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第8話 彼女と整地……オレ村整備士になりました

 ◇◇◇咲夜目線◇◇◇



「んーと。まずは村の整備からだな」

「そうだね。どの家も建付けが悪いし。立地もしっかり確認しないとだから」

「だよな……。ってか立地ってなんだ?」

「もう!! 商売も必要でしょ? 客が来やすい場所が良いし。ほら、働かざる者食うべからず!! 角材って残ってるよね?」

「拠点予定地に行けば無くはないが……」

「走って1本お願い!!」

「よし来た!! 任せろ!!」


 まさかオレが村長になるとは。いや、実際はオレだけではなく未来も一緒に。オレはこれがしたかった。

 みんなの役に立てる面白いこと。生徒会長の時と同じ気分だ。加えてセレーデ前村長からの後継ぎにもなっている。


 未来に角材を取って来るように言われ、助走数メートルの加速で樹海を駆ける。

 道中はアップダウンの多い場所。拠点に着くとすぐに角材を持ち、来た道を戻る。

 未来はこれで何をするのだろうか? オレには想像もつかなかった。


「未来持ってきたぞ!!」

「ありがとう!! ミカエルさんは追加で木を伐採してもらえるかな? 咲夜くんと一緒に」

「わかった」

「了解なのです!!」

「それで、レノンとガノンは二人で土運んできてほしいんだけど……」

「何に使うのかわからないけど、持ってくればいいの?」

「うん。お願いします」

「承知した……。レノン行こう」

「お兄ちゃん着いて行くね」


 オレはミカエルと行動。未来は角材の使い道を教えてくれなかった。それよりも木材集め。伐採スキルの出番だ。

 レノンとガノンも土を集めに出かけていった。オレはオレで再び樹海へ潜る。必要本数はざっと万本だろうか?

 そうなると植樹も考えないといけない。だけど植樹の仕方がわからなかった。それでも、木を切るのが先。


「ミカエル。水属性だったか?」

「そうですけど……」

「斬撃系の攻撃は……」

「問題ないです!! 試したい魔法もあるので持ってこいですよ?」

「なら良かった。なにかあった教えてくれ」

「了解なのです!! 咲夜さんもファイトです!!」


 こうして二手に別れての伐採作業。攻撃範囲の短いナイフで、どんどん切り倒していく。

 あっという間に4000本。さらに5000、6000と倒していく。木を切るだけでもめちゃくちゃ楽しい。一番安全なストレス発散法。


「けど、どれだけ切ればいいんだ? ん? あれはなんだ?」


 オレはこの前切り倒した切り株をみる。そこには、新しい芽が出ていた。最初見た時にはなかったはずの芽……。

 よく見れば、数日前に切った切り株全てに、複数本の芽が出ている。


『もう、咲夜くん遅いよ!!』

「未来!? あ、いや。あの芽が気になってさ……」

あの芽(・・・)?』


 少し遠いところから声をかけられ、オレは未来に切り株の芽を説明する。近寄って来る未来。彼女の手にはスコップがあった。


「もしかしてクヌギなんじゃないかな? 付け根のここを切り取って、土に植えれば……。こんな感じかなぁ?」

「これは一体?」

「植樹だよ。クヌギって、切り株にできた芽で増やせるんだって!!」

「未来。頼りになるよ」


 これで植樹は一件落着。クヌギがこのようにして増えるとは思わなかった。以降同じようにしていけば木材に困らない。

 ひたすら木を切り続け、気付けば樹海の半分以上が切り株になっていた。植樹の仕方を覚えても意味が無い。

 加えて、未来も手伝ってくれたおかげで、仕事も早く済む。伐採スキルは最強だ。職業無双が便利すぎる。


「だけど、このまま放っておけないな。完全に自然破壊だ……」

「大丈夫だよ。私の魔法でなんとかなるから」

「本当か?」

「なら証明してあげるけど?」

「気になるな……」

「行くよ!! タイムファスト!! ワイドエクストラ!!」


 するとその呪文に反応したのか、大量の切り株から芽が出てくる。オレは急いで、未来から教えて貰ったように土へ植える。

 そうこうしているうちに、みるみる成長していく木の芽。さすがに走り疲れが出始めたオレでも、着いていくのがやっとだ。

 数分休憩すれば問題ないが、休む暇もない。それでも、沢山動くのはオレが一番大好きなこと。


(未来が協力してくれてるんだ。休んでたまるか!!)


「ワイドスラッシュ!! ライト!!」


 ライトと言っても、優しいの方。複数の苗木をソフトタッチで切り株から分離させる。今度は根付く前に植える作業。

 未来の魔法で根付く速度が早い。後日聞いた話によると、苗木が出来上がるまでに2年から3年以上かかるそうだ。

 そして、未来の魔法はそれを上回る、1秒間に2年の経過付与。一番最初に植えた苗木は、すでに立派な樹木になっていた。


「マジでその魔法すげぇな!!」

「でしょでしょ!!」

「一瞬で木はでっかく成長しちまうし。これで木材不足は解消されるぜ……。ああ、大助かり大助かり……。あんがとな未来」

「どういたしまして。木材はこれだけあれば足りるから。今度は土の凹凸(おうとつ)を無くす作業ね……」

「おうとつを無くす?」

「ほら、地面がガタガタだったり地盤が不安定だと建築しづらいでしょ?」

「ま、まあ……たしかにな……」


(そのための角材と土だったのか……)


 ようやく謎が解けた。オレは何度も樹海と村を行き来して、大量の丸太を運んでいく。往復4時間。運動量が現実世界の倍だ。

 早朝の走り込みよりも多い汗。重労働への関心が高まる。こんなに楽しいことはない。


「咲夜くんお疲れ様」

「こちらも今戻った。土はこれくらいで足りるか?」

「ガノンさん! こんなに沢山!! ありがとうございます!!」

「良かったな」


 同時刻に帰ってきたガノンとレノン。彼らは小高い山が出来上がるほどの土を、未来に提供していた。

 土地を平行にさせる作業。角材を地面に置き、隙間を土で埋める。オレは整地するためのトンボ作り。

 木の棒と板を支えの棒三本で組み合わせ、釘を打ち込み固定する。即席トンボの完成。


「未来!! こっちの準備はOKだ!!」

「ありがとう。ちょうど土埋め作業終わったから」

「配ればいいんだな」

「うん!!」


 の前に、トンボの板の形状を変える作業。内側の地面に当たる面に傾斜を作る。この傾斜に土が溜まって、しっかりならしてくれるだろう。

 オレは村のみんなにも協力してもらい、使い方をレクチャー。一斉に整地を開始する。大人数だから範囲も広い。


「咲夜兄ちゃん!!」

「見た目は女だけどな」

「それでも咲夜兄ちゃんだよ!!」

「ハハッ!! 君名前は?」

「メリア!! まだ8歳で弱いけど。おれ、大きくなったら冒険者になるんだぁ~」

「そうか。未来の冒険者……。ミライの……冒険……者……か……」

「兄ちゃん?」

「いや、なんでもねぇよ。反対側まで競走だメリア!!」

「負けないぞぉ!!」


「『よーーーーい!! ドンッ!!』」


 ――ズシャァァァァァァァァァァァ!!


 メリアはこの村唯一の年齢一桁。村の最年少だった。120センチの小さな身体。みんなこの少年を大事にしている希望の光。

 今度オレが後継者で決めるなら、きっとメリアを選ぶだろう。それだけの可能性を持っているから。


「ちょっとあなた達!!」

「み、未来!?」

「未来姉ちゃん!!」

「遊んでないでちゃんと仕事して!!」

「けど、半分はオレとメリアだぜ?」

「そ、そうだけど……。わかったわ。今回だけね?」

「だってよ。メリア」

「セーフ。だね!! おれ、もう一周してくる!!」

「無茶はすんなよ!!」

「はーーーーーい!!」


 やっぱり若いっていいなぁ……。オレも小学校時代に戻りたい。あの時は頻繁に体調を崩していたけれど……。

 小学校時代は今のような体力は皆無だった。親に勧められた水泳教室。持久走で最下位だった屈辱を晴らしたくて始めた陸上。


 その素質を認められ、高校1年での駅伝参加。当時高校1年での参加はオレだけで、最終走者に選ばれた。

 惜しくも全体4位だったが、先輩から羨ましがられるほどの加速力で5人抜き。校内最年少エースまで到達していた。


「咲夜兄ちゃん!! 未来姉ちゃん!! ただいま!!」

「メリア!! 思ったよりも早かったな!!」

「どれくらい?」

「んーと、約10分くらいじゃないか? んも、オレの予想を超えやがって。今度特訓に付き合わせてやんよ!!」

「特訓? なになにぃ?」

「ちょっと咲夜くん……」

「別にいいだろ? こっからは体力消費が激しい作業なんだしよ」

「それでもだよ!! 勝手すぎ……」

「おれやってみたい!!」

「メリアくん!?」

「よし!! 決まりだな!! 明日から……」

「今からやりたい!!」


(おいおい、無茶言うなよ……。別に問題ねぇけど……)


 子供はみんな好奇心が強い。小さい時は友達が多かった。だけど全員バラバラ。病弱なオレは、何も良いことがない。

 未来がオレの宝物。もしかしたら、転校する前に会っていたかもしれない。なのに、何も思い出せない。


 小学校3年の春から4年夏までの記憶がない。気付いたら別の学校。いや、病院の院内校にいたのだから。

 もちろん、退院後も別の学校。そこで陸上と出会った。


「咲夜くん?」「咲夜兄ちゃん?」

「な、なんでもねぇよ。マジで……。今日からやりたいんだろ? 手伝ってやる」

「ありがと!! おれ頑張る!!」

「そんじゃ。軽く村周辺3周だ。準備運動忘れんなよ!!」

「もっちろん!! 兄ちゃんより速くなるもん!!」

「面白ぇ!! 行くぞ!!」



 ◇◇◇未来目線◇◇◇



「あ~あ。また行っちゃった。だけど、メリアくん。どうも咲夜くんに似ているんだよね……」

「未来さん?」

「み、ミカエル!? いつの間に……」

「ついさっき来ましたです!! 何かあったのですか?」

「い、いいえ。なんでもないわ。ちょっと、幼い時の咲夜くんを思い出しちゃって……」


『お、いいぞいいぞ!! その調子で着いて来い!!』

『……ぜぇ……ぜぇ……。に、兄ちゃん速いよ……。ま、まだまだ!!』

「下向くな!! 前を見るんだ!!」

「は、はい……!!」


 まるでコーチ。自己流挟んでるかもだけど、それでもしっかりメリアを見ている。瞳がとても輝いていた。

読んでいただきありがとうございます!


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