起きてくるのかも知らないし、そもそも今日の学校に行くのだろうか。

行かなくてもあんなことがあったのだから仕方ないとは思うけれど。


 ガチャ


 玄関から音がする。


 共用スペースに向かって足音が近づいてくる。


「あれ? 君、朝早いねー」


「いつもの習慣です。というか、夜の間何してたんですか?」


「習慣なんだから、いつもに決まってるよ〜。頭痛が痛い!みたいな発言だねっ」


 笑いながらつっこんでくる。けれど、そういう話ではない。


「それで、夜何してたんです?」


「あ、うーん......仕事、ってことでいいかな?」


 仕事、か。


「仕事の内容が知りたいです」


「消されちゃうからそれはできないかなぁ」


 困り顔が出ても良さそうな口ぶりだが、特に顔色を変えない。


 もしかして......


 今なら他に人もいないしな。


「あなたは殺し屋ですか?」

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